前世は悪神でしたので今世は商人として慎ましく生きたいと思います

八神 凪

文字の大きさ
121 / 196
第六章:大魔王復活?

その115 怪しげな依頼?

しおりを挟む

 <明曜の日>

 「ささ、こちらへ」

 「あ、はい」

 「早くしてよね」

 ″エリィとルビア”を丁重にギルドへ迎え入れていく、先ほどの男性。僕達は後からついていく形となる。なんでもギルドマスターの話を聞いて欲しいと言うのだ。

 「なーんか嫌な感じがしますねえ」

 「ええ。でも二人は有名人ですし、特に名も知られていない私達に興味が無いのは仕方がないわよ」

 「えっへっへ。大魔王を倒したのが実はレオスさんで、娘のお嬢様がここにいると知ったらあいつ度肝を抜かれますよ!」

 「そして私は冥王。お前はただの貧乳」

 「やかましいですよ!? おっと、どうやら準備ができたみたいですね」

 バス子がルビアの後を付いて行こうとした瞬間、先ほどの男がバス子を止めた。

 「すみません。お付きの方々はちょっと……」

 「お付きの方々!? わたし達は――」

 バス子が男性に食って掛かろうとしたので、僕はバス子を止めて言う。

 「僕達が必要ないなら別に聞きたいわけでも無いですし、構いません。ただ、僕達も用事があるので急いでくれると助かります」

 「何? それは聖職様が決めることだろうが。お前ごときが口出す権利は無かろう。冒険者か? カードを見せろ」

 急に横柄になった男性にギルドカードを渡すと、眉をぴくっと動かしてから僕に突っ返してきた。

 「……ふん、Cランクか。まあまあだな」

 「こいつ殺していいか?」

 「ダメだよ!? メディナは僕のことになると過激になりすぎだからさ。いつもは大人しいのに……」

 「まあどっちにしても聖職以外はダメだダメだ」

 と、男性がエリィ達を部屋へ案内しようとしたが、二人の顔は物凄いことになっていた。どれくらいかは想像にお任せします。

 「……その人達が一緒でなければ私はお話を聞きません」

 「へ? い、いや、こんな雑魚みたいなの……」

 「雑魚ねえ。さっきあんたが飛び出してきてから今まで、あたし達がみんなをコキ使ったり、さげすむ発言をしたかしら?」

 「い、いえ、でもこんな……こいつはCランクですし……」

 そこでルビアがすぅっと息を吸って大声で叫ぶ。

 「いいから、ギルドマスターに聞きなさい! あたし達はみんなと一緒じゃなければ帰るわよ!」

 「わ、わかりました……!?」

 周りにいた人たちもその剣幕にぎょっとしてこちらを見て固まる。男性は慌ててギルドマスターの部屋へと駆け込んだ。

 「おー」

 ぱちぱちとメディナが拍手をし、僕達はエリィ達のところへ集まった。

 「かっこよかったよ、ルビア」

 「もう、ああいうランクとかで見下してくるやつはほんと嫌いなのよね」

 「姐さんにびびってましたね。いい気味です」

 「それにしても私達に何の用なんでしょうね。あ、戻ってきました」

 エリィがそう言うと、男性が冷や汗をかきながら戻ってきていた。しどろもどろになりながら口を開く。

 「あ、あの、こちらへお願いします……皆さんで」

 「はい!」

 エリィが元気よく返事をし、僕達はぞろぞろと中へ入っていく。というか何気に大所帯だよね。女の子ばかり……
 部屋の一番奥にはデスクがあり、部屋の中央に来客用のテーブルとソファが備え付けられていた。促されて女の子達がソファへ座り、僕は後ろに立つ。

 「座ればいいのに」

 「人数分は無いからね僕はここでいいよ」

 そこでギルドマスターであろう向かいに座る男性がニヤリと笑って口を開く。灰色の髪に切れ長なの目をしている、イメージとしては狐っぽい感じのイケメンだ。その彼がニヤリと笑い、ゆっくりと口を動かす。できる……? そういう雰囲気だ。

 「ウチの冒険者が申し訳ないっ!」

 突然パンと手を合わせて頭を下げてきた! 

