異世界を8世界ほど救ってくれって頼まれました。~本音で進む英雄譚~(仮)

八神 凪

文字の大きさ
23 / 43
World 1

1-17 妖精(下級)現る!

しおりを挟む
 
 そんなこんなで三日後!

「勇者殿、王都行きチケット手配できましたぞ」

 領主は特に俺達を疑うことなく受け入れてくれ、城に黒幕が居る事を伝えるとすぐに行けるよう手配してくれたのだった。

「ありがとうございます。いやあ、お世話になりまして……」

「ああ、いえ……」
 歯切れが悪いがそれは仕方ない。今日までの俺達は食っちゃ寝生活。いわゆるニートとほぼ同じ生活環境だったからだ。

 特に酷いのがフィリア。伊達に初登場時にペットボトルとせんべいを持っていた訳ではなかった。
 俺はチケットを受け取り、部屋へ戻ると……

「えへへーハルさーん。こっちでひなたぼっこしましょうー」
 窓際のソファでくつろいでいた、実にだらしない。太ももが丸見えだ! まったく!

「喝!」

「あひゃあ!? 背中に氷を入れないでください!?」

 たるんだ根性を叩きなおしてやろうと、背中に氷を突っ込んでやるとゴロゴロと床を転がって行った。今日は水玉か。
 そしてトイレから戻ってきた綾香にたしなめられる。

「ちょっと間違えたら犯罪者だから気を付けてよね? それよりリキッドさんに聞いたんだけど王都のある大陸の魔物は結構強いらしいわ。レベル上げといた方がいいかも」
 綾香が真面目な顔でフィリアを立たせると、背中に氷を入れた。鬼だ。

「そうだな……北の山がいい稼ぎ場所ってルボワールが言ってたっけ、見に行くか?」

「そ、そうれふね……わたしも新しい魔法を覚えたいですし。回復魔法は誰も持ってませんしね!」
 復帰したフィリアもノリノリなので丁度良さそうだ。

<早速行きましょうか>

「ローラ、どうしたんだ急に?」

<最近出番がありませんでしたから自己主張を>
 せちがれぇな……。

 ---------------------------------------------------

 領主さんに一言ことわり、俺達は山へと出かけた。
 麓までなら30分くらいで到着するような場所だったんだけど……


「殺風景……」

「木が……腐ってる?」
 フィリアの言うとおり、葉は枯れて、木もモノによっては根から腐っていた。
 ただごとじゃないと思っていると、一本の木がむずむずと揺れているのが見えた。

<緊急警報、敵性存在を確認しました>

「まああの動いている木だろうな、先制攻撃と行くぜ!」
 いつものようにカチカチとコマンドを入れて光刃を出し、一気に斬りかかる!

 グオォォォン!?

「擬態が見破られたのがショックみたいね? たあ!」

<敵名:マイティーオーク【Lv10】 どうやらこの辺にある養分を自分だけで吸収し、他の木を枯らしたみたいですね>
 なるほどな、ならこいつを倒せば解決って訳か!

 ゴォ!

 やられまいと枝を振るうが光刃で受けると枝は溶けていっていった。
 そのまま俺達は枝をどんどん斬って行き、とどめをフィリアに任せる。

「え、ええい! ≪ライトニング≫!」
 マイティーオークに雷が当たり、勢いよく燃え上がり始めた。

<ちゃらら~ん♪ 牛ちちはレベルが上がった>

「酷くないですか!? でもあがったんですね! ……どれどれ」
 ギルドカードを一緒に見ると、レベルが何と3から7まで上がっていた。

<ファイヤーを習得しました。アイスを習得しました>
 ローラが義務的にフィリアのステータスを読み上げ、沈黙する。

「あ、アクアが欲しかったですねー。水は大事ですもん……」

「いいじゃないか、ポンコツでもちゃんとスキルを覚えられって分かったから」

「そうね。今の所たまに不発する以外は何の問題も無いわね」
 みんなであはは、と笑っていたが、事態は急変していた。

「焦げ臭いな……」

「何でしょう? ……あ!?」
 後ろを見ると、先程倒したマイティーオークの火種が燃え広がっていたのだ!
 やべ、これはマズイパターンだ!?

