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第六章:『神霊の園』
その103:大魔王、その目的
しおりを挟む「ふう……」
「捗っているかルーンベル」
「あ、ザガム。うん、順調よ。ただ、一部の女の子達はしばらく医療施設に入る感じね……」
そう言うルーンベルの表情は暗いが、この『神霊の園』をまともにするため奔走していたので作業自体は楽しそうだ。
このままここに残る可能性があるので、ルーンベルとはここでお別れになるような気がする。
「もう、なんでわたしまで……」
「いいじゃないですかイスラさん、みんなのお役に立てるんですよ? クラフィアート様も報酬をくれるって言ってましたし」
「それを早く言ってください! 困ってる子はいねえかー!」
「ええー……」
ファムとイスラも施設全体の掃除や建て替えに従事。
メリーナ達もだ。
男は怖がるかもしれないということで俺やイザール、メギストスは手を出していない。
好都合とはこういうことだろう。
俺はメギストスの部屋へと歩き出す。
「やあ、ザガム! ここはいいところだね、女の子ばかりで心が洗われるよ。ひとりくらい連れて帰れないかな?」
「そんなことをしたら俺がぶん殴ってやるからな? そしてはぐらかすな、あのヴァラキオンという魔族に心当たりは?」
「ないね」
ふふんと鼻を鳴らして言うが、俺は目を細める。
こいつは嘘をつくときまぶたがぴくぴくと動くのだ。小さいころ、ユースリアが用意した俺のおやつを食った時に発覚した。
「嘘だな。お前はなにか口封じをしたくて殺しただろう? あいつは大魔王様と言っていたぞ、あいつを使ってこの『神霊の園』を掌握して女たちを自分のものにしようとした……それを隠すためにここへ来た、違うか?」
「ふふふ……」
椅子に背を預けてニヤリと笑い、メギストスは続ける。
「それは無いね。私はあくまでもザガムの嫁を見たくてお前の屋敷へ行った。そしたら居なかった。探したらここだった。オーケー?」
「何故、カタコトで……」
イザールが疑問を口にするが、メギストスは特に気にした風もなく続ける。
「そういうわけで、ここに来たのはザガム達のせいだから、あの魔族と私は関係が無いよ。まあまあ強かったみたいだけど」
「……」
確かに過程と結果から見れば言う通りだが、あの魔族とこいつの少しのやりとり……無関係なのはどうにも嘘くさい。
だが、こいつは口を割ることはないだろう。
「ふん、ならファムを見て気が済んだだろう。ユースリアを連れてそろそろ帰ってくれ」
「なにを言ってるんだ、本番はこれからだろ? 式場の手配と呼ぶ人間を決めないと。あ、仲人は私がやるからね? あ、痛っ!?」
「か・え・れ」
俺が顔面を掴んで握りつぶしてやると一瞬で消えて俺の横に立っていた。
「残像だよ? まあ、結婚式は冗談として……とりあえず感情が戻りつつあるのを確認したかっただけさ。笑ったことを【霊王】二人に聞いたけど、悲しいという感情はどうだい?」
「いきなりなんだ?」
「人も魔族も喜怒哀楽という感情が備わっているものだ。しかしザガム、お前は小さいころから怒りの感情しかなかった。そいつが笑ったんだ、パパとしては興味があるだろう?」
「誰がパパだ……」
だが、言われてみればこの何百年、笑ったことなど無かったかもしれない。
【霊王】にファムを殺されかけた時、それとヴァラキオンとの戦いで『楽しい』と感じたのは初めてだったかも――
(ごめんね、ザガム……わたしの……せい……で……)
「……っ」
「どうされましたかザガム様!?」
「いや、なんでも、ない……」
「大丈夫かい? そんなことじゃ私を倒せないよ?」
「うるさい……!」
「おお、怖い。後は悲しみと喜びか……相反する感情だし、難しいなあ」
頭が痛い。
そしてこいつはなにを言っている……? 俺に感情があったら、どうだと言うん……だ……。
「でも、とりあえずは勇者の覚醒からかな? 私を倒せる可能性はそれしかないからねえ」
「なんだと……? お前は一体なにを企んでいる?」
「そうだねえ、『僕』は君を応援しているんだ、やりたいことがあればやるといい。私を殺したければ努力をするんだ」
「……」
こいつはなにを言っている?
だが、昔にもそんなことがあったような――
「あ、居た居た! ザガムさん、ユースリアさんがお昼の用意ができましたよって
! あ、フェルナンデスさんも行きましょう!」
「ふふふ、ファムちゃん。私はフェルディナントだよ」
「余裕で名前を間違えるなんてファムらしいわ……」
「それよりご飯にしましょう……もうくたくたです……ユースリアの姐さんに感謝ですよ」
俺が考えごとをした瞬間、ファムたちが入って来た。
昼か……こいつも口を割らないだろうし、昼を食べながら考えるか。
そう思った瞬間、室内に殺気が満ちた。
「……!?」
「な、に、この空気……かは……」
「ど、どうしたんですかルーンベルさん!? イスラさんも!?」
「あ、ああ……!?」
余波でルーンベルとイスラが膝をつきイザールが冷や汗を流す。
そしてメギストスが邪悪な笑みを浮かべて俺に向く。
「……さて、勇者の覚醒は必須になったし、悪いけどザガム。ちょっと糧になってくれるかい?」
「なに……を!?」
「え!?」
瞬間、メギストスの手が俺の胸を貫いていた――
「ごほ……!?」
み、視えなかった……こいつが本気で殺しに来たのは初めてだ……それにしても、一撃、だと……こいつ、今まで『本気で手加減』していた、のか……
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