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第七章:常闇と魔王の真実編
第百七十八話 カケルの疑念
しおりを挟む「ほう、見事なドラゴンじゃ。小僧が飼っておるのか?」
「いや、そう言う訳じゃないんだが……おいファライディ、立派だってよ」
【ガオル(そいつはどうも! って、男が増えましたね……)】
外に出てファライディと合流すると、爺さんとベアグラートを見て割とハッキリ不満を表した。ブレないやつである。
「ドラゴンさん、いっぱい乗せられるかな?」
「いけるか? ファライディ?」
アニスがコテンと首を傾げながら、そう言うと、ファライディは咆哮をあげた。
【ガオルルル! (そりゃもうお嬢さんのためならどんとこいでさぁ! ささ、乗った乗った!)】
本当にブレないやつである……
総計10人+一匹がファライディの背に乗り、大きく羽ばたきだす。若干ゆっくりだが……
「やっぱきついんじゃないか?」
【ガ、ガル……! (だ、大丈夫でさあ! ちょっとバランスが悪いからおちねぇでくだせぇよ!)】
「最悪、私は飛びますから言ってくださいね」
ティリアがポンポンと背中を撫でると、ファライディは力強く羽ばたき、浮きはじめる。眼下ではベアグラートと一緒に神殿を守っていた狼達が遠吠えをし、見送ってくれていた。
◆ ◇ ◆
<ゼンゼの城>
「戻ったぞ、皆の者!!」
ファライディが最初にいた屋上へ再び着陸し、ベアグラートを先頭に城の広間へと足を運ぶ。ベアグラートが大声をあげると、近くに居た者がわっと集まってくる。あるものは人を呼びにと、わちゃくちゃな状況になり、獣人達が泣いたり笑ったり、抱き合ったりしている中、ドタドタとドルバックさんが広間へと駆けつけてきた。
「王! ご無事でしたか! 魔王様方と一緒と言うことは……」
「うむ。彼等に助けられた」
「やはりそうでしたか! 城を奪還しただけでなく、王まで救出していただけるとは……わおん……」
おいおいと泣きはじめるドルバッグさん。泣き方は犬なんだな……
「ベアグラートを見つけたのはたまたまだし、そんなに気にしなくていいよ。封印も何とかなったし、これでこの国は大丈夫だろう」
俺が言うと、芙蓉がぴょんと前に出て言葉を続ける。
「そうね。ヘルーガ教ももう用は無いだろうし、来ないとは思うわ。念のため、普段見かけない人には注意してね?」
「初代がそう言うならそうしよう。今回は俺の油断が招いたこと、皆苦しい思いをさせてすまなかった」
ベアグラートが頭を下げる。きちんと反省でき、部下たちに頭を下げることができるのはできる上司だと思った。城の誰もが恨みごとなど言わず「助かって良かったとしましょう」と、笑っていた。
「獣人は気の良い者が多いのう。人間はちと欲深くていかんわい」
師匠がそう呟くと、リファが思い出したかのように口を開いた。
「そうだ、あの捕えた者達はどうするんだ? 基本的に王の一存で決めていいことになっているが」
「少しあいつらには聞きたいことがある。特にギルドラにな。それと、今度こそティリアに『真実の水晶』を使ってもらおうと思う」
「え? そういえば使う使うって言ってて、全然暇がありませんでしたね! もちろん大丈夫ですよ!」
「……」
ティリアはどんと(無い)胸を叩いて、ドヤ顔だった。何故かいつも使おうとすると何かに巻き込まれて使えていなかったからだ。芙蓉は特に何も言わず、俺の顔をじっと見ていた。……何だ?
<あれじゃないですか、フェロモン! きっと芙蓉さんもカケルさんに惚れたのでは?>
いや、それは無いと思う……向こうの世界でもあまり顔を合わせていないし、どちらかといえばあの教祖に対する同盟者みたいなものだと思うんだよ。
<ハーレムの夢が……>
何故お前がそんなことを……
ナルレアのどうでもいい呟きはさておき、俺はドルバッグさんに、封印の洞窟にヘルーガ教徒が数人目を回していることを伝え、引っ張ってきて欲しいことを告げる。ロープで縛り、狼達が見張っているのでそうそう逃げられないと思うが、迷惑をかけてくれた相応の礼はせねばなるまい?
そして作戦会議室なる広めの部屋を借り、俺とクロウ、ベアグラートと爺さんで牢へ赴き、捕えたイグニスタ達やヘルーガ教の面々をおしこめ床に座らせる。片腕を失くしたイグニスタが若干痛々しいが、これも自業自得だろう。まあ、ちょっとだけ救済してやろうと思うが……
「さて、諸君。気分はどうだ? 少しは反省したか?」
俺が前へ出てそう告げると、早速イグニスタが悪態をついた。
「ケッ……てめえの顔を見て最悪になったぜ」
「チャーさん」
「承知」
バリバリバリ!
「ぎゃぁぁ!? く、クソ猫が……! あ、こら!? 止めやがれ!?」
「チャーさん、止め」
「フシャァァァ! ……了解した」
「ひぃ!?」
顔が軽くスプラッタ化したイグニスタを見て、騎士達が引いた。そしてギルドラが俺に尋ねてくる。
「……そこの爺さんはまさか、破壊神の力ではないか……?」
「お、それに気付くのか? そう、お前達が見つけてくれた封印は間違いなく本物だった。お前達の悲願だった封印解除を代わりにやっておいたから」
「お、おう……あれ?」
動揺するギルドラに俺が続けて話をする。
「ちょっと確かめたいことがあってな。ギルドラ、あんた見たところ幹部……ガリウスと同じか近いクラスだと思うがあっているか?」
「む……ガリウス大司教を知っているのか。そうだな、私は一つ下だがさほど階級に差はない。それがどうした?」
「幹部クラスなら分かるかと思ってな。エアモルベーゼが封印されたのは300年前だろ? その間封印を解こうとしたヤツは居なかったのか? 解こうとしなかったという前提でもう一つ。どうして今になって封印を解こうとしているんだ? これは芙蓉にも聞いておきたいとこなんだが……」
俺がギルドラに質問しつつ、芙蓉にも尋ねる。するとクロウがポンと手を打って気付いた。
「あ、そう言われれば確かに。芙蓉さんが封印して、さらに300年生きているなら、そういう騒動がどこかであってもおかしくないのか。僕もデヴァイン教に居た時は封印の話までは聞いていないね」
それっぽい書物はあった。ちぐはぐだけど関する話もあった。ピースはバラバラだが、空白の期間はいったいなんなのか? それを知る必要があると思ったのだ。するとギルドラがポツリと口を開いた。
「……封印を解くつもりがあるなら話してやろう……我等ヘルーガ教は基本的に差別や追放、捨てられた者達が集まってできた宗教で、300年前エアモルベーゼ様が封印された時の戦いにも協力したとおとぎ話として代々語り継がれている。しかし、封印されたエアモルベーゼ様を助ける方法は伝わっていなかったのだ。そんな時――」
「エアモルベーゼ様から神託があったの」
「アニス……!?」
いいところをアニスが奪った。
神託……そういえばそんなことを誰かが言ってたような……? 俺がそんなことを考えていると、芙蓉がふうと息を吐いて語り出した。
「そう。ヘルーガ教は封印の解除までは知らない。というか、上層部は私達がほとんど倒したから知る人は居ないの。それに規模も相当小さくなっていたし、一応私が目を光らせていたからその辺りは大丈夫だったのよ。ほら、私って変装できるから」
なるほど、300年生きていたのは伊達じゃないってことか。しかし、その後に『ただ』と続いた。
「私達が『魔王』と呼ばれるようになったのは私も分からない。とりあえず今は神託について教えてくれる? アニスちゃん」
「うん」
アニスが頷き、ギルドラが「あれ? 私は?」と困惑していた。
そんなことよりエアモルベーゼの神託とは……?
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◇
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