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第四章:オークション
その47 レオスの考察
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「ふう……」
ドサリとカバンを置いて僕はベッドへと座り一息つく。他のみんなは女の子ばかりなので勿論ここには僕一人だ。
時刻はすでに22時を過ぎ、夕飯もすでに終えて先ほどみんなと別れたところだった。
ちなみに夕食は僕達が獲ったクラッシュバッファローの肉を宿の厨房へ渡し、霜降りステーキにしてもらい豪華な食事となったことを付け加えておく。
だけども……
「やっぱり男が僕だけだと気を使うから疲れるね。楽しいのはいいことなんだけどね」
それにエリィ達と合流してからはこうやって一人になる時間がそれほど無かったのも要因かな。僕は寝転がり、目を瞑って考える。
……エリィとルビアはさておき、問題はベルゼラとバス子。彼女達の本当の目的が何なのかが見えない。実のところを言うとずっとそこが引っ掛かっている。
――僕と結婚したいというベルゼラに嘘は無さそうなんだけど、大魔王様を復活させたいという願いが合致しない。僕が大魔王様を倒したということを知っている彼女なら、復活させてもまた僕が倒すという可能性を考えていないのはおかしい。これが演技で人間皆殺しをするための布石だとしたらベルゼラの演技力には脱帽だ。
あと、バス子は今のところおかしいところは無いけど、トラブルを起こしそうだから目が離せない。あの二人には聖杯をチラつかせて釣ってみるのが一番かな? もし復活しても大魔王を倒すのは全然余裕だし。
「……聖杯か」
ノワール城の宝物庫から持ってきた聖杯をカバンから取り出して眺めてみる。特に変哲もないものだけど、本物なのかなあ。
「後はあの時現れた魔族がどう出てくるか、かな」
野盗に紛れて領主様を殺そうと企んでいたあいつは冥王が生きているようなことを示唆している。できればもう一度会って話を聞きたいところだけど、出てくるかな?
ガバッと起き上がって僕は聖杯をカバンにしまい込むと、考えを中断し、空気を入れ替えるため窓を開けて深呼吸をする。
「ルビアに勧められてお酒を飲んだけど、あれは飲みすぎだよね……エリィもそうだけど、この先どうするんだろう?」
いい月が出ているなあ……ん? 今、陰ったような……? 気のせい?
そのまま窓の近くでうーんと伸びをしながら月を眺めていると、ウトウトしてきたので僕は窓を閉めて布団に入り、また目を瞑る。
「明日は散歩がてらお店を見て回ろうかな……」
気疲れと、布団の心地よさのせいで僕はすぐに眠りに落ちた――
◆ ◇ ◆
<翌朝:光曜の日>
「ん、んん……あれ、もう朝……? 早いなあ……」
起き上がって時計を見ようと体を動かすけど動かない。
「あ、あれ? 右腕が重い……」
左手で布団を跳ねのけると、そこにはまた――
「エリィ!? いつの間に入ってきたんだよ!」
僕を抱き枕にしてすやすやと眠るエリィの姿があった! イチゴ柄のパジャマがとても可愛い……いや、そうじゃない!
「お、起きてよエリィ、こんなところを誰かに見られたら――」
「レオス、起きてる? 寝てても入るけど」
そこで間の悪いことにルビアが訳の分からないことを言いながらガチャリと扉を開けて入ってくる。というか鍵かけなかったっけ僕?
「あ、ちょっと待って!?」
「あらあらーレオス君ったら大胆ね。お姉さんびっくりしちゃった」
「違うんだ、気づいたらエリィが僕を掴んでいて、動けなくて、ああ僕は何を言ってるんだ……」
「なーんてね、知ってるわよ」
「そうなんだルビアは知ってるんだ……って、え?」
ルビアのセリフに疑問符が頭に浮かび、僕は寝転がったまま首を傾げる。ちょっと妙な態勢かもしれない。
「実はあたしも最近聞いたんだけど、エリィって旅の間ずっとレオスを抱き枕にしていたらしいわよ? 何でも寝心地がいいんだって。その時はレオバールとかに知られるのが嫌でレオスが起きる前に部屋へ帰っていたみたいだけど、もう咎めるものも嫉妬するものもいないから開き直ったんでしょうね。この事実がもしかしたらレオスが好きと勘違いしている可能性は高いわね」
記憶を取り戻す前の僕は確かに寝坊助で、ちょっとやそっとじゃ起きなかったのは事実。
「あまり聞きたくない内容が多く含まれた長台詞をありがとう! ええー……」
「落ち着くらしいわよ。あたしもこの前一緒に寝た時、確かにその片鱗を感じたわね」
「何かが覚醒するみたいな言い方は止めてほしいなあ……何でもいいけど、起こすの手伝ってよ」
僕が呻くと、ルビアは苦笑しながらハイハイとエリィの指をひとつずつ外してくれる。そんな中でルビアがボソリと呟いた。
「この子、孤児だったでしょ? 12歳で賢聖になって過酷な旅を始めたけど、たぶん早すぎたのよ。で、あんたっていう同年代の存在は凄く支えになったのかもしれないわね。ま、それにしても安心しすぎだと思うけど」
「むにゃ……レオス君……」
「とりあえず着替えさせるから連れて行くわね」
「あ、うん」
幸せそうな寝顔をエリィを見て胸がドクンとなる。何だ、この感覚……今までエリィを見てもそんなことは無かったのに……?