「フィリア魔法! 魔法で何とかして!」

「え、ええ!? わたし今アクアが無いって言ったばかり……」

「こういうところがポンコツなのかね!?」

「アイス、アイスでとりあえず!」
綾香に言われて魔法を次々と繰り出すフィリア。

「は、はい! ≪アイス≫!」

 ゴトリ

 巨大な氷の塊がマイティオークの上に乗っかりじゅうじゅうと溶けはじめる。

「おお、いける! どんどんいこう!」

「≪アイス≫! ≪アイス≫!」

 ……10分後、火は消し止められ事なきを得た。邪悪な魔物だったが、マイティーオークが見るも無残な姿になっているのは中々堪える。

「うえ……気持ち悪い……」

「そういうな、フィリアのレベル上げの材料になったんだ」
 するとそのマイティーオークからフワっと光のようなものが出てきた。

「お、おーおー! 良かった! 抜けられた!」

「喋るのか……? ローラ!」

<はい、マイマスター。どうも下級妖精のようです、実体がこちらに無いアストラル体のため何かに取りつく必要があります>

「どっかでキレイなねーちゃんの声がするなあ。そうそうその通りだよ、木の中で寝てたらマイティーオークだったみたいで凶悪になっちゃったみたい! ごめんね!」
 白い光は可愛い声で何となく頭を下げたような気がした。

「まあ別にいいよ。これで被害が広がらないなら。じゃあな」

「早い!? ウチの事気にならないの!? 妖精だよ妖精!」

「ローラ!」

<はい。マイマスター。【下級】妖精ですね>

「辛辣ぅ!? あはは、君達面白いね! ウチも連れてってよ!」

「間に合ってます」

「おほう!?」

「陽ー行くわよー! 私達もレベル上げないと!」
 すでに興味を失った綾香は山を登り始めていた。流石は綾香、この程度では動じない。

「そういうわけだ。俺達も遊びじゃないんだ。この先は船で大陸に渡ることになるし、着いて来ても大変だぞ? じゃあな、気を付けて帰れよー」

「ぐぬぬ……」
 何だか悔しそうな感じで俺達を見送る妖精(下級)を後に、次の敵を探すのだった。

 ---------------------------------------------------

「っと! これで終わり!」

 綾香の一撃で巨大な熊がズズーンと倒れる。

<クレイジーベア【LV13】でしたね。ちゃらら~ん♪ 綾香はレベルが上がった!>

「それは必ずしないといけないの?」

<不本意ながら。ヒールを習得した。ファイアーを習得した>

 お、念願の回復魔法!

「やったな綾香、回復魔法だ」
「いいですね! これで魔物を倒すのも楽になりますよ!」
「ありがとー♪ なら前衛はなるべく陽に任せて、ヒーラーかな?」

 俺達がわいわいやっていると、ガサガサと草むらから何か出てきた。

「きゅ」

 たぬきだった。まだ子たぬきなのでつぶらな瞳がかわいいが……。

<下級妖精です>
 あっさり見破られていた。

「なんでよー!? ちくしょー!!」
 たぬきはあっという間に消えて行った。可愛がって連れて行ってもらえるとでも思ったのだろうか?
 ここに居る女の子達は可愛いものだからといってニコヤカになるとは限らない。

「何アレ?」

「何でしょうね? たぬきって病原菌が多いらしいですから迂闊に触れないですよね」

「ねー」

 ドライだった。

 そしてめでたく俺もレベルが上がり、俺は5から14 綾香は5から13 フィリアが3から7でフィニッシュした。クレイジーベアを丸ごと引きずって帰ったら毛皮や爪、後はマイティオークの枝が割と高く売れホクホク顔で帰った。ご飯は領主の館にあるので貯金した。

 チケットの日付は二日後のため、もう少しレベルを上げようと思ったのだが……。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る

がい
ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。 その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。 爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。 爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。 『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』 人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。 『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』 諸事情により不定期更新になります。 完結まで頑張る!

処理中です...