108 / 253
第四章:風の国 エリアランド王国編
第百一話 チェルとのお別れ
しおりを挟む「チューズディも速かったけど、こいつも中々だな。どうしたルルカじっと座って」
「……ボクは大人しくしているよ……」
「チューズディはバウムさんが乗って行きましたしね。大丈夫なんでしょうか?」
【ガオオオン!(旦那! 女の子をこんなに乗せてくれるたあ頑張った甲斐がありますよ! チューズのヤツは真面目だから大丈夫でさあ!】
「……大丈夫みたいだぞ」
「なんで僕がこんなことを……」
と、ファライディに背には俺達五人が乗って移動をしていた。そして神殿と封印に心当たりと興味があるということでバウムさんが着いて来てくれることになり、ハインツ国王とクリューゲル、それにバウムさんがまず赤いドラゴンへ騎乗。その後、リファとルルカを回収し、慣れる意味もあってクリューゲルとバウムさんがチューズディに乗ったので俺達はまとめてファライディの背というわけだ。
「真っ直ぐ行かないのか?」
「ああ、険しい山みたいだし、準備をしておかないとな。食料とか」
「食料……」
ピクっとティリアの耳が動いた気がする。たこ焼きやホットケーキの一件からこいつが食べることが大好きだと言うのは分かっているので、メニューも考えておかないとな。
「それとチェルを母親の元へ帰さないとだしな。そうだ、クロウ。お前の見立てでは神殿に着いていると思うか?」
「……それをわざわざ言……ぐりぐりの手はやめろ!? 多分まだ着いていない。今朝出たばかりだから、いいところ山の麓だろうね」
なら先に俺達が神殿を見つけることも可能か。そう思っていると、ルルカがスカートを抑えながらクロウに訪ねる。
「どうして君だけエルフの襲撃をしたの? それにエルフのフィアムが集落を掌握しようとしていたならこっちにくるのが筋だと思うけど?」
「こっちはあくまでも囮だったからね。エリアランドに来たメンバーの中じゃ僕が一番強いから、足止めをするには丁度いいという判断さ。自慢ではあるけど、これでもリーダーだからね?」
「あっさり捕まったくせにな」
「うるさいな!」
ふて腐れてクロウが座ると、ちょうど眼下に王都が見えてきた。
【グルウ(それじゃ、厩舎へ降りますぜ)】
「頼む。また一仕事あるから休んでおいてくれな」
【ガウ!(合点でさ!)】
「本当に会話してるんですねえ」
ティリアがクスクスと笑いながら背を飛んで降りていた。他の三人は俺が先に降りてから手を引いてやり、地面へと着地を果たした。
「カケル、今から国王が正気に戻ったことを国民に伝える。ユニオンにも報告をする必要があるから少し時間がかかりそうだ」
「分かった。ならチェルを母親のところへ返して買い物を済ませてくる。どれくらいで戻ればいい?」
「今が14時を過ぎたところだから、17時には戻ってきてくれ。あ、それとバウム殿は休戦となった証として国王に立ち会ってもらえることになっている。最後だが、買い物でかかった費用は国王が自分のお金で賄ってくれるそうだから分けて購入をしておいてくれ!
クリューゲルは早口で捲し立てると、早足で厩舎を後にする。あいつも大隊長に戻るとか何とかで結構忙しいらしい。
俺達も厩舎を出て城下町を目指していると、身体を縛られた騎士達がぞろぞろと城へ連れて行かれていくのを目撃する。その中にパンツ一丁の男がこちらに気付き、激昂した。
「……貴様! 俺を唆した貴様が何故そこにいる! 俺がこんな目にあったのは貴様のせいだ! 貴様も罰をうけろ!」
「……ふん……」
クロウがそれを見てつまらなさそうに小さく呟くと、目を剥きだして口から泡を出しながら身を乗り出す。
「ぐ、ぐぐ! 許せん! ええい、離せ! 俺は竜の騎士大隊長イグニスタであるぞ!」
こいつがクリューゲルの後釜だったやつか……クロウ達が直接的な原因ではあるが、俺はイグニスタとやらの前に出て一言だけ口を開いた。
「確かに唆したクロウも悪いが、それに乗ったお前はもっと最悪だ。それに乗らなければエルフ達と戦いは無かったし、お前が落ちぶれることも無かったはずだ。自業自得なんだよ、お前は」
「う、ぐぐ……! な、生意気なガキがぁぁぁ!」
「大人しくしろ! 連れて行け! ……申し訳ありません、お見苦しい所を。話は聞いています、あなた方の協力のおかげで異種族との争いは免れたと。私の妻は半獣人でしてね……本当にありがとうございました」
ぺこりとおじぎをして騎士が城へと入っていく。するとクロウが俺に話しかけてきた。
「僕のせいにしておけばよかったじゃないか。唆したのは間違いなく僕達だ」
「それは間違いないんだが、話を持って来られた時点で拒否すれば良かったし、お前達をその場で捕まえておけばおおごとにはならなかったんだ。だから、あいつの言い分だとお前だけが責められるいわれもねえさ」
「……」
俺がそれだけいうと、口をつぐんで後から着いてくるだけになった。ほどなくしてクリューゲルの屋敷へと到着し、チェルを呼ぶ。
「おーいチェル! 戻ったぞ!」
「……ご主人様! おかえりなさい! ど、どうでしたか! 空に竜の騎士がいっぱいいて怖かったです! お部屋で丸まっていました……」
「はは、この屋敷は広すぎるしな。とりあえず、一つ片付いた。母親の所へ帰れるぞ!」
「え……ほ、本当ですか!? ……って、この黒いローブの人は悪い人では!?」
「キーキーうるさいな……これだから猫は……」
「うるさい!? チェルがこんなことになったのもあなたたちのせいなんでしょ! ご主人様にたっぷりお仕置きしてもらうといいんです! ね、ご主人様?」
「まあまあ……この子にもまだ聞きたいことがありますから。まずはお家へ帰りましょう?」
「は、はい……奥様がそうおっしゃられるなら……」
あ、そういえばまだ解除してなかったな……まあ、チェルが着いてくるとか言いだしかねないからとりあえずは黙っておこう。
「あはは! 窘められてる!」
「……ふぎゃああ!」
「ぎゃああああ!?」
