194 / 253
第七章:常闇と魔王の真実編
第百八十六話 次の場所へ!
しおりを挟むドゴォォォォン!
「やった……! やったぞ! 僕はついに強くなった! あの大岩を一撃で破壊出来た!」
「クロウ君、やったね」
「ああ! アニス見てくれ、この筋肉! 腕も太くなったしこれでアニスを守ることができるよ!」
「うん、クロウ君素敵……ってなるわけない。ムキムキでキモイ」
「え!?」
「やっぱりスマートで強いカケルお兄ちゃんがいい」
タタタ……
「あ! アニス! 待ってくれよ!? 僕はアニスのために筋肉を……! アニス! アニース!!」
――――――
――――
――
「うわああああああ!? アニス!!」
「呼んだ?」
「うわあああ!? 近いぃぃぃ!?」
ベチっ!
「あいた!」
「クロウ君、声が大きい」
「ご、ごめんよ……あれ? アニスはカケルのところへ行ったんじゃ……? 僕はどうなって……」
「? 私はずっと一緒にいたよ? クロウ君は爺ちゃんの技を教えてもらっている時、転んで気絶したの」
そう言われてクロウは、アニスにひざまくらをしてもらっていることに気づく。
「そうだ、走り込みでフラフラなところに蹴り技の練習させられていたんだっけ……」
「まだ動いちゃダメ」
起き上がろうとしたクロウを、アニスが頭を押さえて膝へ戻す。そこにフェアレイターが桶を持ってやってくる。
「む、起きたか。すまんな、いきなりで無理をさせたわい」
よく冷えた水で濡らした布を額に乗せられ、ひやっとしつつ、クロウはフェアレイターへ話しかけた。
「いや、いいけどさ。でもこんな体たらくじゃ一週間で強くなるのは難しいかなあ……」
「一週間で強くなるのは不可能じゃ。基礎の段階を伸ばすのが目的だから、そう悲観的になることもあるまい。あの狼獣人に力を返した後からが本番だと思え」
「……分かったよ。でもどうして破壊神の力の一部が敵を鍛えるようなことをするんだ?」
ひざまくらを惜しみながらも体を起こして尋ねるクロウ。
「それは……」
「それは?」
アニスがコテンと首を傾げておうむ返しすると、フェアレイターが続ける。
「内緒じゃ」
ガクンとクロウがアニスの膝から落ちてずっこけた。
「もったいぶらなくてもいいじゃないか」
「その内わかるはずじゃ。良くも悪くもな。ほれ、修行再開じゃ。狼獣人が来たぞ」
フェアレイターが視線を横に向けると、視線の先にベアグラートがいた。神殿で会った時と違い、完全武装状態で。
「待たせた。俺は何をすればいい?」
「わしと模擬戦じゃ。それでメニューを決める。クロウは少しわしらの戦いを見ておれ」
「僕は格闘戦を覚えるのかい?」
「それと魔法じゃな。闇属性はわしが少し教えてやる。それとあの投擲武器は有用じゃが、牽制程度にしておこう。それでは始めるぞ」
「僕はこれでもデヴァイン教の神官なんだけど……」
クロウがげんなりして言うと、フェアレイターの拳骨がクロウの頭に落ちた。
「昔おった修道僧などは殺生をせず相手を制圧するために拳を鍛えていたことがある。それにいざというとき頼れるのは己の体なのじゃぞ。鍛えておいて損は無い!」
「痛ー!? わ、わかったよ……」
「よしよし」
「や、やめてくれよ……」
フェアレイターが二人の様子を見て微笑むと、ベアグラートへ向き直り構える。すると、ベアグラートも構え、一言叫んだ。
「よろしく頼む!」
◆ ◇ ◆
――と色々あったが、あれよあれよと言う間に一週間が過ぎた。
あのいけないホテル騒動後、俺達は食事をして適当に散歩をして城へ戻った。晩飯は厨房を借りてブリ大根に刺身を作りティリアがとんでもない食いっぷりを発揮した。
クロウも修行で疲れていたのか、いつもよりがっついて料理を食べていた。
「ほわあ……白身の魚が汁を吸って見事な味に……大根も味が濃くて美味しい……」
「ちょっとティリアさん、食べすぎ! 僕の分が無くなるだろ!」
「俺のやるから喧嘩するなよ……」
二日目に師匠達の洋服を買いに町を奔走し、三日目はアニスの修行開始し、四日目に俺もクロウ達に混ざる。敵ながら爺さんの修行は本格的で、1ランク上の経験が積めた気がした。
「槍を使うなら接近を許すでないわ! 囲まれないよう動かんか!」
こんな感じだ。
もし人間一人分を生贄にしたらどれくらい強いのか聞いてみると、島国なら数時間で制圧できるとの答えだった。
で、最終日は全員休みにし、町で美味しいものを食べ、クロウとアニスの装備をプレゼント! アニスは爺さんにプレゼント!
