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第六章:『神霊の園』
その100:秘密
しおりを挟む大魔王の側近だというヴァラキオンという魔族。
だが、俺はこんなやつを見たことがない。
「俺はお前を知らないが……大魔王の密命で動いているのか?」
『なにを言っているのだ? 人間風情が大魔王様を呼び捨てとは許せんな』
「貴様と同じく魔族なのだがな」
『世迷言は死んでからにしてもらおうか!』
来るか。
消してやってもいいが、少し気になる話をしていたので捕える方向にシフトするとしよう。
聖女に憑いていたことも含めて。
「……イスラ、聖女を頼む」
「は、早くしてくださいよ……これ、真面目にきっついです……<アースウォール>」
眠っている聖女を預けると、床を盛り上げて壁を作る。
ありがたいところだが、俺はヴァラキオンに掴みかかった。
『死ににきたか!』
「ここでは全力で戦えまい? 女どもはお前にとっても使い道があるのだろう?」
『……うぬ!?』
天井をぶち抜き、そのまま空中を舞い上がると、先ほどの中庭にヤツをぶん投げる。
「ザガム様!」
「イザールか、少し離れていろ。メリーナとミーヤは中で倒れている三人を頼む」
「リョウカイですにゃ!」
「お任せぉ!」
眼下で、外を警戒していたイザール達を発見し、声をかける。
すると砂埃の中でヴァラキオンが呻くように呟く。
『ぐ……やるな……』
「いくぞ」
『馬鹿が、突っ込んでくるか! <メガヴォルト>!』
地面にめり込んだまま雷魔法を放ってきた。
しかし、空にいる俺の方が有利。寸前で回避し、ブラッドロウで胸板へ攻撃を仕掛ける。
『チッ』
「硬いな」
『ふん、人間にオレを倒せるわけがねぇ!』
剣を振るい俺を弾きながら起き上がるヴァラキオン。
大した威力ではないので、間髪入れずに前蹴りで腹を蹴ってやる。
『効かん!』
「む……!」
足を切り落としにかかってきた剣は体を捩じって避け、そのまま一歩前へ体重移動をかけて魔法を放つ。
「<ギガファイア>」
『自爆する気か!? いや、違う』
「よく見ていたな」
近距離のギガファイアは目くらまし。
すぐに裏へ回ったが、ヤツには見えていたようで振り返らずに剣で防がれた。
距離を取る前にぐるりと振り返ったヴァラキオンの剣が俺の肩に食い込んだ。
『はは! 捕まえた!』
「……」
……油断も隙も多いがこいつのタフさと目の良さは【王】に匹敵すると思う。
それでもユースリア、マルクスには勝てないとだろう。
「手加減してやっているんだ、当然だろう」
『なんだと……! クソが、舐めやがって!』
「その程度だということだ。手の内はだいたい読めた、詫びるなら今の内だぞ」
『ふざけるな……! この距離では避けられまい、ヴァーミリオンクラッシュ!』
奴は剣を横薙ぎに振るうと、赤黒い半月状の塊が俺に向かって飛んできた。
魔力波のようなものかと、ブラッドロウの力の一部を解放して踏み込む俺。
『前に出るのか!? 馬鹿野郎が、真っ二つになれ!』
「お前は確かにその辺の魔族よりは強いが……上には上が居ることを思い知れ。‟滅竜剣”」
『んな、割った!? ……なんてな』
「ふむ!」
ニヤリと笑みを浮かべたヴァラキオンが予測していたとばかりに踏み込んでくる。
ほう、まだ力の差が解っていないようだな……俺は少し楽しくなってきていた。
なぜなら俺に喧嘩を売ってくる魔族は【炎王】ぐらいのもの。
【霊王】? あれは命令されて戦っただけだし、子供だからノーカウントだ。
「フッ、久しぶりに大魔王以外の相手でそこそこ手ごたえがあるやつだ。しかし、俺の滅竜剣は二段構えの剣技、次が……ある!」
『んだと!? ぐあああ!?』
「まだ終わりではないぞ」
衝撃波を消した一撃目からすぐにその場で一回転しながら剣を振り下ろす。勢いを増した一撃はヴァラキオンの踏み込みよりも鋭く頭上へ。
しかし、体を捻ったヤツは致命傷を避け、右肩から腹部を切り裂いただけにとどまった。
「よく避けた」
『なんだ、こいつ……!? だが、その体勢から反撃はできまい!』
青い血を噴出させながらヴァラキオンも俺の頭に剣を落としにかかる。
もちろん、俺がそんな隙を見せるはずも、ない。
「甘いな‟冥双牙”……!」
空いた左手を地面に叩きつけるような動作で勢いよく振り下ろす。
その直後、地面から黒紫の牙が地面から生え、ヴァラキオンの両肩を串刺しにして大きく吹き飛ばした。
『つ、強い!? この大魔王様の側近であるオレが負けるだと……!?』
「これ以上は無駄だ。貴様の知っていることを吐いてもらうぞ」
地面に倒れこむヴァラキオンは剣も折れ満身創痍。
近づきながらブラッドロウを向けて尋ねると、上半身を起こしながら俺に言う。
『こ、こっちが聞きたいくらいだ……! その強さ、まるで勇者ではないか』
「勇者? 俺はさっきも言ったが魔族。【冥王】ザガムの名を聞いたことはないか?」
『……!? ザ、ザガム……様……!? まさか……しかし冥王……?』
どうやら【冥王】である俺のことを知っているようだな。
名乗らねば分からんとは、魔族領に引きこもっていると人間の領地に散っている魔族には知名度が低いのだろう。
「そうだ。ではまずはこちらの話からだ」
『ほ、本当にザガム様ならわかる範囲で全て――』
急に従順になったヴァラキオンがあぐらをかいて答えてくれる姿勢になった。
だが、その時――
「うーん、それ以上はダメかな? 悪いけど死んでもらえる?」
『え? き、貴様はけん――』
「……!?」
良く知っている、ふざけた口調が聞こえた瞬間、ヴァラキオンの頭が吹き飛ぶ。
その様子に一瞬、思考が停止。
目の前に居た人物の存在が、信じられなかったからだ。
「メ、メギストス……!?」
「やあ、久しぶりザガム♪」
ごとりと、ヴァラキオンの体が地面に横たわり、顔を血だらけにしたメギストスがそこに居た。
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