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その8 エルフの里と亜人種事情
しおりを挟む「この甘いお水おいしいれすね~♪」
「お、おい、それ以上はやめとけ、な?」
「わらしのお水を取るんれすかー! じゃがいも、美味しいですぅ」
すっかり出来上がってしまったネーラは床にだらしなく座り、コーラをごくごくと飲んでいく。信じたくはないが、コーラを飲むことによって酒に飲んだような状態になり、飲むほど泥酔に近づいているようだ。
さっき近づいていた時、顔はすこぶる美人で一瞬ドキッとしたが、今はキャラ崩壊が酷く赤ら顔でケタケタと笑う彼女は残念の一言。
「みゅー?」
「お猫様だー! 可愛いー♪ お猫様も雨水をどうぞぉ」
「止めろぉぉ!?」
近づいて来た三毛猫にコーラを飲ませようとしたネーラを慌てて止めて取り上げる。すると口を尖らせたネーラが俺にしなだれかかってくる。
「返してよぉ、それを飲むとすっごく気持ちいいの……ね、お願い……」
「ごくり……」
俺に顔を近づけてキスをするような態勢になり俺は喉を鳴らす。吐息が近くなってきたその時――
「ぐう」
カクンと、首が落ちそのまま俺の肩に顎を乗せるといびきをかいて寝てしまった。なんなんだ一体……
「みゃー!」
「……残念だなんて思ってないぞ」
サバトラにペシペシと俺の足を叩くので何となくそう返すと、俺はそのままネーラを抱きかかえてソファに寝かせると毛布をかけてやる。
「明日には帰ってくれると助かるんだがな」
「みゅー」
「はは、とりあえず遊ぶか?」
俺は手を伸ばしてきた三毛猫を抱っこして言うと、二匹は嬉しそうに鳴いた。さて、とりあえず見ておくか……
――その後、ネーラは目を覚まさなかった。
かといって具合が悪くなったわけでもなさそうで、大いびきをかいて寝ていたのでそこは一安心と思い、しばらくテレビを見ながら子ネコ達と遊んでいたが、夜になりそのまま俺もリビングで就寝した。
子ネコをお猫様と呼んだ彼女が子ネコを奪って帰ることも予測できたので、ネーラの近くで寝る。
「ん……?」
「わ!? お、起きた!?」
「お、ネーラ……ふあ……起きたのか……」
翌朝、気配を感じて目を覚ますとうっすらと開けた目の前にネーラの顔があり覗き込んでいた。俺はまだ眠いなと思いながら目を瞑りつつ話すと、ネーラが揺すってきた。
「お、起きてよ。私、昨日の記憶がないから教えて欲しいんだけど……へ、変なことはされてないみたいだけど」
「ふああああ……起きたなら帰ればよかったのに……あ、武器がどこにあるか分からなかったからか」
「そ、そうよ! 私の武器を返しなさい!」
凛とした声でそう言うが、昨日の残念ながらも色っぽかったあの姿を思い出し俺は苦笑する。
「何? 何で笑うの!?」
「いやあ、別に。ちょっと待ってろ、持ってきてやる。あ、子ネコを出しとくか」
「あ……!」
武器が無ければ帰りにくいようだし、子ネコを奪って逃げることはしなさそうだ。俺が寝ている隙にそれをしなかったのがその証拠といえるだろう。
俺は寝ぼけ眼のまま、親父たちの部屋へ行くと、鍵付きのクローゼットに収めていた弓矢とナイフを取り出してからリビングへと戻る。去り際、一応仏壇に手を合わせておく。
「戻ったぞー」
俺がリビングに戻るとそこには――
「お猫様かわいいでちゅねー!」
「みゅー♪」
「みゃー……」
「毛並みがとてももふもふしてるわ……ああ、お猫様がこんなに近くでもふれるなんて……私はバチがあたりそう……ん、でも可愛いからいいわ……んー、ちゅ!」
確かに攫ったりはしなかった。が、美人のエルフが赤ちゃん言葉で二匹を抱きしめて頬を摺り寄せたり、キスをしていた。三毛猫は嬉しそうだが、サバトラは疲れている気がする。
「何をやっているんだ……?」
「うひゃぁん!? ん、んん! は、早かったわね」
「みゃー!」
「みゅー」
びっくりして子ネコを手放したネーラは慌てて取り繕い、咳ばらいをしながら俺に向く。子ネコ達は解放された後、俺の下へと走ってきたので抱きかかえてやる。そのままネーラに武器を返してやった。
「ほら、これで帰れるだろ?」
「う、うん……スミタカは本当に人間、なのか?」
「お、初めて名前で呼んでくれたな! というか人間以外には見えないだろ? いや、お前の世界の人間は違うかもしれないけど……」
俺が頬を掻きながら苦笑すると、ネーラは不意に真面目な顔になってから俺に言う。
「……私が知る人間は私達、エルフやドワーフといった亜人を虐げ、女は慰み者にされ、男は奴隷やショーの見世物にするような悪逆非道な存在なの。だから、よく覚えていないけど寝ていた私に何もせず、こうやって武器を返して家に帰させるようなことは絶対に無いわ」
「ま、人間も色々だ。こっちの世界だって悪いやつはいる。たまたま俺がお前に危害を加えなかったというだけだから、警戒するのはいいと思うぞ? 短い間だったが、エルフと話せて楽しかったよ。まさかコーラで酔っぱらうとは思わなかったし」
「あ、あの甘い水か……あれは危ない……」
顔を赤くして俯くネーラの頭をぽんぽんと撫でてから勝手口へと向かう俺達。
これでお別れ、後は勝手口を塞いで後はお互いいつも通り……そう思っていたのだが――
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