気が利かないと追放された賢者は遊び人へと転職する ~魔法を極めた賢者は遊び人になっても最強だけど、人との距離感は掴めないようです~

八神 凪

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第一章:賢者なのにアホ

その11 初依頼

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「なかなか居ませんね。見たくない時とかにはたくさんいるのに」
「得てしてそういうものだろう。これも依頼の醍醐味……とは違うか」
「向こうから来てくれないですかねえ」

 俺達は現場に到着してからオオダンゴムシを探し回っていた。
 少し長い草の間などに生息していたり、木の根元、岩陰などを好む。そのあたりを重点に置いて調査をしているが中々見つからなかった。
 ラナの言う通り居なくていい時ほど出会ってしまう。そんな感じはよくわかる。

「それにしても魔王を倒すなんてレーゲンさんも変わっていますよね」
「どうしてだ?」
「だって、倒せるアテがあるなら誰かが倒しているはずですよね。今だに倒せていないのは強いからですよ」
「そうだな。だが、誰かが倒さないと魔物被害は減らないし安心して暮らせないだろう? 両親はそんな志を持って戦っていた。その後を引き継いだのが俺だ」
「なるほど」
「お前だって頼まれて金を稼ぎに来たんだろう?」

 俺がそういうときょとんとした顔でこちらを見た後、確かにと口にしてまた探索に戻った。結局、なにが言いたかったのか分からなかったが親の願いを叶えるのも子の役目だと思う。

「少し休憩するか」
「はーい! あ、水筒を持ってくるの忘れました……」
「ほら、コップを貸してやる。<スウィートウォーター>」
「あ、お水が」

 俺はカバンから木のコップを取り出して適当な岩に腰かけたラナに渡しす。手に持ったコップに魔法で水を満たしてやると顔をほころばせていた。

「今日はちょっと日差しが強いな」
「んく……ぷは、ありがとうございます! なんかいい方法とか無いんですか?」
「うーん、レベルが上がれば魔物を呼び寄せるスキルを習得できる。それがあればもう少し簡単に見つけられるはずだ」
「遊び人のスキルですか?」
「そうだ」

 有用なものもあるので完全に使えない職ではない。そこは神様も適当にあてがったわけでは無さそうだ。
 しかし、八百屋や肉屋は神殿を通さないのに冒険者は神殿で恩恵を受けられるというのも妙な話だとは思う。

「よし、それじゃ引き続き探すとしよう」
「はーい!」

 元気よく返事をしてラナが立ち上がり、コップを回収。再びオオダンゴムシを探すため移動する。
 それからさらに一時間ほどしてようやく見つけた。


「いました……!」
「よし、最低何匹か覚えているな?」
「十匹ですね!」
「オッケーだ。行くぞ」

 俺達は日陰に集まっているオオダンゴムシに向かって突撃を開始する。先制はラナで店売りのロングソードが振り下ろされた。

「てやあ!」
「いいぞ」

 まだ新品の剣は切れ味抜群で、オオダンゴムシの身体を真っ二つにした。魔石の位置は教えているので、そこを上手く避けて切れている。
 それを確認した俺は棍棒を握りしめて別の個体の頭に落とす。

「そりゃ!」
「おお……!?」
「ぐあ!?」

 一撃で仕留めて見せると意気込んだが、あまりダメージを与えられなかった。それどころか丸まって転がって来た個体に脛をやられて蹲る。

「くそ……スーツでどうやってガードするんだ……なんか力も落ちている気がする……」
「と、とりあえず私が!」
「頼む」

 さらに迫ってくるオオダンゴムシをラナが剣で弾き返してくれた。腹を見せたところで突き刺して絶命させ、これで二匹を沈めた。

「あ! 逃げますよ!」
「チッ、魔物だけあって勘だけはいいな。<ファイアエッジ>」
「おお!」

 ラナに合わせて近接でと思ったが、思いのほかダメだった。ダメージが無いわけではないのでちょっと上がればいけるはずだ。
 それはそれとしてここまで探して逃がすわけにはいかないため、俺は魔法を使って一気に倒すことにした。
 ファイアエッジは矢じりのような形をした炎が飛んでいく魔法だ。一発の威力が高くない。その代わりたくさん出すことができるためこういう殲滅戦には向いている。
 そのまま十五匹ほどいたオオダンゴムシを切り裂いていった。

「あっという間に……!」
「ふう、これで終わりだ。魔石を回収して帰るぞ。あ、素材もきれいなのは持っていこう。硬い皮膚は洗濯板とかになるらしい」
「あ、ウチはそれ使ってました!」

 需要はあるようだ。
 そんな調子で魔石と素材を回収してカバンに入れる。予定より七匹多く倒したのでお金もそれなりに入るはずだ。

「お金~お金~♪」
「嫌な歌を歌うな!?」

 ラナが上機嫌でそんな歌を口にし、俺はツッコミを入れる。専用スキル『ハリセン』で、だ。

「あいた!? どっから出したんですかそれ!?」
「スキルだ」
「嘘!? あ、消えた」
「これでも魔力を使うからな……」
「すぐに取り出せる武器として使えれば便利なのかしら……?」

 謎スキルにお互い眉を顰めながら町を目指す。
 特に寄り道をしないでギルドに戻ると、マリアが出迎えてくれた。

「よー、早かったな! 収穫はどうだ?」
「まあまあだった。少し多めに倒して来た」
「やりましたよ!」
「ギルドカードを見せてくれ……って、ラナに全然ポイントが入っていないな。二匹か」
「ですです! 魔法でバーッと倒してくれたんですよ!」
「なるほどな。ああ、レーゲンの方にはポイントがかなりついているな」

 レベルアップにはまだまだだが、ポイントはまあまあ入った感じだ。
 このポイントが一定数溜まるとレベルがあがる。強敵を倒せばポイントも高い。
 しかし俺ならともかく、ラナのような完全素人にいきなり強敵は無理なので、オオダンゴムシのような小物を相手にする必要があるのだ。

「それで報酬は!?」
「今日の報酬は五千五百トールだな。初依頼お疲れさん」
「え? こ、これだけ、なんですか?」
「そうだぞ? 数を倒しているからまあまあ多い」
「多い……」
「とりあえず山分けだ。これで宿に泊まれるだろ」
「えっと……はい」

 なんだか期待外れといった感じのラナがお金を受け取った。今日のところは奢ってやるか。

「初依頼の祝いだ。飯を奢ろう」
「……! 本当ですか! ありがとうございます!」
「現金なやつだなあ」

 マリアはそう言いながら苦笑する。
 まあ、金に困っているならこんなもんかもしれないな。
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