 「俺はギルドマスターのフェネク。まずは失礼を詫びさせてくれ、エリィさんにルビアさんの仲間達、すまなかった」

 「いえ、こういうこともあるのはわかっていますし問題ありませんよ」

 「そう言ってくれると助かる。聖職を見て舞い上がったのだろう」

 「それで、話というのは? 私達も急いでいるので……」

 エリィが素早く切り込むと、フェネクさんは咳ばらいを一つして語り出した。

 「……実は、国王宛に書状を届けて欲しいのだ」

 「書状? 他の冒険者じゃダメなの?」

 「ああ、できれば高ランクの信用が出来る者がいいと思って逡巡していたんだ。ちょうど出払っていてね、そこへ通りがかったのがお二人だったというわけ。どうだろう、報酬はもちろん渡す。なるべく早く渡したいから頼まれてくれないだろうか」

 この通り、とやはり手を合わせて頼み込んでくるフェネクさん。エリィが一瞬考え、僕を見上げて言う。

 「レオス君、どうしましょう。届けるだけなら受けてもいいかと思うんですけど。私達の馬車は速いですし、お急ぎならちょうどいいかも」

 「うーん、そうだね。期限はどれくらいなんですか?」

 「え、ええ? あ、そうだな、ここから王都まで乗合馬車で三日かかる。五日以内に届けてくれると助かるな」

 「それならいいかしら? いい、受けても」

 「大丈夫だと思うよ。報酬は? それと重要度はどれくらいのものでしょうか? 封蝋はありますか」

 僕が矢継ぎ早に尋ねるとフェネクさんがまた僕とルビアの顔を交互に見比べて声をあげる。

 「ええー……? 金貨三十枚でどうかな? 封蝋はあるから、極秘内容だと思って貰って構わない。王都に到着したら向こうのギルドを一度訪ねてもらい、城への許可をもらってくれ」

 王都には入らないとダメか……まあ、エリィとルビアを城に行かせて僕が黄泉の丘というパターンでも問題ないかな?

 「わかりました、その依頼、受けます」

 「ちょ、ちょっと待ってくれ!? どうして君が決めているんだい? 聖職はこの二人だろう? エリィさんたちもどうしてこの子に尋ねるんだい」

 「え? だってこのパーティのリーダーはレオスだからよ? あたし達は付いて行っているだけだから」

 「はあ?」

 「レオス君のご実家に挨拶をするためにラーヴァ国へ向かっているんですよ」

 フェネクさんが僕とエリィ達を見比べた後、

 「マジか……冴えない顔をしているのになあ……」

 「レオスはかっこいいし強い。わからせるか?」

 「だからいいって!? ま、まあ、そういうわけなんで依頼は受けます。他に注意事項などはありますか?」

 「あ、ああ、後はこの契約書を――」

 と、細かい説明を受けてから僕達は今度こそ町を出発できた。書状は鉄の筒に入り、封蝋どころか封印の魔法もかかっているみたいだった。まあ、渡せばいいだけだし、これで金貨三十枚ならアリかな?



 ◆ ◇ ◆


 「ふう、何とかなったか。後は向こうにいるネックスと合流をしてくれればことが運ぶか」

 「ですね。それにしてもあのガキ、めちゃくちゃ羨ましい……」

 「ははは。あの年でハーレムだからなあ。俺も驚いたよ。拳聖はちょっと口説こうかなと思ったけど、ありゃダメだ。全員レオスにいかれていやがる。さ、俺達も準備するぞ」

 「わかりました」

 レオス達を見送った後、フェネク達は再びギルドの中へ入る。

 が、

 「(チッ。一足遅かったか。しかし、何か人間達が企んでいる様子……変装して便乗させてらもらおうか)」

 悪魔の一人、ダンタリオンが徐々にレオス達に追いついてくるのだった。
 
 



 
しおりを挟む
感想 448

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

裏庭が裏ダンジョンでした@完結

まっど↑きみはる
ファンタジー
 結界で隔離されたど田舎に住んでいる『ムツヤ』。彼は裏庭の塔が裏ダンジョンだと知らずに子供の頃から遊び場にしていた。  裏ダンジョンで鍛えた力とチート級のアイテムと、アホのムツヤは夢を見て外の世界へと飛び立つが、早速オークに捕らえれてしまう。  そこで知る憧れの世界の厳しく、残酷な現実とは……?  挿絵結構あります

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

処理中です...