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その60 ドワーフの集落
しおりを挟む「和んでいるところ悪いんだけど、ドワーフの集落に異変は起きていないか?」
<な、なごんでなどおらん! 人間の娘、俺の弱いところをなぜそうも簡単に……わふーん……>
「黛、気持ちは分かるが話ができない。それのコテツとキサラギが怒ってるぞ」
「ああ、ごめんなさい!? コテツ、キサラギおいでー」
「みゅ!」
「みゃーん!」
ご立腹の子猫達は黛の手に収まり頬ずりをして、なんとか許しを貰おうと頑張っているのを横目に、横たわる柴犬を抱き起しもう一度話しかける。もふもふだ。
「すまない、これで話せるか?」
<ふん、人間がこの島に来たのか……これで亜人も終わり、か>
「いや、俺は――」
<大丈夫よ、この二人は異世界から来た人間だからこの世界みたいに迫害したりはしないわ>
<異世界だと……? 確かに、髪の色などは違うか……?>
柴犬は目を細めて俺と黛を見た後に鼻を鳴らし、シュネに向き直る。
<そういえばエルフの守護精霊、お前は消滅したのではなかったか?>
<ええ。でもそれこそ、このスミタカのおかげでこうやって顕現できたのよ。今はエルフ達も元気になって、発展しているわ>
<ふうむ、人間がか……まあ、猫とエルフがこの場に居ることだし、疑う余地はないか>
「一応、ミネッタさんに当時の話を聞いている。ドワーフや犬もやっぱり?」
俺が尋ねると柴犬精霊は項垂れてから踵を返し、頭だけ俺の方に向けてからポツリと呟く。
<……皆殺しだ、多分な。世界の全部まで見れていないから何とも言えんが、奴らにとって亜人とその信仰対象は厄介な存在だったようだ>
「そこまでする必要があったんですかね……」
「さあな。こっちの人間が考えることはわからない」
<人間に言われるとは思わなかったが、まったくだな。さ、ついてこい。ドワーフ達に会っていくといい>
柴犬精霊は鼻を鳴らすと村の方へを歩いていき、俺達は顔を見合わせ後を追い、村の中へ入るとエルフやオーガとは違い石積みで作られた家屋が俺や黛の知るドワーフらしいなと思わせる造りだった。
しかしそれでもひび割れていたり、屋根が崩れているなどの様相が見られるのでやはりここも『そういうこと』らしい。
周囲を見渡しながらそんなことを考えていると、他よりも少し大きい建物の前で柴犬精霊が立ち止まり、声を出す。
<長老、客だ。エルフが来たぞ>
ぶっきらぼうにそう言い放つと、家の中からドタドタと慌ただしい音が聞こえたかと思った瞬間、玄関が勢いよく開いた。
「エルフじゃと!? やつらまだ生きて……おったぁぁぁぁ!!」
「相変わらず騒がしいな、グランガス」
「むお!? お前、いや、あなたはミネッタ殿! 生きておったか……」
「なんで残念そうなんですか!」
フローレが抗議すると、ミネッタさんにグランガスと呼ばれたドワーフは手を前に突き出して首を振る。
「あ、ああ、そうじゃないぞ!? 『生きていてくれて良かった』の方じゃ! 残念なわけあるかい……」
「ほっほっほ、気にしてない。お主が慌ただしいのは今に始まったことではないしな。しかし長老と言ってお主が出てきたが親父殿はどうした?」
「ああ、親父は12年前に亡くなったわい。そうだな、50年か100年か……覚えていないがそれくらいぶりかのう。大勢引き連れてどうしたのかのう?」
「それなんじゃが、スミタカ殿から話してもらった方が早かろう」
「いいのか?」
ミネッタさんに尻を叩かれて前に出ると、グランガスさんは目を見開いて後ずさった。
「ににににに人間!? ミネッタ殿、これはどういうことだ!? ま、まさかこの島を掌握するつもりか!? 我ら亜人すらも――」
<落ち着け長老、この者は――>
「あああああ!? 鉱石が取れなくなって武器が作れず、獲物の収穫が減って集落の危機だと言うのに、とどめを刺しに来たというのかぁぁぁぁぁ!?」
「おお……」
聞こうと思っていたことを全部言ってくれて手間が省けたが、激しく狼狽えるグランガスさんに不安と動揺を隠しきれない俺。こんなメンタルで長老などできるのだろうか。
「グランガスさん、俺は別世界から来た人間で……」
「うわああああああ!?」
「ひゃあ!?」
「みゅー!?」
「みゃー!?」
取り付く島もないとはこのことか。あまりの怯えように、黛と子ネコ達がびっくりしていた。どうするかなと思っていると――
<落ち着かんか馬鹿者!>
「あ」
「ぐふ……」
痺れをきらした柴犬精霊が前足でグランガスさんをしばき倒した。
さて、だいたい島になにか起こっているのは分かって来たけど、鉱石が取れないってどういうことだ? 枯渇したのか?
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