最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第四章:魔族領からの刺客

その75:【霊王】二人

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 「あはは! 防戦一方じゃない! やっぱりナンバー2ってこの程度?」
 「……」

 女児の方がキルミスと言ったか?
 この子供、奇抜な服装とピンクの髪に惑わされそうだが、俊敏さと腕力は確かに他の魔族よりも高く、一撃はなかなかの重さだ。
 それに対しイルミスと言う緑の前髪で眼を隠している男児は魔力の高さが自慢のようで、俺の移動する場所へ的確に魔法を撃ちこんでくる。
 コンビネーションは上手い、だがこの程度ではメギストスが【王】として認めるには弱く、他になにかあると見ていいだろう。

 「質問を変えよう。お前達の目的はなんだ?」
 「あんたが死んだら教えてあげるわ♪ そらそらそら!!」
 「ふん、そっちの小僧もか?」
 「……僕達を子ども扱いするな……!!」

 どうやら癇に障ったようだな。
 こういうときこそ冷静に努めなければ足をすくわれるが、そういう意味ではやはり子供か。
 すると、イルミスの背後で声をかける魔族が見えた。
 
 「あ、あのイルミス様、あんまり刺激しない方が……」
 「お前達は下がっていろ、僕達があいつを殺すのをしっかり見ていろ!」
 「うーん……どうなっても知りませんよ?」

 あいつは砦のガーディアンとして置いていたヤツだな。俺をチラリと見た後、かなり後方へ下がっていく。

 「‟ミスティックネイル”!」
 「おっと、掠ったか」

 ダガーを交互に振り紫色の剣閃がずれた感覚で飛んでくる。片方を避けると、もう片方が追ってくるというところか。

 「イルミス!」
 「ああ……! ‟グラッジレイブ”」
 「む、これは――」

 イルミスが両手を俺にかざすと、ゴーストやレイスのようなモノを撃ち出し、俺を襲ってきた。
 なるほど『こっち』が本命か。キルミスと二人一組のようだが、実質イルミスが【霊】の部分を司っていると見ていいか。
 さて、これが全力か……? なら、終わりにするか。

 「うふ、そろそろトドメを刺しましょうかイルミス」
 「そうだねキルミス」

 二人がそう呟いた瞬間、キルミスとイルミスが並んで片手を合わせると空の魔法陣が急に消えた。しかしすぐにそれらしき魔法陣が俺の足元に現れて薄いガラスのようなものに包まれる。

 「……エーテルエリア」
 「かかったねザガム。思ったより強かったけど、こんなものだよね」
 「きゃは♪ あの魔法陣、アンデッドや木偶人形を出すだけのものだと思ったぁ?  
 ……結構待ったのよねえ」
 「待っただと?」

 俺が尋ねると、勝ちを確信したからかイルミスが笑みを浮かべながら両手を広げて口を開く。

 「そうだよ、あの魔法陣は僕達の魔力を込め続けて作っていたんだ。この『霊王の檻』を完成させるためにね」
 「あんたの執事やメイドがこの町に流れてきたのは知っていたから探すのは簡単だったけど、【海王】ユースリアが居たのは驚いたわ。自領地に帰るのを見計らって作ったってわけ」
 
 ……イザール達はバレていたか。まあ、俺がピジョンを出したのが悪いのであいつらのせいではない。

 「そうか。ではこれだけの大規模魔法となると本命は俺で間違いなさそうだな。メギストスも俺の居場所は知っているのか?」
 「まあ、メギストス様から聞いたし、知っていると思うわよ♪」
 「そうか」
 「まあ、大丈夫。ここで君は死ぬ。エーテルエリアは狭間の世界……このまま魔法陣を圧縮してあの世ってやつに送ってやると」

 ご丁寧に俺の処遇まで話してくれるイルミスだが、俺は別のことを考えていた。
 それはこの町から出る必要があるということ。またこんなことがあったら静かにファムの訓練が出来ないので、別の国に行くべきだろう。

 さて、ご自慢のエーテルエリアのようだがなんとかならなくもない。俺が冥王と呼ばれている理由は――
 
 「見つけました!! ザガムさんです! あれ!? なんかめちゃめちゃカッコいい鎧着てますよ!?」
 
 力を解放しようとしたところで背後から大声で叫ぶファムが現れた。

 「ファムか、どうやってここへ来た、ルーンベルやメリーナはどうした?」
 「今こっちに向かってると思います! ……その子達は? それにザガムさんはなにをしているんですか?」

 ファムが息を切らせながら眉を顰めると、同じく訝し気な顔でイルミスが呟く。

 「ん? 人間がザガムの名を?」
 「知り合いみたい。ついでに殺しちゃってもいいかな?」
 「そうだね、顔を見られたのも面倒だし」
 「ちょ、ちょっと待ってください!? 大魔王様には人間を殺すまではするなって……ぐえ!?」

 ファムに標的を変えたイルミスとキルミスに、先ほどの魔族が慌てて止める。
 ……人間に甘いのは相変わらずかと思っていると、キルミスに蹴り飛ばされていた。

 「ちょーうるさいー。ちょっと人間が弱かったって言えばいいでしょー! というわけで、死んでもらうね★」
 
 舌なめずりをして目を細めるキルミスはファムを攻撃するため姿勢を低くする。
 チッ、こいつを破るのはもう少しかかるか……

 「逃げろファム、せめてメリーナかミーヤでないとこいつらには勝てん。もう少しでこいつが破れる、早く戻れ」
 「い、嫌です……! ザガムさん動けないんですよね、もうすぐそれを壊せるなら足止めを……魔族みたいだけど子供相手なら……」

 ファムが盾を構えてそう言うと、キルミスの姿が消えた――

 「え?」
 「子供扱いされるのホント嫌いなんだよねー。……死んじゃえ」
 「よせ、キルミス」
 「命令されるのもきらーい!」
 「……う」

 直後、キルミスのダガーが防具に覆われていないファムの脇の下を貫いていた。

 「ザガ、ム……さん……」
 「……っ」

 酷くゆっくり倒れるファム。実際にはそう見えるだけでそんなことは、ない。
 横たわる体を見て、あの夢の女性と重なる――

 プチ――

 「きゃは! 凄い血、これはすぐ死んじゃうなあ。でも、ザガムは【霊王の檻】の中……見殺し確定ね!」
 「フ……」
 「ん?」
 「フフフ……ハハ……」
 「ザ、ザガム様が……」
 「なにを笑っているんだいザガム? 知り合いが殺されておかしくなったのかな。もしかして大切な人だった、とか? まあいいや、もう消えてよ」

 イルミスが挑発するように口を開くが、おかしくて仕方がない。
 『この程度』の児戯で俺を殺せると本気で思っていることが……!

 「はああああああ!!」
 
 俺は縮んでいく魔法陣に両手をかざすと、魔力を放出する。
 目には目、エーテルエリアにはエーテルエリアだ。場を改変すれば破壊することなど訳はない……!

 「馬鹿な……!?」
 「嘘……!?」

 二人が驚愕の声を上げる中、【霊王の檻】とやらは粉々に砕け散った。
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