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その14 今後の指針を
しおりを挟む「それでスミタカよ、お主これからどうするのじゃ?」
ミネッタさんが俺にそんなことを言い、俺は目をぱちぱちさせて返事をする。
「これから?」
「そう、これからじゃ。丘の上にある家におるということじゃが、今後もこの村に来るつもりはあるか?」
「そうだな……正直さっきの話を聞く限り関わり合いにならない方がお互いのためって気はするな。元々、あの勝手口は封じるつもりだったし、来ない方がいいかもしれないな」
「お猫様をここに呼んでくれたことは感謝しておるし、お主が良ければ構わんがの」
「さ、最長老? ……ふん、まあネーラに悪さをしないならいいだろう……」
と、先ほどまで処されようとしていたことを考えると好意的になってくれたのはありがたい。当時を知るエルフもミネッタさん以外には居ないようだからミネッタさん達から話をしてくれれば出入りはできるだろう。
しかし、異世界人の俺がここに居るのはやはりまずいかと俺も考える。ネコを探して連れてくる話をしたものの、どうしようか考えていると母猫が口を開く。
『私は行き来して欲しいわね。子供には会いたいし』
「ん? どうしてだ? 俺が来なくてもお前が来ればいいじゃないか」
『この世界の精霊になったから、向こうへ行くには結構な労力を使うのよね。だからこっちで暮らすのよ。ここには猫が居ないし、子ネコは危険が少ないスミタカの家に置いて欲しいの』
「んー……」
そう言われると母猫に会えなくなるのは子ネコが可哀想か。死んだと思っていたのに生きていたから嬉しそうだったしなあ。するとベゼルさんが人差し指を立てて口を開く。
「まあ、スミタカ君は我々のことを考えてくれているから渋い顔をしているんだろう? 私としては崖に家ができた以上、それが消えるまでは何かしら起こると思う。族長はこの村に居るけど、エルフの集落は他にもあるし、他種族もそれなりに頒布しているんだ。相変わらず数はなかなか増えていないんだけど、最長老が言うには三千年前より多いらしいけど」
「……奴隷にされたエルフが人間と交わり産まれたハーフエルフは多かったがな。何故か男でも女でも人間との間に子はすぐできたものじゃ。もう残ってはおらんじゃろうが」
ミネッタさんのエグい話はおいといて、確かに俺の家がそのまま崖から生えていたら興味本位で近づく者もいるかもしれないと顎に手を当てて考える。
もし破壊されたとしたら家の中はどうなるのだろうか? 勝手口ばかりに気を取られていたけど、リビングから庭に繋がっている窓はどうだったか? カーテンをしているから気にしてなかったけど、庭からガラスを割られて侵入された場合、結構危ないかもしれない……となればエルフたちと仲良くなっておき、この辺の見回りをしてもらうのもいいのではないか?
「……よし、ならたまに遊びに来ていいか? 俺は向こうの世界で仕事があるから毎日は無理だけどたまに母猫に会いにくるよ」
『賢明だと思うわ。お家はエルフと私で警戒しておくから安心していいわよ』
「頼むよ」
俺がそう言うと、ベゼルさんが椅子から立ち上がり笑いながら口を開いた。
「そうと決まれば、村の中を案内しよう! 族長、最長老様、構いませんね?」
「ああ、みんなに紹介しておいてくれ」
「はい。それじゃ行こうか、スミタカ君。そろそろネーラも目が覚めるだろう」
「あ、はい。お前はどうするんだ?」
『私はちょっとここに居るわ。これから私の家になるからね』
母猫はそう言うと、子ネコに顔を寄せて頬ずりをすると口にくわえて俺の手に子ネコを乗せた。
『また後でね』
「では行こうか」
「わかった。ミネッタさん達はいいのか?」
「うむ。すぐに行くから先に行っておいてくれ」
ミネッタさんがそう言うと、ベゼルさんが俺の手を引いて歩き出す。というか――
「うわ!? 俺のバットを受けたところがめちゃくちゃ腫れあがってる!? す、すまない、大丈夫か?」
「おお、痛いと思ったらこんなになっていたか。よし、ならまずはフローレのところへ行こう。薬なら彼女だからな」
「……あいつか」
「みゃー!」
「みゅー!」
俺は不安しかないなと思いつつ、元気に鳴く子ネコを抱き、ベゼルさんに並んで外に出た――
◆ ◇ ◆
「よろしいのですか、最長老様? あなたが一番人間を忌み嫌っていたと思うのですが……」
「ふっふっふ、今でもその気持ちは持っておるよ。しかし、あれから三千年も経ち久しぶりに見た人間があのような善人だと興味も沸こうというもの」
『向こうの世界にも悪人はいるけど、この世界ほどじゃないわ。さて、あなたたちふたりに残って貰ったのは他でもなく、お猫様のことよ』
スミタカが出て行った後、母猫は残ったウィーキンソンとミネッタと話を始める。
「この三千年、大陸へ人間が来ていないのはひとえに私の中に居る精霊や他に精霊のおかげだったんだけど、私が復活したことで聖域の結果が弱くなったわ。まだ力を扱いきれていないせいだから、向こう百年くらいはちょっと警戒をした方がいいかもしれないの』
「なるほど……それは他の種族にも伝えておいた方が良さそうですな。すぐにでも」
『よろしくね。後はなんだかんだでスミタカにはこっちにも行き来するよう誘導したけど、多分彼の力は必要になるわ。文明レベルはこの世界と段違いだから、ね』
「そう、ですか」
ウィーキンソンは暗に『そういうことがある』と言われているような気がして渋い顔になる。今まで平和だったのに、と。しかし、お猫様がそのままだと消えてしまっていたことを聞いているので、状況は深刻にならずにすんだのかとも複雑な気持ちで頷く。
「どちらにせよ、こちらの人間がどういうふうになっているかが分からんから警戒を強めるしかないのう。絶滅してくれていると助かるんじゃが! ……無理かのう」
『人間はしぶといからね。ま、そうそう何か起こるとは思えないけど、警戒していきましょ』
母猫は真剣な顔でそう言うと、ウィーキンソンとミネッタは同時に頷いた。
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