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第七章:荒れる王都
その128:頭の中に浮かぶもの
しおりを挟む「だっしゃおらぁ!!」
『ぬるい!』
「私達も居ますからね!」
「ですにゃ!」
三方向からの攻撃でゼゼリックを攻め立てる私達。
蛇の皮膚科と思いきや、ドラゴンの鱗みたいな硬い皮膚をしており、私とミーヤさんの剣撃はそれほどダメージを与えられていない。
「<ギガフレア>!」
『<シャドウエクスプロード>!』
「うらぁ!」
『相殺した魔法の中から!? 前へ出ることしかできん脳筋が……!』
唯一のダメージ源はやはりヴァルカンさんで、勇猛果敢と言うべき攻めを見せてくれていた。
気がかりなのは相手に与えるダメージよりヴァルカンさんの方が傷を負っていること。相打ち狙いに見えるけど……
「ヴァルカンさん、私達が引きつけます! 隙を見て攻撃してください!」
「馬鹿言うな、それでお前達になんかあったらザガムに殺されるのは俺だぞ! 魔族ならどこかに急所があるはずだ、とにかく攻めろ!」
「もうちょっと耐えてね、ヴァルカン!」
ヴァルカンさんとメモリーさんが苦戦するあたり、どうやら結構な強さのようです! 私もあの時のような力が出せれば――
「しかたない、死んでも文句言うにゃよ!」
『ぬ……!』
「いいぞミーヤ!」
ミーヤさんの大剣がゼゼリックの後頭部にヒットし、鈍い音がする。
一瞬怯んだ隙にヴァルカンさんの拳がお腹に突き刺さった。
これは効いたはず! と思ったけど、ゼゼリックはギロリとした目をミーヤさんに向けて、後ろ蹴りを放った。
『死ね……!』
「みゃぁぁぁぁぁぁ!?」
「ミーヤさぁぁぁん!?」
『貴様もだ!』
「ぐお!?」
蹴られたミーヤさんは家屋に叩きつけられ、ヒビ我と共にめり込み、ヴァルカンさんは殴られたもののガード。
だけど大きく吹き飛ばされ、皮膚が青紫になっていた。痛そうというか折れているんじゃ……
そこへルーンベルさんが駆けつけてくれました。
『とどめ……!』
「させませんよ!」
『大人しくしていろ、勇者めが!』
踏み込むゼゼリックの前に立ちはだかり、ヴァルカンさんへ向かうのを阻止。
私だって……!
「やああああ!」
『ふむ良い気迫だが、まだ未熟!』
「二人ならどうにゃぁぁぁぁ!」
『死にぞこないが!』
ザガムさんに教わった剣術を駆使し、素早い両手での縦斬りから、スイング気味に横薙ぎを繰り出す。
私の攻撃をガードして足を止めたところに、口から血を流しながらミーヤさんが吠えた。
「<ヒーリング>。なに? あんた達が全力でも倒せないの?」
「真の姿を出せれば……まあ、互角かそれ以上になるだろうが……ザガムの手前、嬢ちゃんに見せるわけにゃいかねぇんだろ。メモリーはそもそも相性が悪すぎる」
「もう少しで完成するからもうちょっと頼むわー」
「ふむ……ヴァルカン、ファムをこっちに下げれる?」
「……? まあ、出来るぞ」
「なら、策があるわ。よろしく!」
なにやらルーンベルさんに策があるらしく、私に下がって欲しいらしいですね。
なら、交代して後ろから魔法を繰り出しましょう!
「とぅ! やっ! ……くぅ、肩を!」
『甘いな。さて、そろそろ始末をつけるか』
「嬢ちゃん、こっちだ!」
「はい! 聞いてまし――ああああああ!?」
『なに……!?』
バックステップでヴァルカンさんに前を譲ろうとした瞬間、私は物凄い勢いで引っ張られ、後方へと飛んでいく。
「よっと、ナイスキャッチ」
「ふわぁ……」
「ナイスよメモリーさん! ファム、こっちを向いて」
「なんれふか? ……あああああああ!? なんで私に目潰しをっ!?」
「私達が生き残るためよ! さあ、ヴァルカン! 耳も塞いでおくから一気にやっちゃいなさい!」
「おおう……!」
ルーンベルさんの声に呼応した後、私の耳はルーンベルさんによって塞がれ、そこから何も聞こえなくなる。
「……~!」
「……!」
「!!!?」
地響きや熱風が起こっているのと、なんとなく怒声や雄たけびらしきものを言ってるなーというのは分かる。
分かるけど、さっぱりなにが起こっているのか分からないです!?