そろそろ行こうかと俺が声をかけようと思った瞬間、チェルの爪がクロウの顔下半分を斬り裂いていた。
◆ ◇ ◆
ガチャ! バタン!
「お母さん!」
「……え!? チェル!? お前チェルかい!? い、今までどこに行っていたんだい……あたしゃ心配で……ユニオンに捜索願いを出したら却下されて途方に暮れていたよ……」
チェルと同じオレンジの髪をした女性がチェルを抱きしめて泣いた。
「もう異種族狩りは行われないと思います。だから安心してください」
俺がそう言うと、母親が俺達を見て慌てて涙を拭き、訪ねてくる。
「……あなた達は……?」
「この人はカケルさん。私が奴隷にされて、デブリンの囮にされそうになっていたところを助けてくれたの。私のご主人様よ!」
「ま、まあ……奴隷だなんて!? 無事なのかい? いやらしいこととかされていないかい?」
何故か俺の方をチラチラ見ながら言う。うん、まあ、奴隷のご主人様だとそういうことももあるかもしれないからな……。
「もうお母さん! ご主人様に失礼よ! ……生きてまたお母さんに会えると思っていなかった……ご主人様、本当にありがとう」
「はは、冗談よ。カケルさん、でしたかしら。本当にありがとうございます……」
深々とお辞儀をしてお礼を言ってくる母親。俺はチェルに言う。
「気にするな。ゆっくり休んでお母さんと過ごすんだぞ?」
「は、はい……今度のことが終わったら、また旅へ……?」
「もちろんだ。また、この国を出る前には顔を出すよ。時間が無いから、またな! 行こう、みんな」
「あ……! ま、また必ず来てください! まだお礼をしていませんから!」
色々言いたいことはありそうだけど、こういうのはあっさり別れた方がダメージを負わずに済む。顔を見せるとは言ったものの、ここに来ることはもう無いだろう。片手をあげて俺はチェルの家を後にした。
「良かったな、母親の元に帰ることができて。カケルはかっこつけすぎだけどな」
リファがニコニコしながらそんなことを言うので、俺は適当に答える。
「たまにはいいだろ? 俺にもかっこつけさせてくれても。さ、次は買い物だ、国王のポケットマネーで買い漁ろうぜ! うへへへ……」
「はあ、ちょっと褒めたらこれだ」
「まあ、カケルさんはカケルさんだからねー。あ、ボク、魔法薬につかう草が欲しいかも!」
「わ、私はお食事が美味しければなんでも……」
「よし、一人ずつ好きなものを買っていこう。クロウ、お前も何か決めとけよー」
「はあ!? どうして僕が!? 僕は敵だぞ!」
「山は険しいみたいだし、防寒具とかあったほうがいいんじゃないか? えーっと……雑貨屋は……」
「(こ、こいつ、一体どういうやつなんだ……? もう少し様子を見てみるか……)」
――そして17時。
時間ピッタリに俺達は王都を飛びたち、ベリーの村へと向かった。
22
あなたにおすすめの小説
リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~
灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」
魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。
彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。
遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。
歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか?
己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。
そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。
そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。
例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。
過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る!
異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕!
――なろう・カクヨムでも連載中――
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜
橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます
網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。
異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。
宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。
セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。
チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~
黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」
女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。
この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。
『勇者道化師ベルキッド、追放される』
『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる