俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

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第一章:厳しい現実編

第八.五話 今日のウェスティリア②

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 「お嬢ちゃん達、また来てくれよな!」

 「ありがとう、あなた達に光の加護がありますように」

 
 「次はないよ!?」

 口の周りをタレでベタベタにしたウェスティリアが祈るポーズをしていたのをルルカが首根っこを引っ張って引きずっていく。それをおろおろした感じでリファが着いてくる。

 「お、おいルルカ、お嬢様にそれは……」
 
 「それは、何? 全屋台を制覇してスタンプラリーを埋めたあげく、大食い大会に優勝したお嬢様に賞賛を与えろとでも!? もう日が暮れるんだけど!?」

 あの後、ルルカの言うとおり屋台へ突撃したウェスティリアは片っ端から食べ始めた。昼を回ったかどうか、という時間だったため腹ペコ度はMAX。餓えた野獣が放たれただけだった。
 そして、スタンプラリー制覇により特別なステーキを目当てに食いつく……最後に、大食い大会に出場すると言う暴挙にまで出ていた。

 「ごめんなさい……つい……」

 「つい、で、旅を止めるのは止めてくださいね? もう今日は帰って明日の朝もう一回集まった方がいいと思うんだけど……」

 ルルカはそう言いつつ、明日になったら雲隠れをするつもりだった。この調子で旅を続けたら胃が壊れてしまうかもしれない(ストレスと食べすぎで)と思ったからだ。

 「そ、そうだな。ではお嬢様、今日の所は……」

 リファもそれに賛同し、屋敷へ帰ろうと提案。しかし当のウェスティリアは首を振った。

 「私のせいで遅くなってしまって申し訳なく思っています。でも少しでも進みたいの、この時間なら隣の町へ着くころにいい時間でしょう。だから……行きましょう!」

 何故かやる気満々のウェスティリアの言葉にルルカは驚いた。

 「(くっ……まさかボクが逃げる事を予想して? 町から数えるほどしか出ていないのに隣町までの距離まで……この状況で帰る事を進めたら怪しいじゃないか……)」

 「では、安全のため馬車を使いましょう。乗合馬車はまだあるハズです」

 「そうですね。では行きますよルルカ」

 「わ、分かりましたよ……あー! ローブの裾で口を拭かないでください!? ピュリファイ! ピュリファイ!」



 ◆ ◇ ◆


 間もなく。

 乗合馬車を使って隣町へとやってきた三人。すでに陽もとっぷりと暮れ、後は寝るだけとなった。リファがいそいそと宿を探し、三人がシャワーを浴びて部屋に戻って来た所だった。サービスシーンは無かった。

 「ふう……落ち着きました」

 ベッドに寝そべるウェスティリアを見てルルカはため息をつきながらその様子を見ていた。反対側のベッドにはリファが長い髪をタオルで拭いている。

 「お腹がぽっこり出てますよお嬢様……それで、新しい魔王探しの旅に出ましたが、感知はどれくらいできるのでしょうか? ユニオンカードがありますので、お金は心配ありませんが……」

 リファの言葉に、ウェスティリアがむくりと起き上がって二人の顔を見た後静かに呟く。

 「西の果ての大陸から魔王の力を感じます。正直なところ、微々たるもので感知できなくなる事もあるのですが、近づけば何とかなると思います」

 「(また曖昧な……)」

 「後、魔王独自のスキルを使うと目の色が変わりますから、怪しい人の目を見て歩くのもいいかもしれませんね」

 こんな風に、と、ウェスティリアが何かを呟くとウェスティリアの青い瞳が金色へと変化した。それを見てルルカは言う。

 「なるほど。でもそれって一人ずつ見ていくわけにも行かないですし、かなり困難な旅ですよこれ? ボクもすごく暇って訳でも無いし……期間を設けませんか?」

 「期間ですか、そうですね……お父様もそわそわしていましたし、一度帰る事を検討した方がいいかも……では三カ月経って見つからなければ戻りましょう」

 「ですね、闇雲に探しても仕方ありませんからね。でもどうして? 他の魔王様じゃダメなんですか? 極北に居る『水氷の魔王様』は? 同じ女性だから協力してくれるじゃないですか」

 「……あの人はちょっと、性格がきつい……」

 「じゃあ、闇狼の魔王様は? 紳士的だって聞いてますよ?」

 「顔が狼で怖くて……」

 「我儘!? ちゃんと魔王を就任したんだから向き合ってくださいよ! ……あ! だから新しい魔王を探してるんだ! ……まあ、いきなり魔王の会合は怖いでしょうから分からないでもないですけど……とりあえず三カ月ですよ? それ以上はリファのお願いでも聞けませんからね」

 「うん……ええ、分かりました。ありがとうルルカ」

 「リファも分かったわね? ……リファ?」

 「グー……」

 「寝てる……! 君がお目付け役でしょう! 先に寝てどうするの!」

 「ふあ!? 巨大なクレープが!?」

 「寝ぼけるのも早い!?」


 「くー……」

 「な!? お嬢様も!? ……もうー! ならボクも寝るよ!」 



 ルルカはプリプリとしながら布団を被り、三人は一日を終えた。奇しくもカケルが『魔王の慈悲』を覚えた事で、新しい魔王カケルを見つけるのは容易になるのだが……それはまだ、先の話……。





 「帰りたい……」
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