最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

文字の大きさ
65 / 155
第四章:魔族領からの刺客

その63:意気揚々

しおりを挟む

 「もう、ルーンベルさん! ザガムさんは私の旦那様なんですからね!」
 「まだ違うと思うけど……それにザガムが貴族なら複数嫁……いや、ハーレムも夢じゃないし」
 「言い方!?」

 抗議の声を上げるファムとのらりくらりとかわすルーンベルはとりあえず置いておき、倒れたレッドアイを見る。

 「絶命しているな、あの裏拳で一撃、か」
 「あ、倒してました?」

 掠ったか? と思うくらいの当たりだった。
 なので木に叩きつけられた反動で死んだかと思っていたが、ファムに殴られた場所が酷くうっ血しており、直接的な原因はこれで間違いなさそうだ。

 「ああ。剣も使わずここまでやるとは」
 「えへへ」
 
 はにかんで頭を掻くファムに、ルーンベルが腰に手を当てて得意気に口を開く。

 「というわけで、どう? ファムちゃんの力」
 「凄かったな。いつもの弱々しい力じゃなかった」
 「うう……そう思われていたんですね……」
 「実際そうだから仕方ないだろう。それで、そのことを分かっていた節があったがどういうことなんだ?」

 俺に抱き着いてきたのはわざとだというのは分かっていた。だが、それでどうしてファムの能力が上がったのか?

 「えっと、前にユースリアさんが来た時もそうなんだけど、ファムって感情が高ぶると魔力が上がっているのよ。ザガムを連れて行こうとした時、吹っ飛ばしたでしょ?」
 「あ、あはは……冒険者でもない人を吹き飛ばしちゃったんですよね……。ユースリアさんにはめちゃくちゃ謝りました!」
 「うん、まあ、知らない方が幸せってこともあるからね。それで、もしかしたらって思ったのよ」

 ……なるほど、確かに感情で爆発的な強さを発揮したとされる勇者も居たと文献で読んだことがある。ファムはそのタイプということか。

 「勇者としての力をひとつ垣間見ることができたな」
 「そ、そうですね! 私、ちゃんと勇者でした!」
 「当たり前じゃない」

 ルーンベルが呆れた口調で言うと、ファムは唇に指を当ててから俺を見る。

 「うーん、なんていうか……村に居た頃よりも間違いなく強くなったし、今みたいに勇者としての力も少しずつ出現してきたんですけど……」
 「けど?
 「優しかったり、弱い私に無理をさせない、理解があったり、面倒見が良かったりするザガムさんも勇者っぽくないですか?」
 「俺が? やめてくれ、そんなガラじゃないぞ」
 「うーん……ふふ……勇者ザガムねえ……ぷぷ……ぎゃああああああ!?」

 俺の正体を知っているルーンベルが生暖かい目をしながら笑っていたので、こめかみを指でぐりぐりとしてやった。

 「でもこれで少し役に立つことができそう!」
 「まあ、いざという時にはいいかもしれないが……」
 「なんです?」
 「まず、感情が昂らないといけないので絶対的な力とはいえない。もう一つは、ルーンベルいわく俺に関することでのみ発動するなら使い道が難しい」
 「あー……」
 「いいじゃない、尽くしてくれる女がいるのは幸せだと思うけど?」

 そう言われてなんとなく悪くない気分になるが、俺は続ける。

 「一時の感情で強くなることはいいが、やはり地力はつけるべきだ。ただ、先ほどの力は間違いなく凄いものだから、修行をしつつあれもコントロールできるようになればファムはかなり強くなるだろう」
 「……はい! 頑張ります!」
 「感情もクソもないあんたに言われてもねえ……魔法は少しなら私が教えられるしね。……っと、仲間がやられたから来たわね」

 「グルルル……」
 「グォォ……」

 レッドアイの群れが木の影からギラリとした赤い目をこちらに向けながら涎を垂らす。仲間意識の強い魔物なので、敵討ちと言ったところか。

 「そのようだな。十は居るな、俺が前で引き受けるから遊撃をたのむ」
 「はい! よーし!!」
 「オッケー♪ 『かの者達に健やかなる加護を』<プロテクション>。さて、それじゃやりますか」

 自信のある顔で剣を構えるファムに、補助魔法をかけながら前傾姿勢で本を開くルーンベル。ふむ、三人居るとまあまあ見栄えするな。
 それにしてもルーンベルは補助魔法も使えるのか。聖女『見習い』にしては慣れている気がする。

 「グォォォ!!」
 「来ますよザガムさん!」
 「ああ」

 考えるのは後かと俺は久しぶりに剣を抜く。ファムの成長に少し気持ちが踊っていたのかもしれない。
 
 「はあああああ!」
 「えええ!?」
 「ひゅう!」

 俺の剣閃でレッドアイ達の首筋を狩っていき一瞬で五体を倒してファムとルーンベルが声をあげる。
 
 「よーし!」
 「ガウ!?」

 続けてやる気を出したファムが地を蹴り、距離を詰めて襲い掛かかってきたレッドアイの出鼻をくじいて腹を突き刺す。
 なるほど、気分で強くなるのはその通りかもしれないな。ルーンベルは……いいか。

 「なんでよ!?」

 結局、ファムが二匹ルーンベルが一匹倒して最後を俺がとどめ。
 なんとなくパーティとして戦った感を残して今日の依頼は終わる。
 
 収穫はあったと満足できる日だったが、本番はこれからだった。
 
 
しおりを挟む
感想 304

あなたにおすすめの小説

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...