5 / 253
第一章:厳しい現実編
第四話 何の変哲もない町『カルモ』
しおりを挟む「こんちゃーす!」
「お、この辺りじゃ見かけない奴だな。だが、元気がいいのはいいことだ」
色々考えたが、やはり気さくに挨拶をするのがいいと判断した俺は、奇をてらわずに片手を上げながら門番らしき人へ声をかけると、人の好い笑顔で頷いていた。そのまま言葉を続けてくる門番さん。
「ここは『カルモ』の町……見ての通り田舎だが、この町は初めてか?」
「ええ、見聞を広げるため旅をしている途中なんですよ、丁度、こっちに町があるって看板を見て来ました」
「……そんな丸腰でか?」
俺が笑顔で応対していると、別の門番が鋭い指摘を俺に放ち、ビクっと笑顔のまま体が震える。い、いや、別に丸腰でも悪いことは無いよな。
「ま、まあ逃げ足だけは速いので……」
「あれだろ、法使いだろあんた? だったら羨ましいこった!」
「そ、そうなんですよ! えっへっへ……」
「それにしても珍しい恰好だな、どこか遠くから来たのか?」
ピシっと俺の顔がまたも凍りつく。んも!? 何なんだよこの人! 早く町へ入れてくれよ!
「そ、そんなところです……で、町に入っても?」
笑顔は変えず、だが冷や汗をかきながら、擦り手、揉み手で門番へと尋ねる俺。悪い事はしていないのに何故か焦ってしまう。
「ああ、問題ない。通っていいぞ!」
「ふう……ありがとうございます。でも、もっとこう、入るのは厳しいチェックがあるもんかと思ってました」
「? 他の地域じゃどうか分からんが、こんな田舎にゃ犯罪者を特定するような魔法なんか導入されてないから、せいぜい武器を持ったやつを警戒するくらいなもんだ。もちろん町中で暴れたりしたら治安部隊にしょっぴかれるから変な事はするなよ?」
「勿論ですよ、好き好んで厄介ごとに首を突っ込むほど俺の心臓は強くない!」
ドンと俺は胸を叩いてドヤ顔で言い放った。
「自慢げに言う事か……?」
「それじゃ通らせてもらいますよっと」
俺が二人の間を抜けようとした時、またしても声をあげる門番。
「む! その黒髪と黒目! 珍しいな……」
「ひぃ!?」
「もう止めてやれ!?」
「す、少し触らせてもらってもいいだろうか……?」
「いけ、兄ちゃん! ここは俺が止めておくから!
「わ、分かった! 頼む!」
「その服だけでも……!」
◆ ◇ ◆
「はあ……はあ……町に入るだけで何故こんな余計な体力を……しかしあの門番、本当にただの好奇心だったのか……? 怪しいヤツ認定されたのかと思った……むしろあの門番が怪しいのか……?」
ちょっとビビりすぎて涙目になってしまったが、誰も見ていないのでノーカンにしておこう。
というわけでグダグダしたが、無事に町へと入る事ができた。俺は一旦息を整え落ち着いて町並みを観察することにした。
「へえ、やっぱり異世界って中世っぽいんだな、家屋がよくあるタイプの形をしている。それに服もアニメ化されたラノベなんかで見かける服装だなあ」
おのぼりさんっぽいが、やはり珍しいものは目移りしてしまう。そこでふと我に返って俺は呟いた。
「わかっちゃいたけど、異世界、か」
外を歩いていた時は景色もさほど元の世界の山などと変わらなかったので気にならなかったが、やはり町に入ると痛感するな。まあ死んだとはいえ、家族親族と呼べる人達は居なかったし、恋人も『勿論』いなかったからそこは良かったと考えるべきかな、一応生きていられたわけだし……あ、でも、向こうの世界での俺の扱いってどうなるんだろうなー。
そんな事を考えていると、男性がすれ違い様に声をかけてくれた。
「お、兄ちゃん見ない顔だな!」
「ええ、旅の途中で寄らせてもらいました。いい町ですね」
「おう、ゆっくりして行ってくんな!」
軽く挨拶をして、男性は去って行く。金は無いけど、今後のためにどんな店があるか見てみるか。まずは近場の店へ入ってみる事にした。
「ここは道具屋か? あまり見慣れないものあるけど……」
「見ない顔だな、何か買っていくか?」
「ああ、今日は様子見だけです。すいません、また今度!」
またよろしく、と見送られ、俺は次の店へと足を運ぶ。今度は武器屋のようだった。ずらりと並んだ重々しい武器が所狭しと立てかけられていたり、壁に飾られていた。
「お、剣と斧! これこれ、やっぱこういうのはテンション上がるよな!」
「お目が高いな兄ちゃん! 見ない顔だけど、冒険者か? 安くしとくよ!」
「あ、はあ……きょ、今日は持ち合わせが無くて、また今度きますね!」
何となく違和感を感じつつ、さらに次の店を覗くと、今度は薬屋のようだった。三角フラスコみたいな瓶やガラスの瓶がたくさん並んでいる。
「ポーションってやつかこれ? 緑の薬ってヤバそうだよな……」
すると奥から婆さんが出てきて、俺に話しかけてきた。
「ふぉっふぉ。キレイな花にはトゲがあると言うてな。薬も鮮やかなものほど毒だったりするもんじゃ。そういや、ここらじゃ見ない顔じゃのー」
「……失礼します」
俺は薬屋を後にして空を見上げる。きっと気のせいだろう。
あ、そうだ! 仕事を探さないと! はは、お金が無いと店に入っても意味ないじゃないか、なあ? そう思い一歩踏み出したところで子供と目があった。
「……何かな?」
「兄ちゃん見たことない顔だな!」
「はは、今日この町に来たばかりだからね。それじゃ」
スチャッっと手をあげて爽やかに去った所で、すぐに屋台のおっさんに声をかけられた。
「そこの見たことない顔の兄ちゃん! 串焼き、串焼き買わねぇか! 熟成させたブロークンバッファローの肉だぜ!」
「ははは、また今度!」
おっさんにやんわりと断りを入れ、俺はスタスタとその場を離れる。目指すはさっきチラリと見かけた公園の奥。ポツンと忘れ去られたかのようなベンチに腰掛け、俺は一息ついた。
「……ふう」
そして一度目を瞑り、たっぷり溜めた所でカッと目を開く!
「怖い……!」
