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その53 ウィルの村
しおりを挟む「結構近いんだな」
「そうね、あまり遠いと何かあった時にお互いを呼べないから走って10分程度の場所にあるわ」
「他にもエルフの村はあるんですかネーラ?」
「ええ、私達の村とウィル村長の村、それともうひとつあるわ」
「みゅー」
俺と黛、ネーラにフローレ、そしてベゼルさんに数人のエルフが大荷物を持ってウィルさんの村へと向かっていた。水路については帰ってからか明日にでも、としている。
今回は俺の持ってきた肥料、それと野菜の種を植えることが目的だけど、いつも来れるわけじゃないのである程度自分たちで見ることができるようにしたい。
「なんだかんだでエルフ達ってトマト好きだったよな」
「あーそうですねえ。調理なしでもそのままおやつ感覚で食べられるのがいいですからね。甘いやつは女の子が特に好きかもしれません。赤いし」
「赤いのは関係ないだろう……それだったらイチゴが物凄く好きそうだ」
「イチゴはいいですね。ボクが食べたいかも! 桃も好きなんですよねえ……」
「聞いたことがないわね。美味しいの?」
「桃は先輩の庭にある木からできそうな――」
黛の話にネーラとフローレが加わり、和気藹々としながら隣を歩く。果物もいいかもしれないなと記憶の片隅に置いておくことにした。
もしかすると桃栗三年柿八年が桃栗三日柿八日みたいなレベルで短縮されそうな気もする……
そんなこんなでコンビニに行く感覚でウィルさんの村へと到着すると、ベゼルさんが村の人に声をかけてくれた。
「おおーい、ウィル村長はいるかい」
「あ、ベゼル兄ちゃんだ! 遊んでー!」
「はっはっは、今日は別の用事があるからダメだぞー!」
「ちぇー。じゃあ村長呼んでくるね」
「子供に人気なんだなベゼルさん」
「結構面倒見がいいのよ、兄さんって。私は久しぶりに来たけど、兄さんは他の村を見に行ったりすることが多いからね」
黛たちと話していたネーラが笑いながらそう言ってくる。まあベゼルさんは筋肉のせいで近寄りがたいだけでめちゃくちゃいい人なのは良く知っているから納得は行く。
ただ、ファーストコンタクトが上手く行けばの話だけど……
「おお! スミタカ殿にベゼル! ネーラ達も」
「こんにちはウィル村長、遅くなったけど例のものを持ってきた」
「ああ……とてもありがたい……本当にありがとう……! さ、こっちだ!」
ウィル村長直々に案内され、俺達は村の中に入っていく。
村の内部は俺がネーラ達の村に初めて行った時のような家屋で、少し懐かしさを感じる。
「スミタカさん、ベゼルさん。ログハウスのノウハウは伝えてもよろしいでしょうか?」
「ん? ああ、俺は構わないよ。できればエルフの村全部には伝えた方がいいと思うし」
「そうだね。私もスミタカ君の言う通りだと思う。とりあえずこの村から頼むよ」
「承知しました!」
俺達がそう言うと、エルフ達はサッと散って若者に声をかけ始め、娯楽の無い村らしくわらわらと集まってきた。その間、畑を耕そうと足を速めた。
「ここだ。何とかなるだろうか?」
「うへえ……これはまた漫画みたいな荒地ですね先輩……」
「ああ……水が足りていないみたいだな。井戸が枯れたからって言ってたっけ?」
「うむ。だから先日水を貰いに行ったわけだ」
「あー、先に水路の確保だったかなあ。まあ、今日は水も持ってきているから大丈夫だけど、水をあげないと育たない可能性があるから毎日大変かもしれん」
「そこは私達が頑張るしかない。任せてくれ」
ウィルさんが力強く頷き俺と握手を交わした後、作業を開始する。
「先輩、肥料はこれくらいでいいかな?」
「水をじょうろで撒いてから被せた方が混ぜやすいぞ、ほらスコップ」
「わーい!」
「ネーラ、種まきずれてますよ」
「あ、あれ? 等間隔にしているつもりだったのに……」
「ベゼルさん、そっち大きな岩掘り起こしておこうか。今後、野菜の種類が増えるかもしれないし」
「お、私の出番だな! ふん! はっはっは!」
「あの大岩を一瞬で……!?」
「嫌だなあ、スミタカ君もそれくらいできるだろう?」
「あ、そういや力は強いんだったな。……もしかして黛もなにか特殊能力もっていたりするんだろうか?」
「なんです?」
「ああ、いや――」
そんな調子で畑を耕していく俺達。
もちろん妨害なども無く速やかに終了して明日また経過観察に来ることを伝えて村を後にした。
「ネックはやはり水だな……」
「ですねえ、お昼過ぎましたけど湖に行きますか?」
「だな。少しでも掘っておいた方がいいだろ」
その足で湖に行き、水路を作成しようと足を運ぶ。だけど、まさかあんなことになるなんてなあ……
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