「これは……」
「これは恋!」
「うわあ!? バス子、いきなり出てくるなよ!」
「すみません、止めたのですけど」
バス子がいつの間にか僕の背後に張り付き、ベルゼラが慌てて引きはがしに来た。
「二人とも起きてたんだ」
「んー! は・な・れ・な・さ・い! わ!?」
ベルゼラがぐっと引っ張り、思いのほか簡単にすっぽ抜けたのか、二人は床に転がっていく。
「わひゃ!? いてて……久しぶりのお布団で良く眠れましたからねぇ。えっへっへ」
「いったぁ……で、エリィさんが居ないことに気づいたルビアさんを追ってここまできたのです。朝食は食堂みたいですので、一緒に行きましょう」
「そうだね。エリィが起きたら行こうか」
「えっへっへ、今日のご予定は? そろそろわたし達もお金を稼がないと肩身が狭いんで楽して大もうけできる何かをしたいんですけどねえ」
「ないよそんな都合のいいのは!? オークションは明日だし、考えているよ。市場を調べて、そのあと出店をしようと思うんだ。二人にはそこで手伝ってもらおうかな」
僕がそういうと、ベルゼラは首を傾げて呟く。
「お手伝い……私にできますでしょうか」
「任せてくださいお嬢様。たとえお嬢様が何の役にも立たなくても、わたしが立派にこの美貌を使って稼いできますから!」
「言い方が気に入らないわね……」
「ま、まあ、とりあえず出店ができるかどうか調査しに行くから付いてきてよ」
「はーい!」
返事だけはいいなバス子……とりあえず今日はこの二人と行動を共にしてみよう。聖杯もチラつかせて様子を見るかな?
そして朝食後、僕達は市場へと足を運ぶ。
ポップコーンの時みたいに、何かお金になりそうな食材でもあるといいなあ。
ドサリとカバンを置いて僕はベッドへと座り一息つく。他のみんなは女の子ばかりなので勿論ここには僕一人だ。
時刻はすでに22時を過ぎ、夕飯もすでに終えて先ほどみんなと別れたところだった。
ちなみに夕食は僕達が獲ったクラッシュバッファローの肉を宿の厨房へ渡し、霜降りステーキにしてもらい豪華な食事となったことを付け加えておく。
だけども……
「やっぱり男が僕だけだと気を使うから疲れるね。楽しいのはいいことなんだけどね」
それにエリィ達と合流してからはこうやって一人になる時間がそれほど無かったのも要因かな。僕は寝転がり、目を瞑って考える。
……エリィとルビアはさておき、問題はベルゼラとバス子。彼女達の本当の目的が何なのかが見えない。実のところを言うとずっとそこが引っ掛かっている。
――僕と結婚したいというベルゼラに嘘は無さそうなんだけど、大魔王様を復活させたいという願いが合致しない。僕が大魔王様を倒したということを知っている彼女なら、復活させてもまた僕が倒すという可能性を考えていないのはおかしい。これが演技で人間皆殺しをするための布石だとしたらベルゼラの演技力には脱帽だ。
あと、バス子は今のところおかしいところは無いけど、トラブルを起こしそうだから目が離せない。あの二人には聖杯をチラつかせて釣ってみるのが一番かな? もし復活しても大魔王を倒すのは全然余裕だし。
「……聖杯か」
ノワール城の宝物庫から持ってきた聖杯をカバンから取り出して眺めてみる。特に変哲もないものだけど、本物なのかなあ。
「後はあの時現れた魔族がどう出てくるか、かな」
野盗に紛れて領主様を殺そうと企んでいたあいつは冥王が生きているようなことを示唆している。できればもう一度会って話を聞きたいところだけど、出てくるかな?
ガバッと起き上がって僕は聖杯をカバンにしまい込むと、考えを中断し、空気を入れ替えるため窓を開けて深呼吸をする。
「ルビアに勧められてお酒を飲んだけど、あれは飲みすぎだよね……エリィもそうだけど、この先どうするんだろう?」
いい月が出ているなあ……ん? 今、陰ったような……? 気のせい?