何だよもう! どいつもこいつも『見ない顔、見ない顔』って! そんなの俺が一番よく知ってるんだよ! いちいち口に出すなよ! そんなに今日初めて来た人間が珍しいか!? もしかして転生者ってバレてたりするのか! ああもう、疑いだしたらきりがないぃぃぃ! あいつも! あの子も! 俺を監視してるんじゃないだろうな……!
そう思うと怖くなり俺は頭を抱えてベンチの上でゴロゴロと悶絶する。や、やられる前にやらないと……。
と、いよいよ思考がおかしくなってきたあたりで俺は誰かに話しかけられている事に気付く。
「――い、大丈夫か?」
「聞こえてるのか……? 何かぶつぶつ言ってるが……」
「……ん?」
「お、気付いたな」
上半身をあげると、そこにはおっさんというには若く、かといって若者と呼ぶにはちょっと……という微妙な年頃の男二人が立っていた。腰には剣、もう一人は短剣だろうか? を、差していた。それに皮鎧をばっちり着こなしているので、冒険者というやつかもしれない。
「何だ? 俺に何か用でも?」
「ああ、ちょっとな……」
俺が眉を曲げて訝しんでいると、二人組は語り出す。
話はこうだ、さっきの俺の様子を見ていたらしく、今日初めてこの町に来たのだろうと推測した。で、右も左も分からないであろう旅人にこの町を案内してやろうと思って声をかけた、ということらしい。
「そりゃ助かるけど、タダって訳じゃないんだろ?」
「ま、まあ、そう言われちゃ身も蓋もねぇが……代わりといっちゃ何だが、ちっとばっかでいいんだ。酒代を都合してくれねぇか?」
すると短剣の男も俺の肩を掴んで懇願してくる。
「いい身なりしてるんだから、そこそこ持ってるんだろ? お前さんは町の事を知れる。俺達は今日の酒にありつける。いい関係だとは思わないか?」
「いや……俺は……」
すると剣を差した男が逆の肩に手をおき、ぐっと力を込めてきた。
「なあ、頼む!」
そこで俺はようやく気付いた!
「もしかして俺は今、集られているのか!」
「気づくのがおせぇ!? ああ、もう面倒くせぇそのカバンに貯めこんでるんだろ? 貸しな!」
「あ! こら! 勝手にさわるな!」
くそ、面倒なのに目をつけられたな……! 男がリュックを強引に引っ張ってきたので俺は振り回されながらも食らいつく。力強いな!? 回復魔法しかない今の状況で、男達が武器を抜いたらかなりヤバい。
こうなったらパラメータ変更で力をあげるか? などと思いつつ抵抗していると、リュックの口が開いてしまいリンゴが転げ落ちた。
その時である。
「見つけたわよ! このリンゴドロボー!」
「え? ドロボー?」
声のする方を向くと、茶色の髪をした女の子が、頬を膨らませてそこに立っていた。
27
あなたにおすすめの小説
リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~
灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」
魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。
彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。
遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。
歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか?
己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。
そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。
そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。
例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。
過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る!
異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕!
――なろう・カクヨムでも連載中――
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜
橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます
網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。
異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。
宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。
セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。
チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~
黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」
女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。
この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。
『勇者道化師ベルキッド、追放される』
『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる