最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第六章:『神霊の園』

その98:好都合

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 「け、結構広いですね!」
 「まあ、女の子を収容して、さらに見張りとかも必要だからね」
 「適当に撒いて大丈夫ですか? <レジンタイル>!」
 「いいわ、見つかった以上正面から逃げるしかないしね! <ホーリーランス>」

 ここぞとばかりにルーンベルが魔法で扉を破壊し、道を確保していく。
 隠れて救出したかったが、ここに居るのがばれているなら風通しを良くしておいた方がいいだろうと俺が提案した。

 「どうぅわ!?」
 「あ、油だと!?」
 「くそ、ルーンベル! あの時腹を壊したのはお前のせいだろ!!」
 「知らないわよー」
 「あ、悪い顔です」

 おせじにも広いとは言えない通路を右に左に駆け巡る俺達。
 追手が一息ついたところでルーンベルが適当な部屋に入る。

 「……ふう、走りっぱなしも疲れるわね」
 「場所はまだなのか?」
 「あと少しよ。少し先に中庭へ出る扉があるんだけど、その先にある建物にみんなが居るわ」
 「よし、時間が惜しいすぐに移動するぞ」
 「あ、待ってください! これ、使えませんか?」
 「お、これはいいかもしれないにゃ♪」

 ファムがなんらかの布を広げ、ミーヤが指をぱちんと鳴らして舌なめずりをする。
 ふむ――


 ◆ ◇ ◆

 「侵入者だってよ、聖女様の言った通りだな」
 「ああ、ヘッベル様も気が気でないって感じだったし」
 「しかも結構手練れ……お、どうだそっちは?」
 「イジョウアリマセン。ムコウヲミテキマス」
 「なんだ変なしゃべり……ああ、お楽しみタイムか。こんな状況でよくやるな、知られたら厳罰じゃないか?」
 「ダイジョウブデス。ヘヤニカエスダケナノデ……」
 「なんだ終わった後かよ」

 ……そういって会釈し、俺はシスター服を着て首輪をつけたファム達女性陣を引いて見回りの兵士の横を過ぎていく。

 俺とイザールはファム達を挟むように粗末な革鎧を着てフルフェイスの兜を装備している。
 あの部屋でファムが見つけたのは服や鎧で、どうやら倉庫だったようなのだ。
 余計な戦闘をしないで済むならと変装をした次第。

 「待て」

 通り過ぎた後、二人いた兵士の内一人に呼び止められ、その場に立ち止まる。
 気づかれたか?
 背中越しにファム達の緊張が感じ取れるなか、男は咳ばらいをして言う。

 「ん……その胸が小さい娘を貸してくれないか? 俺はそういうのが好みでな」
 「……!?」
 
 イスラが目を見開きぶんぶんと首を振る。
 
 「ソレハ、デキマセン。ヘッベル……サマニ、シンイリヲツレテクルヨウイワレテオリマス、ノデ」
 「むう……それは残念……青い髪の女、覚えておくぞ」
 「……!!」

 イスラが早く行こうと目で訴えかけるので、俺は紐を引き歩くのを促す。
 程なくして静けさが戻ると、ファムが口を開いた。

 「……イスラさん、狙われてましたね」
 「寒気がしましたよ! もうもう、スケベ親父は見慣れて来たつもりですが、久しぶりにぞわりときましたよ!」
 「良かったじゃない、胸が小さくても需要があると分かったし」
 「ぐぬぬ……勝ったのに負けた気がする……おかしい、そんなはずは……」
 
 イスラは拳を握り目じりに涙を浮かべながら俺の背中にごつごつと拳を叩きつけてくる。
 そんなやりとりを交えつつ、数人の兵士をやり過ごし――

 「……あそこよ!」
 
 俺達は中庭へ出ることに成功した。


 ◆ ◇ ◆

 
 「チッ、さっきの子可愛かったな……」
 「まあ、この騒ぎが終わったらつまみ食いさせてもらおうぜ」
 「だな!」

 先ほど、ザガム達がすれ違った兵士たちがゆるりと見回りをしている中、油まみれ、糸まみれになった兵士が駆けてきた。
 二人が気づくと、息を切らせながら尋ねてきた。

 「おい、こっちに不審者が来なかったか!?」
 「え? いえ、こちらには来ていません」
 「そんなはずは無い! あいつらはこっちへ走って行ったのだぞ」
 「うーん……静かなものえしたよ。途中、新入りの女を運んでるのに出くわしましたが」
 「粒ぞろいでありました!」

