最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第五章:陰湿な逃亡者

その92:青い服の女

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 この町に青い服の女が居るという情報を得た俺は早々に宿に戻る。
 確かカフェが併設されていたから、そこで今後の話し合いをするかと思案していた。
 依頼をしていないなら町のどこかに居るはず――

 「うおおおお、追いかけてきたぁぁぁ!?」
 「待ってください! 取って食べたりしませんからー!」
 「逃げると追いたくなるのよ、止まりなさい!」
 「む」

 ギルドのある通りから大通りへ出たところで、目の前を青い服の女が過ぎていき、その後をファムとルーンベルが通っていく。

 「……なんと、見つけたのか? しかし、なぜ逃げているんだ?」

 必死になって逃げる青い服の女だが、ルーンベルはともかくファムが居て話がこじれることは無いと思うのだが。
 
 「それは掴まえてからでいいか」

 俺はもファムたちを追うため走り出す。程なくして追いつくと、あと一息で追いつきそうなところで青い服の女が振り返って手を翳す。
 
 「しつこいですね! <レジンタイル>!」
 「わわ!? 地面に油が!?」
 「うひゃあ!? サ、サングラスが……」
 「大丈夫だ、掴まれ」

 なにやら怪しげな魔法で地面を濡らし、ファムたちが勢いよく転びそうになったところで俺は少しだけ浮いて二人を両脇に抱える。
 
 「ザガムさん!」
 「た、助かったわ。あいつが私の荷物を買った女みたい、でも変な魔法使うのよね」
 「よし、俺が回り込む。減速したら後ろから――」
 「あ!? イケメンに助けられてる! ぐぬぬ……独り身のわたしをこれ見よがしに! <スパイダーネット>!」

 何故か涙目でぶつぶつとなにか言っていたが、急に粘性のある糸を飛ばしてきた。
 俺はまずいと判断し、ファムとルーンベルを地面に降ろす。
 直後、俺に糸が絡みついてきて失速。俺は地面を転がる羽目になった。

 「ちょっと、大丈夫!?」
 「すぐに追う。先に行け」
 「ぐぬぬ……よくもザガムさんを……。許しませんよ!」

 ファムが怒りを露わにして再び駆け出す。
 すると、青い服の女は地面に手を翳し、またも魔法を使っていた。

 「くく……次は落とし穴ですよ<ディグアース>」
 「甘いです!」
 「馬鹿な、先ほどより速く、強く、高――」

 落とし穴が出来るであろう場所を一足で飛び、ファムは青い服の女の首に腕を引っかけてそのまま地面に倒した。

 「……まあ、落とし穴を作るなって口走ってたら避けるわよね」
 「うむ。しかし、お手柄だファム」

 感情の起伏で爆発的な能力を出せるファムが見事、青い服の女を掴まえることに成功。さらにそこへイザール達も合流する。

 「おお、ザガム様が」
 「珍しい光景にゃ!? あ、ファム様が抑えているのって……」
 「探していた人ですねぇ。あ、皆さんお気になさらず~。知り合いなので~」

 人が集まって来たところでメリーナが遠ざける言葉を周囲に投げかけて皆この場を去ってくれた。

 「なんか、あのイケメンが今の女を捨てて新しい女に走ろうとしたって?」
 「あー、そういう男居るよねー」
 
 ……立ち去ってくれた。

 ◆ ◇ ◆

 
 「……ん」
 「目が覚めたか」
 「目が覚めるようなイケメン! 天国はここにあったんですね! ぐえ……」

 宿へ引き返した俺達は気絶した青い服の女をベッドに寝かせていたが、数十分ほどで目を覚ました。
 しかし、いきなり俺を見るなり襲い掛かって来たのでそれを避けると、派手に床へとダイブして顔を打った。痛そうである。

 「落ち着いてください。ほら、座って」
 「うう……。で、一体わたしに何の用なんですか?」
 「率直に言うわ。あなた、ブライネル王国の城下町でブサイクな男からカバンを10万で買ったでしょ。それを返して欲しいの」
 「カバン……。ああ、あれですか? それをわたしが買ったことを知っているということは、確かに持ち主のようですね」
 「……どこを見ているのよ」
 「いえ、立派なものをお持ちで……ということはあの像に入っていた資料のこともご存じで?」

 そう言われたルーンベルは片目を細める。
 こいつが『神霊の園』の存在に気付いていることが困ると言わんばかりに。
 すると、青い服の女が口を歪めて笑みを浮かべた。

 「……くく、アレは中々いい金になると思うんですよ。とりあえず資料を返すのは美味しくありませんね?」
 「どういうつもり? あそこを放っておくのは危険って読んだならわかるでしょ!」
 「まあ確かに女性の敵ですね。しかし、これをネタに国をゆすればおおごとになると思いませんか? ……そうですね、わたしと一緒に城へ行って国王をゆする、ということであればいいでしょう!」

 そう高らかに宣言し、俺達は無言でその様子を見ていた。
 そこでルーンベルが口を開く。

 「そのつもりなの? いいわよどうせ取り返したら行く予定だったし」
 「え、あ、ああ、そう、なんですね?」
 「……ええ。良かったわね、ええと名前は?」
 「わたしの名前は大魔法使い‟イスラ=オールウィット”です」
 「イスラ、もしあなたが一人で城にそれを持って行っていたら……」

 ルーンベルが不敵な笑みで首を掻っ切る仕草をする。
 
 「……まあ、後ろ盾もない人間が脅迫じみたことをすれば即拘束。場合によっては秘密裏に抹殺はあるな」
 「ですにゃあ。『神霊の園』がどういう立ち位置かわからにゃいけど、たかが冒険者の女が告発したらどうなるかくらいわかりそうにゃものです……」

 「そ、そんなことは……いざとなれば魔法で……」
 「大魔法使いじゃなくて大迷惑魔法使いかもしれませんねえ♪」
 
 「うーん、私も国から酷い目に合いましたしおススメはしませんよ。でも、いいんですか? もし失敗したらどうなるかわかりません」
 「もうこいつは私達の仲間……もし抜けようとしたら国家転覆を企む人間として突き出すから」
 「ば、馬鹿な!? そんなことが許されるはずがありませんよ!?」
 「まあ、あんた次第よ。大人しく10万で返してくれればこのままどっかへ行ってもらってもいいわ」

 ルーンベルがため息を吐いてから腰に手を当ててそんなことを口にする。
 
 「本当に国が関わっていたら命に関わるわよ?」
 「む、むう……」

 冷や汗をかくイスラ。
 そこへメリーナがとどめを刺しにいった。

 「……もし、先手を打って私達を国家転覆だと言いに城に言っても無駄ですよぉ?  私は夜行性ですから、行動は全て監視させていただきますぅ」
 「ひ、ぃ!? な、なんなんですかあなた達は……分かった、わかりました! ですが、お金の匂いはするのでご一緒します! あ、10万は先払いで」
 「ちゃっかりしているわね。それじゃ、明日は城へいきましょうか。城って言うか神殿に近いものだけど――」

 なんだかんだとイスラは俺達についてくることになった。
 まあ変な魔法を使えるようなのでいざという時に役に立つかもしれない。

 ……グェラ神聖国。さて、黒か白か……?
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