いえ、分かるけど分からない……あああ、ど、どっち……?
「よっしゃ!」
「チェックメイトねー♪」
その瞬間、不意に耳栓していたルーンベルさんの指が外れ、目もぼんやり見えるようになってきた。
目をこすってよく見ると――
『ぐうう……やりますね……』
「なんかボロボロになってる!?」
――ゼゼリックは片腕で胸を押さえ、ボロボロでした。なにがあったのかはヴァルカンさんが本気を出したんだと思いますが、
「いいところを見逃しました……」
「まあまあ、勝てばいいのよ。……それでゼゼリック、トドメを刺す前に聞いておきたいんだけど、帝国を先導したのはあんた?」
『……』
「言いたくなきゃそれでもいいがな? このまま捻りつぶしてやる」
ヴァルカンさんが首を掴んで締め上げると、ゼゼリックは腕を叩きながら呻くように口を開く。
『無論、我々だ。クロイラー様の復活のため、世の混沌が必要。そのためにヴァラキオンや私が各国の中枢へ潜り込んでいる」
「そこがわからねえ。大魔王の名はメギストス。クロイラーってのはなんなんだ?」
「……今の大魔王になる前の大魔王ね、私は知っているわよ。150年前に人間と敵対し、悪逆非道を尽くした歴代最悪の大魔王クロイラー」
「そ、そうなんですか?」
メモリーさんがどうしてい知っているのかという疑問はあるけれど、続きが気になるので尋ねてみる。
「ええ。当時、人間はおろか魔族ですらも殺戮を行い、従わぬものは洗脳か死。人間と一部の魔族も協力してようやく辺境に追い込むことができた……」
『そうだ、そして忌々しい封印を施されたのだ』
「そんなことがあったのか……?」
「ヴァルカンはまだ若いから知らないでしょうけど、魔族領があそこまで小さくなったのはその大魔王が魔族だったことに由来するのよ」
大迷惑をかけたのが大魔王で、大魔王の味方をした魔族は倒したけど、人間と協力した魔族は申し訳ないからと引きこもってしまったのだそう。
それを取りまとめたのが、今のメギストスだとメモリーさんは口にした。
『人間というひ弱な存在など魔族の食い物……家畜だ。人間同士で争い、妬み、殺し合いをするなら寿命も力もある魔族がこの地を統一すべきだとは思わんか?』
「……さあな。確かに弱い生き物だが、仲良くなれないってこたあねえ。強者なら、弱者の手を差し伸べてやるってのが筋じゃねぇのか? 少なくとも、俺はそれで助かったからな」
ヴァルカンさんが目を細めてそう言うと、ゼゼリックは蔑んだような目を向けて返す。
『世迷言を。しかし、ここまで派手にやられては反撃も難しい、か。まだ力が完全に蘇ったわけではないし、今日のところはこれくらいにしてやろう』
「逃がさんぞ」
『逃げるさ。勇者はその時まで預けてお――』
最後まで言い終えることなく、ゼゼリックは目に見えない速さで仕掛けたヴァルカンさんの一撃で真っ二つになった。
『なんと……!? だが、甘い』
「なに!?」
「ヴァルカンさん!」
下半身が爆発し、背中に直撃を受けて倒れたヴァルカン。その状況を見て笑いながら上半身だけで空へと舞い上がっていく。
『ヴァルカンとか言ったな、次は必ず殺してやる』
「くそ、逃げんなてめぇ! 最後まで戦えぇぇぇ!!」
「<ホーリーアロー>!」
『無駄だ……!』
「ならこれをくらうにゃ!」
『ぐあ!? 無茶苦茶するな貴様等!?』
血まみれのミーヤさんが大剣を投げつけ、よろける。
そこへルーンベルさんの最大技がゼゼリックを襲います!
「よし、トドメよ! <アセンション>!」
『ぐぁぁぁぁぁぁ!? おのれ……まだ、死なんぞ……』
「しぶといわね……! くっ、二回目はさすがにきつい……」
「もうあんなに高く! ええい!」
『ぎゃっ!?』
「森に落ちたわ、帝国兵の真っただ中……これ以上は無理ね」
咄嗟に投げた盾が綺麗に決まり、フラフラと森の方へ。
メモリーさんが草木で町の外の監視をしていたみたいですが、そのまま気配ごときえたとのこと。
……とりあえず追い返したけど、大魔王って結局なんなんでしょう……
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