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第一章:厳しい現実編
第七話 武器の選択とネギッタ村の村長さん
しおりを挟む「養成所は朝からになりますので、明日の朝九時くらいにでも来てください」
ミルコットさんに必要事項を聞いて、養成所の予約まで取り付けることができた。カードを首から下げて俺はアンリエッタに向き直る。
「ああ、分かったよ。アンリエッタ、依頼は今日からでいいのか?」
「そうね。一度私の村に来てもらって、村長と話してもらってもいいかしら」
「了解。って、よく考えたら武器も無いのに勝てるのか……?」
すると、ミルコットさんが待ってましたと言わんばかりの笑顔で俺に話しかけてきた。
「ふふ、実は冒険者登録のお祝いとして、武器を一つプレゼントできます!」
おお! それすごい! 冒険者になっても武器が無ければ戦えないしな。まあ、採集とかで稼ぐ人もいるらしいけどな。でも結局町の外に出るという危険地帯に行くことは変わりが無いので俺みたいにお金が無い人には願っても無い。
「最初から持っていたり、必要ないって人には渡さないんですけどね。冒険者になる人は、結構困窮している人も多いので、丸腰からの依頼受領からの即死という流れが一時期ありまして、すぐ死なれるよりは都合をつけようと決まったんですよ。ということでが何がいいですか?」
ミルコットさんが受付の後ろにあるずらりと並んだ数々の武器を見せながら俺に尋ねてくる。地味な武器だけど、無料配布ならこんなものだと思う。
異世界ファンタジーと言えばやはり剣……暗殺者モノだと短剣……ダガーなんかもお洒落だ。しかし、ここは現実世界で、俺はしょぼい。となると最初の武器はこれしかない。
「その端にある槍がいいな」
「あら、意外ね。てっきり剣だと思ってたわ」
アンリエッタが初心者ならオーソドックスに剣を選ぶものと思っていたみたいだが、俺の考えは違う。ステータスをいじれるとはいえ、レベルは1。剣はそれなりに長さはあるけど、やはり接近戦主体なのでダメージは否めないのだ。その点、槍ならリーチがあるので落ち着いて構える事が出来る。
弓はひけるか分からないし、ダガーはリーチの面で不安がある。となると、今は槍がベターだろう。
それに対人なら懐に飛び込まれるという心配もあるが、魔物ならそこまでの頭は回らないとふんだのである!
「それではこちらをどうぞ」
「ぐ、意外と重いな……」
「レベルを上げれば力も上がりますし、頑張ってくださいね」
「サンキュー、それじゃ村へ案内してくれるか?」
「分かったわ、ミルコットさんありがとうね!」
それでは明日お待ちしていますと言いながら頭を下げ、俺達はユニオンを後にした。外にでるゲートへ向かう途中、色んな人とすれ違うがある事に気付いた。
「そういや、見ない顔って言われなくなったな」
「ああ、あれは防犯で、初めて見る顔には最低一度はそうやって話しかけるようにしているの。町は狭いから、住んでいる人は全員顔が分かるからね。そうやって声をかけていれば『見られている』ってなるから悪さしにくいでしょ? で、カケルは今、私と一緒にいるから『顔見知りの人』って認識に変わったのよ」
「あーそういうことか。確かに見られている感は凄かったな。吐いたし」
「そこまででも無いと思うけど……」
などと他愛ない話をしながら、俺が最初に入ってきたゲートに近づき、そのまま抜ける。すると門番さん二人が声をかけてきた。
「お、アンリエッタ。帰るのか? ってさっきの兄ちゃんじゃねぇか。アンリエッタの知り合いだったのか?」
「ウチのリンゴを盗んだドロボーよ。お金が無いって言うからフォレストボアの退治を依頼したの」
すると、さっき興奮状態だった人が俺を見て口を開く。な、何だ?
「槍か。なら、フォレストボアは御しやすいかもしれないな。レベルがいくつか分からんが、低いなら気絶でもさせて心臓を貫いてやれ」
普通だー!? そしてアドバイスらしいものを教えてくれた。二回目だから珍しくないと……いや、俺の髪とかをリュックをチラチラみてる……鼻息も荒いな。ここはすぐに離れた方が、と思っているとアンリエッタがスタスタと歩きながら門番たちに声をかけていた。
「急ぐからまたね!」
「おう、近いとはいえ気を付けてな」
ふう、助かったぜ……とりあえず門番二人と別れ、再び二人で歩く。来るときは『速』にパラメータを変更して走ったからそれほど気にならなかったけど、村まではそこそこ距離があった。街道を途中で左に曲がり(町に向かっている時には気付かなかった道)、またしばらく歩くと集落へと到着した。
「お疲れ様、ここがネギッタ村よ。このまま村長の所へ行くわね」
「頼む」
空気が澄んでいてとてものどかだ。畑や牛やニワトリといった動物もいるので、ある程度自給自足の生活をしているのかもしれない。そしてすぐに村長とやらの家は見つかった。それもそのはず、一際大きい建物だったからだ。
「こんにちは村長さん! アンリエッタです、フォレストボア退治の依頼を受けてくれる人が見つかりましたよ!」
やがてガチャリとドアが開き、人の好さそうなおじさんが出てきて、アンリエッタを見て顔を綻ばせながら口を開く。
「おお、おお。アンリ、よくやってくれた。あなたが……?」
「はい、カケルと言います。アンリエッタのリンゴを勝手に拝借してしまいまして。その代わりに依頼を受けさせてもらいました」
「ほうほう、無理を言ったのでは……? あいにく村の貯蓄からはあれだけしか出せませんので……」
「はは、アンリエッタにはお世話になってますから、気にしませんよ」
「も、もういいでしょ。行くわよ!」
何故か赤い顔をして俺の手を引っぱるアンリエッタ。その様子をニコニコしながら見ていた村長さんが俺に言ってくる。
「ふぉっふぉ、フォレストボアは夜に出没しますので、宜しくお願いします。それと……無理はなさらないでくださいね、くれぐれも……無理は……」
ん? 何か雰囲気が……?
「え? あ、はあ。命は惜しいですから、危なかったら逃げますよ。ありがとうございます」
「ふぉふぉふぉ! それもそうですな! あなたは良く分かっておられる! ワシは若い頃、無茶ばかりをしておってな! よく婆さんに怒られていたわい!」
さっきのは気のせいだったか? 人の好い笑顔で俺の肩をポンポンと叩かきながら俺と話していると、アンリエッタが行こうと言うので、俺達は村長さんに見送られながらその場を離れた。なんにせよこれで依頼を受けたという認識が相互にできたと思う。
「さて、それじゃ夜まで待機だな」
そこでようやく俺の手を放してくれ、俺に向き直るアンリエッタ。
「フォレストボアが出没するのは夜だから、まだ時間があるわよ?」
「だな。仮眠を取りたい所だけど、ちょっとその前にやる事があるな、この辺で俺でも倒せる魔物が出やすい場所って無いか?」
「え? ええっと……村を出てすぐ林があったと思うけど、その辺りにスライムがよく出るわ。どうするの?」
「レベル1は不安だからな、レベル上げをしておこうかと」
「なるほどね。なら私は家に帰っているから、お腹がすいたら家へ来て。お金無いんだし、ご飯くらいは出してあげるわよ! あの果樹園の所にあるから!」
「あ、おい!」
俺の言葉を聞かず、アンリエッタは家へと駆け出して行った。
うーん、ありがたいが人が良すぎるな……まあミルコットさんと村長さんに顔を見せているから安心しているのだろけど……将来が心配だ。
ま、アンリエッタの将来はおいといて、まずは槍の感触とレベル上げと行ってみますか。さっきのピロリ音も気になるし、寿命についても調べておきたい。
村と町という安全地帯を得た俺は、ようやく自身の能力をじっくり見る機会を得る事ができたのだった。
いざ! 林の中へ!
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