俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

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最終章:その果てに残るもの

第二百三十二話 力の差だからと諦められないこと

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 「急に、力が……」

 「どうしたグランツ!? ルルカしっかりしろ!」

 「カ、カケルさん……まずいよ、ボク達でこれじゃ外の人達はすぐに……みんな、ボクの近くに……≪封印の繭≫……!」

 ルルカがロッドを杖代わりにして何とか耐えつつ魔法を使う。薄い泡のようなものがルルカを中心に広がり、近くで倒れていたアニスやエリンを巻き込むと、荒かった呼吸が少しだけ戻った。

 <ではグランツさんも!>

 「うおお!?」

 ナルレアにぶん投げられてぼすっと泡の中へ突っ込むグランツが、困惑したように拳をにぎにぎしていた。どうやらあの泡の中は魔力を吸収するのを遮断してくれるようだ。

 「はあ……この中なら……あるていどは抑えられる、よ。元々防御のためだけの魔法だから攻撃はできないんだけど……はあ……はあ……あっ!?」

 「大丈夫かルルカ?」

 「あ、ありがとう……」

 少しだけ元気を取り戻したリファが、よろけたルルカを助ける。そこで完全に回復をしたアウロラが高らかに笑い、俺達に告げる。

 『はははは! いいぞ! この世界の魔力、命、全て私の力になっているのが分かる! 全てを吸いつくし、私の身体を取り戻してくれる!』

 「ロクでもない女神に創られたものじゃのう……」

 「300年封印されていたんだ、性格が歪んでもおかしくないだろう」

 ラヴィーネとバウムさんが俺達の近くまで来て口を開く。それを聞いてフェルゼン師匠が肩を竦めて言う。

 「難しいことはいいんだよ、こいつは倒す。それだけだ。おい、グリヘイド、ちゃんと分かってるか?」

 「よくわからんが、あれが敵なのだな? そうと分かれば全力で行くのみ! かの者の仇を今!」

 「ちょっと、近づかないでください、暑苦しいです」

 「相変わらずグリヘイドには辛辣なんだな……」

 ああ、火焔の魔王はグリヘイドって言うんだな。珍しく塩対応のティリアとベアグラートもこっちに来たので、俺は芙蓉を抱えてルルカの魔法の泡へと入れておく。

 「ぷぎゃ!? 私も戦うわ! みんなの仇を取らないと!」

 「お前は勇者じゃないから結構吸われていたはずだ。違うか?」

 「で、でも……」

 「お前はここで待ってろ。異世界人代表として……俺が代わりに倒してきてやる」

 ポンと頭を撫でてやると、芙蓉はぐっとこらえた顔をした後俯き、呟いた。

 「……分かった……お願いね……」

 
 「それじゃ、あのインチキ女神を倒そうかね」

 「こっちは減ったけど七人居る。僕も全力でいかせてもらうよ」

 「ってクロウ!? お前もいるの!?」

 「居たらおかしいかい? 破壊神の力である闇と風を受け継いでいるんだ、それくらいはできるよ」

 クロウが拳を握ると、アウロラが目を細めて口を開いた。

 『少年が粋がる。お前を殺して破壊神の力を十全にするのも考えるか……さあ、先程の私とは違うぞ? 女神の私が女神の使徒を殺すのは気が引けるが、お別れだ!』

 バッ!

 アウロラが両手を広げて笑う!

 「来る! でもその前に叩く!」

 「私達もカケルに続くぞ」

 ヒュヒュ!

 「はい! 急ぎますよ! ≪光鎖≫」

 ジャララララララ……

 バウムさんが俺の動きに即反応して掌が向いている角度を避けながら矢を連射し、ティリアが光の羽を展開して空を飛び『真実の水晶』を掲げると、水晶から輝く鎖がアウロラへ襲いかかる! その瞬間、俺とクロウが仕掛けた!

 「『速』をアップした連続攻撃でもくらえ!」

 「『暗黒の指』!」

 ガガガガガガ! 俺達の猛攻を片手で防ぐアウロラ。『力』を上げていてもこれか!? クロウも凄まじい攻撃なんだけど!?

 『甘い。そして”宝具”か、私の作った道具で逆らえると思うな?』

 「きゃあ!? ぐぎぎ……ま、負けませんよ!」

 アウロラが無造作に鎖をひっぱり、ティリアが一瞬引きずられるが、何とか持ちこたえてアウロラの右手は拘束したままになる。そこに一歩下がったクロウが俺に叫ぶ。

 「カケル、避けてくれよ! ≪ブラックウイング≫!」

 「それはグラオザムの魔法か! とう!」

 <これを!>

 『!』

 俺は槍を高跳びの棒のように使い、高く飛び上がる。おまけでナルレアに一撃を加えさせておく。直後、暴力的な黒い風がアウロラを包み込む!
 
 『同じ破壊神の力……効くものではない!』

 ボヒュ!

 風を気合いでかき消したアウロラが叫ぶ。だが、クロウの魔法は囮だ!