そのまま窓の近くでうーんと伸びをしながら月を眺めていると、ウトウトしてきたので僕は窓を閉めて布団に入り、また目を瞑る。
「明日は散歩がてらお店を見て回ろうかな……」
気疲れと、布団の心地よさのせいで僕はすぐに眠りに落ちた――
◆ ◇ ◆
<翌朝:光曜の日>
「ん、んん……あれ、もう朝……? 早いなあ……」
起き上がって時計を見ようと体を動かすけど動かない。
「あ、あれ? 右腕が重い……」
左手で布団を跳ねのけると、そこにはまた――
「エリィ!? いつの間に入ってきたんだよ!」
僕を抱き枕にしてすやすやと眠るエリィの姿があった! イチゴ柄のパジャマがとても可愛い……いや、そうじゃない!
「お、起きてよエリィ、こんなところを誰かに見られたら――」
「レオス、起きてる? 寝てても入るけど」
そこで間の悪いことにルビアが訳の分からないことを言いながらガチャリと扉を開けて入ってくる。というか鍵かけなかったっけ僕?
「あ、ちょっと待って!?」
「あらあらーレオス君ったら大胆ね。お姉さんびっくりしちゃった」
「違うんだ、気づいたらエリィが僕を掴んでいて、動けなくて、ああ僕は何を言ってるんだ……」
「なーんてね、知ってるわよ」
「そうなんだルビアは知ってるんだ……って、え?」
ルビアのセリフに疑問符が頭に浮かび、僕は寝転がったまま首を傾げる。ちょっと妙な態勢かもしれない。
「実はあたしも最近聞いたんだけど、エリィって旅の間ずっとレオスを抱き枕にしていたらしいわよ? 何でも寝心地がいいんだって。その時はレオバールとかに知られるのが嫌でレオスが起きる前に部屋へ帰っていたみたいだけど、もう咎めるものも嫉妬するものもいないから開き直ったんでしょうね。この事実がもしかしたらレオスが好きと勘違いしている可能性は高いわね」
記憶を取り戻す前の僕は確かに寝坊助で、ちょっとやそっとじゃ起きなかったのは事実。
「あまり聞きたくない内容が多く含まれた長台詞をありがとう! ええー……」
「落ち着くらしいわよ。あたしもこの前一緒に寝た時、確かにその片鱗を感じたわね」
「何かが覚醒するみたいな言い方は止めてほしいなあ……何でもいいけど、起こすの手伝ってよ」
僕が呻くと、ルビアは苦笑しながらハイハイとエリィの指をひとつずつ外してくれる。そんな中でルビアがボソリと呟いた。
「この子、孤児だったでしょ? 12歳で賢聖になって過酷な旅を始めたけど、たぶん早すぎたのよ。で、あんたっていう同年代の存在は凄く支えになったのかもしれないわね。ま、それにしても安心しすぎだと思うけど」
「むにゃ……レオス君……」
「とりあえず着替えさせるから連れて行くわね」
「あ、うん」
幸せそうな寝顔をエリィを見て胸がドクンとなる。何だ、この感覚……今までエリィを見てもそんなことは無かったのに……?
「これは……」
「これは恋!」
「うわあ!? バス子、いきなり出てくるなよ!」
「すみません、止めたのですけど」
バス子がいつの間にか僕の背後に張り付き、ベルゼラが慌てて引きはがしに来た。
「二人とも起きてたんだ」
「んー! は・な・れ・な・さ・い! わ!?」
ベルゼラがぐっと引っ張り、思いのほか簡単にすっぽ抜けたのか、二人は床に転がっていく。
「わひゃ!? いてて……久しぶりのお布団で良く眠れましたからねぇ。えっへっへ」
「いったぁ……で、エリィさんが居ないことに気づいたルビアさんを追ってここまできたのです。朝食は食堂みたいですので、一緒に行きましょう」
「そうだね。エリィが起きたら行こうか」
「えっへっへ、今日のご予定は? そろそろわたし達もお金を稼がないと肩身が狭いんで楽して大もうけできる何かをしたいんですけどねえ」
「ないよそんな都合のいいのは!? オークションは明日だし、考えているよ。市場を調べて、そのあと出店をしようと思うんだ。二人にはそこで手伝ってもらおうかな」
僕がそういうと、ベルゼラは首を傾げて呟く。
「お手伝い……私にできますでしょうか」
「任せてくださいお嬢様。たとえお嬢様が何の役にも立たなくても、わたしが立派にこの美貌を使って稼いできますから!」
「言い方が気に入らないわね……」
「ま、まあ、とりあえず出店ができるかどうか調査しに行くから付いてきてよ」
「はーい!」
返事だけはいいなバス子……とりあえず今日はこの二人と行動を共にしてみよう。聖杯もチラつかせて様子を見るかな?
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