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World 1
1-17 妖精(下級)現る!
しおりを挟むそんなこんなで三日後!
「勇者殿、王都行きチケット手配できましたぞ」
領主は特に俺達を疑うことなく受け入れてくれ、城に黒幕が居る事を伝えるとすぐに行けるよう手配してくれたのだった。
「ありがとうございます。いやあ、お世話になりまして……」
「ああ、いえ……」
歯切れが悪いがそれは仕方ない。今日までの俺達は食っちゃ寝生活。いわゆるニートとほぼ同じ生活環境だったからだ。
特に酷いのがフィリア。伊達に初登場時にペットボトルとせんべいを持っていた訳ではなかった。
俺はチケットを受け取り、部屋へ戻ると……
「えへへーハルさーん。こっちでひなたぼっこしましょうー」
窓際のソファでくつろいでいた、実にだらしない。太ももが丸見えだ! まったく!
「喝!」
「あひゃあ!? 背中に氷を入れないでください!?」
たるんだ根性を叩きなおしてやろうと、背中に氷を突っ込んでやるとゴロゴロと床を転がって行った。今日は水玉か。
そしてトイレから戻ってきた綾香にたしなめられる。
「ちょっと間違えたら犯罪者だから気を付けてよね? それよりリキッドさんに聞いたんだけど王都のある大陸の魔物は結構強いらしいわ。レベル上げといた方がいいかも」
綾香が真面目な顔でフィリアを立たせると、背中に氷を入れた。鬼だ。
「そうだな……北の山がいい稼ぎ場所ってルボワールが言ってたっけ、見に行くか?」
「そ、そうれふね……わたしも新しい魔法を覚えたいですし。回復魔法は誰も持ってませんしね!」
復帰したフィリアもノリノリなので丁度良さそうだ。
<早速行きましょうか>
「ローラ、どうしたんだ急に?」
<最近出番がありませんでしたから自己主張を>
せちがれぇな……。
---------------------------------------------------
領主さんに一言ことわり、俺達は山へと出かけた。
麓までなら30分くらいで到着するような場所だったんだけど……
「殺風景……」
「木が……腐ってる?」
フィリアの言うとおり、葉は枯れて、木もモノによっては根から腐っていた。
ただごとじゃないと思っていると、一本の木がむずむずと揺れているのが見えた。
<緊急警報、敵性存在を確認しました>
「まああの動いている木だろうな、先制攻撃と行くぜ!」
いつものようにカチカチとコマンドを入れて光刃を出し、一気に斬りかかる!
グオォォォン!?
「擬態が見破られたのがショックみたいね? たあ!」
<敵名:マイティーオーク【Lv10】 どうやらこの辺にある養分を自分だけで吸収し、他の木を枯らしたみたいですね>
なるほどな、ならこいつを倒せば解決って訳か!
ゴォ!
やられまいと枝を振るうが光刃で受けると枝は溶けていっていった。
そのまま俺達は枝をどんどん斬って行き、とどめをフィリアに任せる。
「え、ええい! ≪ライトニング≫!」
マイティーオークに雷が当たり、勢いよく燃え上がり始めた。
<ちゃらら~ん♪ 牛ちちはレベルが上がった>
「酷くないですか!? でもあがったんですね! ……どれどれ」
ギルドカードを一緒に見ると、レベルが何と3から7まで上がっていた。
<ファイヤーを習得しました。アイスを習得しました>
ローラが義務的にフィリアのステータスを読み上げ、沈黙する。
「あ、アクアが欲しかったですねー。水は大事ですもん……」
「いいじゃないか、ポンコツでもちゃんとスキルを覚えられって分かったから」
「そうね。今の所たまに不発する以外は何の問題も無いわね」
みんなであはは、と笑っていたが、事態は急変していた。
「焦げ臭いな……」
「何でしょう? ……あ!?」
後ろを見ると、先程倒したマイティーオークの火種が燃え広がっていたのだ!
やべ、これはマズイパターンだ!?
「フィリア魔法! 魔法で何とかして!」
「え、ええ!? わたし今アクアが無いって言ったばかり……」
「こういうところがポンコツなのかね!?」
「アイス、アイスでとりあえず!」
綾香に言われて魔法を次々と繰り出すフィリア。
「は、はい! ≪アイス≫!」
ゴトリ
巨大な氷の塊がマイティオークの上に乗っかりじゅうじゅうと溶けはじめる。
「おお、いける! どんどんいこう!」
「≪アイス≫! ≪アイス≫!」
……10分後、火は消し止められ事なきを得た。邪悪な魔物だったが、マイティーオークが見るも無残な姿になっているのは中々堪える。
「うえ……気持ち悪い……」
「そういうな、フィリアのレベル上げの材料になったんだ」
するとそのマイティーオークからフワっと光のようなものが出てきた。
「お、おーおー! 良かった! 抜けられた!」
「喋るのか……? ローラ!」
<はい、マイマスター。どうも下級妖精のようです、実体がこちらに無いアストラル体のため何かに取りつく必要があります>
「どっかでキレイなねーちゃんの声がするなあ。そうそうその通りだよ、木の中で寝てたらマイティーオークだったみたいで凶悪になっちゃったみたい! ごめんね!」
白い光は可愛い声で何となく頭を下げたような気がした。
「まあ別にいいよ。これで被害が広がらないなら。じゃあな」
「早い!? ウチの事気にならないの!? 妖精だよ妖精!」
「ローラ!」
<はい。マイマスター。【下級】妖精ですね>
「辛辣ぅ!? あはは、君達面白いね! ウチも連れてってよ!」
「間に合ってます」
「おほう!?」
「陽ー行くわよー! 私達もレベル上げないと!」
すでに興味を失った綾香は山を登り始めていた。流石は綾香、この程度では動じない。
「そういうわけだ。俺達も遊びじゃないんだ。この先は船で大陸に渡ることになるし、着いて来ても大変だぞ? じゃあな、気を付けて帰れよー」
「ぐぬぬ……」
何だか悔しそうな感じで俺達を見送る妖精(下級)を後に、次の敵を探すのだった。
---------------------------------------------------
「っと! これで終わり!」
綾香の一撃で巨大な熊がズズーンと倒れる。
<クレイジーベア【LV13】でしたね。ちゃらら~ん♪ 綾香はレベルが上がった!>
「それは必ずしないといけないの?」
<不本意ながら。ヒールを習得した。ファイアーを習得した>
お、念願の回復魔法!
「やったな綾香、回復魔法だ」
「いいですね! これで魔物を倒すのも楽になりますよ!」
「ありがとー♪ なら前衛はなるべく陽に任せて、ヒーラーかな?」
俺達がわいわいやっていると、ガサガサと草むらから何か出てきた。
「きゅ」
たぬきだった。まだ子たぬきなのでつぶらな瞳がかわいいが……。
<下級妖精です>
あっさり見破られていた。
「なんでよー!? ちくしょー!!」
たぬきはあっという間に消えて行った。可愛がって連れて行ってもらえるとでも思ったのだろうか?
ここに居る女の子達は可愛いものだからといってニコヤカになるとは限らない。
「何アレ?」
「何でしょうね? たぬきって病原菌が多いらしいですから迂闊に触れないですよね」
「ねー」
ドライだった。
そしてめでたく俺もレベルが上がり、俺は5から14 綾香は5から13 フィリアが3から7でフィニッシュした。クレイジーベアを丸ごと引きずって帰ったら毛皮や爪、後はマイティオークの枝が割と高く売れホクホク顔で帰った。ご飯は領主の館にあるので貯金した。
チケットの日付は二日後のため、もう少しレベルを上げようと思ったのだが……。
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