 二人が敬礼をして報告すると、油まみれの男は体を震わせたあとに怒鳴りつけた。

 「ばっかもーん! そいつらが不審者だ!」
 「ええ!? でも女の子は可愛かったですよ!?」
 「参考になるか!? ええい、追うぞ!」
 「こ、こっちです! ラジャー!」
 
 数十人の兵士がさらに追い、中庭に出るための扉に差し掛かると――

 「……隊長! 中庭に!」
 「ついに見つけたぞ! あの小娘、嫌がらせばかりしてきおって……!」
 「あ、ダメですよ隊長! あの青い娘は俺が目をつけてるんで――」

 その瞬間、彼らの視界が白一色に染まった――

 ◆ ◇ ◆

 「やったあ!」
 「一網打尽ですね! 念のためディグアースで穴を掘っておきましょう」

 俺達が居た建物から中庭に通じる扉はこれしかないらしいので、まとまって出てきたところを俺の爆発魔法<フレイムブラスト>で吹き飛ばしてやった。
 死なない程度に放ったが、まあその時はその時だろう。

 「みんな、助けに来たわ……!」
 「みなさん揃っているといいですけど……」

 ルーンベルとファムが収容所の扉を破壊しなだれ込むように中へ。
 
 「し、しんにゅ――」
 「やかましい! ……鍵ゲット」
 「縛っておきますね」
 「手際がいいですわぁ♪ 後から来る相手を蹴散らしますから、ザガム様達は救出へ」
 「助かる」
 「みんな、助けに来たわ! ルーンベルよ!」

 近場の扉の鍵を開けなあら大声で叫ぶも返事が無い。
 確かに今は夜中ではあるが、これだけ騒いでいればひとりふたり目が覚めてもおかしくないはず。

 「あ……!」
 「だ、大丈夫ですか!?」

 結論からすると、女たちは、居た。
 しかし簡素なベッドに寝ている彼女達はみな、荒い息遣いをしながら悶えていた。

 「あふ……た、助け……ありが、とう……でも、体が火照って動けない、の……」
 「ごくり……」

 耳をすませば確かに淫靡な声が聞こえてくる。
 これは……
 
 「ようこそ曲者ご一行様。『神霊の園』へようこそ」
 「ようこそが被ってますクラフィアート様!? ……自ら飛び込んでくるとは殊勝だなルーンベル。しかも女を増やしてくれるとは」
 「ヘッベル……! みんなをどうしたの」
 「ククク、簡単なことさ。この建物全てに”インディマッシュルーム”を焚いて匂いを出している。これを嗅いだ女は体が熱くなってくるのだよ」
 「これじゃ動けないじゃないですか……!? ドエロ空間ですよ!」
 「その程度の認識でいいのか? お前達もそろそろ効き始めるぞ」

 ヘッベルという男がそういった瞬間、ファム、ルーンベル、イスラの三人が床にへたり込む。

 「う……? なんかじんじんします……」
 「こんなに早く効くなんて……」
 「脳内がピンクにぃぃぃ!?」
 「だーっはっはっは! いいザマだな! 男には効かんが、貴様一人くらいどうとでもな――ぶべら!?」

 誇らしげに喋っている声が耳障りなので一足で詰めて顔面をぶん殴ると、聖女の脇を抜けて床に転がっていく。

 「しゃ、喋っている間に殴るとは……ひ、卑怯な……」
 「そんなルールは存在しない。殴りたいときに殴る。……そしてどうやらこの施設の管理者のようだな。聖女ともどもここで始末する」
 「ふふふ、できますかねあなた風情に……!」

 黙っていた聖女が目を見開き、襲い掛かって来た。
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