 「本命はこっちだ! 宝具”火焔扇斧”!」

 「そういうこった!」


 『チッ』

 グリヘイドとフェルゼン師匠がすぐそばに接近し、武器を振るう! アウロラは短く舌打ちをし、フェルゼン師匠へ氷の魔法を放つ。どてっぱらに風穴が空くかというような鋭い氷槍だが、師匠は構わず前へ出る。

 「お前が作ったんだろ? この宝具”岩土烈鍍ガントレット”は! その程度じゃ砕けないよなぁ!」

 フェルゼン師匠の両腕についている小手が宝具か! 左手で氷の槍をガードしながら右手の剣を振り下ろ。グリヘイドの炎を纏った片手斧も横なぎに払い、十字を作る。

 ザン!

 ザシュ!

 『やるな。だが、その程度ではやられん。回復の魔王を叩き落とし、殲滅魔法で終わらせてやろう』

 「空に!」

 アウロラが浮き、俺に向かって突っ込んでくる。槍を構えて迎撃を考えるが、機を見計らっていたラヴィーネが魔法を炸裂させる。

 「避けるのじゃぞ回復の魔王! ≪氷華刃≫!」

 「俺、空中制御できないんだけど!?」

 「カケルさん!」

 シュルル!

 「おわ!? サンキューティリア!」

 『何!?』

 「えへへ、良かったです!」

 ティリアの鎖で引き寄せられ、アウロラの攻撃は空を切る。そして、ラヴィーネの吹雪のような魔法がアウロラに纏わりついていく!

 ザザザザザ……

 『こんなものぉ!』

 「くっ……わらわの全力をたやすく!」

 「でもいけるぞ! 傷つかない訳じゃない」

 アウロラは息こそ切らしていないが、服や体には傷がついて血を流していた。ダメージ自体はやはり通るのだ。

 『神に逆らう愚かな者達よ……現魔力で消え去るがいい……!』

 ゴゴゴゴゴ……

 「空気が震えている……! 風斬りの魔王! ≪ブラックストーム≫!」

 「! ……よかろう、乗るぞ少年! 奏でろ”風斬”!」

 バウムさんの弓……恐らく宝具に三本の矢を指に挟み引き絞る。クロウのもう一つ上の魔法にそれを放つと、ブラックストームの勢いに乗った矢が加速しアウロラの腹を貫通する!

 『まだ私は死なん。残念だったな! ≪一粒の種≫!』

 「!?」

 アウロラが血を吐きながら、掲げた手を振り下ろすと、一粒の魔力の塊が高速で地面に着弾した。

 そして――

 カッ……!

 ゴゴゴゴゴ!

 「うわああああ!?」

 「魔力の塊が爆発――」

 「カケルさん!」

 ドォォォォン!

 ルルカの声を聞こえた気がしたが、白い爆発に意識を飲みこまれた――



 ◆ ◇ ◆


 
 『……』


 「あ、ああ……」

 絶対防御のルルカの泡が壊れることは無かった。だが、同時にアウロラの殲滅魔法で倒れるカケル達の姿を見ることになるルルカ達。

 「おい、カケル! しっかりせんか! わしを置いて死ぬなど許さんぞ! おのれ……クソ女神が、わしが相手じゃ!」

 「ダメ。ここから出たら一瞬で力尽きる」

 「~!」

 メリーヌが泡から出ようとするのをトレーネが冷静に止め、へっくんがコクコクと頷いていた。

 「ぬう……!」

 「カケルさん! 師匠! ダメか、ここで無事な俺達の方が不思議なくらいだ……」

 グランツが辺りを見渡すと、部屋だったはずのその場所は何もかも崩れ去っており、屋外と化していたため驚愕していた。

 「クロウ君! お兄ちゃん!」

 「アニスここから出てはダメだ」

 「私達には何もできないのか……!」

 リファが剣を握ったまま歯噛みをすると、アウロラがルルカ達を一瞥して口を開く。

 『お前達も一緒に送ってやろう。……と、言いたいところだが消耗が激しい。エアモルベーゼと対峙するため、魔力を蓄え直さねばならん。その防御も術者の魔力が尽きれば消えるだろう。そうすれば私の力になる』

 そう言い、空へと飛ぶアウロラ。

 「逃げるつもり! 降りてきなさい、私がこの手で――」

 『芙蓉、お前達は良いモルモットだった。礼を言う。次に創る世界は、象徴となる従順な神の戦士を作り、私の名を語らせるとしよう』

 「待ちなさい!」

 「一か八か、ルルカがカケルさんを回復させれば勝機はある。ここで逃せばカケル達を復活させてもアウロラが姿を見せるとは思えない……エリンの弓で女神の足を止められるか?」

 「……やってみます!」

 「そうこなくてはの。落としてやるわ……!」

 「……分かった。ボクは一気にカケルさんのもとへ行くよ」

 リファが賭けに出なければ、と言い、その場にいた全員が頷く。その間、アウロラはぐんぐん空へと登っていき、エリンは慌てて矢をつがえる。

 『何をするつもりか分からんが、間に合わん……む!?』

 「え?」

 急にアウロラの上昇が止まり、何も無いところを手でぺたぺたと触っている。

 『結界……どういうことだ……?』

 アウロラが呟くと、崩れた建物の陰からとある人物が姿を現す――

 「逃がしませんよ、女神……いえ、破壊神アウロラ」

 杖を突きつけるその人物は、聖女ユーティリアだった。


 
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