「わし、生きてて良かったわい……」
爺さんか。あ、爺さんだったな。孫に弱いただの爺さんにしか見えないが強いんだよなあ……
んで、最後は鍛冶屋へ寄って剣を回収した。だけど驚愕なことがあった。
「旦那、こいつはただ錆びている訳じゃなさそうだ。どんなに磨いても錆が落ちない。恐らく何か魔法がかかっているぜ? これだけ錆びているなら呪いかもしれないがね。解放するには、知識が必要だと思う。貰ったヤツにでも聞いてくれ」
親方いわくそんな感じらしい。フェルゼン師匠が何を思ってくれたのか。そもそも要らないからくれたのかは分からない。すくなくとも曰くつきであることが判明したというわけだ。
……正直、あの脳筋が何か知っているとは思えない……仕方がないので再び腰に下げておくことにしたのだった。
そして――
「ではクロウ、いいのだな?」
「うん」
庭でクロウとベアグラートが対峙し、いよいよ魔王の力を変換する時がきた。二人が握手をすると、芙蓉が継承方法を教えてくれた。
「クロウ君の中にある魔王の力を意識して。それをベアグラートさんへ手を通して流し込むようにイメージするの」
「こう、かな? う……!?」
ドックン! と、心臓の鼓動のような音が俺達にまで聞こえてくる。脂汗を流しているクロウ達を見ていると、しばらくしてからフッとクロウの力が抜け倒れ込みそうになる。
「おっと」
「あ、ありが、とう……」
素早く抱きとめてやり、肩を貸す。相当披露しているな……
そのままチラリとベアグラートを見ると、疲れてはいるものの気力が充実しているように見えた。
「戻った……! ありがとう、クロウ。お前が、お前達が困っていたら、この獣人の国、デンメルク一同、力を貸すと誓おう」
ぺこりと頭を下げると、控えていたドルバッグさん達も涙を流しながら膝をついた。
「また、セフィロト通信経由で状況を伝えるよ。最後の封印を解く時には頼むかもしれない。フェルゼン師匠とバウムさんにベアグラート。それにティリアが揃っているから、後二人か」
「うむ。極北とフエーゴは正反対の位置にあるから、考えて動くといい。まあそのドラゴンが居れば楽だろうが」
【グルルル……(寒いところは苦手ですがね)】
やっぱドラゴンは爬虫類なんだな?
「すぐ出るのか?」
ちょいちょい出てくるウサギ耳獣人が煙草をふかしながら俺に聞いて来た。お前、宿はいいのかよ……と、どうでもいいことを考えながらも答えてやる。
「このままファライディに乗って一旦シュピーゲルの町まで飛ぶよ。悪いけどギルドラは連れて行く」
ファライディの首に縛り上げられたギルドラを見ながら俺が言うと、ギルドラが青い顔をしながら叫んでいた。
「わ、私は何も知らない!? 高いところはダメなんだ! た、助けてくれ! アニス!」
アニスは目を瞑って無言で首を振った。その仕草がおかしくて、ティリア達がクスクスと笑う。
全員がファライディに乗り、羽ばたきはじめる。すると下でベアグラートが手を振って見送ってくれた。
「本当に世話になった! また会おう、回復の魔王達よ!」
「気にするな! エアモルベーゼとの戦いで活躍してもらうからな! ……よし、ファライディ! 船着き場まで頼むぜ!」
【ガウガウガー! (合点承知! いきやすぜー!)】
「いやあぁぁぁぁ高いぃぃぃぃ!?」
「ははは、悪人にはいい薬だな!」
リファが笑いながら泣き叫ぶギルドラを見てそんなことを言う。割とSっ気があるのかもしれない。
こうして俺達は闇と獣人の国を後にするのだった。
10
あなたにおすすめの小説
リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~
灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」
魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。
彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。
遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。
歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか?
己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。
そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。
そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。
例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。
過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る!
異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕!
――なろう・カクヨムでも連載中――
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜
橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます
網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。
異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。
宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。
セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。
チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~
黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」
女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。
この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。
『勇者道化師ベルキッド、追放される』
『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる