雇われ聖女となったシーフ娘はやがて世界を救う?

八神 凪

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第四十二話

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「……そろそろ、この町は後にしませんか? というより、そもそも何も情報を与えずに人を探すという行為に無理がある」
「それはそう思いますねえ」

 町中を歩いて行くエルフ三人組。その中の一人、ディズがため息を吐いて無茶なことをしていると口にした。
 それにエルフのミンクも同意する。この広い世界で名前も告げずに男女のカップルを探すのは不可能だと。

「それは私とてそう思う。だが、シルファー様のオーダーは内密に探す、だ。名前は知られているだろうし、おいそれとは出せない」

 二人の意見に同調しつつも、エルフの男であるタイドは任務について口にする。
 その言葉に二人は顔を見合わせて肩を竦めた。
 そこで、ディズは人差し指を立ててからタイドへ提案を投げかけた。

「私は考えました。彼女の名前は出せませんが、フランツは大丈夫ではありませんか?」
「あ、それはわたしも思いました!」
「ふむ……フランツか」

 タイドは立ち止まり顎に手を当てて考える。セットで考えていたからフランツの名も口にしなかったが、よく考えればフランツは問題ないのである。

「彼の素性は聖殿の者以外誰も知らないはずかと」
「そうだな……」

 ディズの言い分にタイドは一理あるかと顎を撫でる。町の人間にまた話を聞く予定だったが、少し考えた後で足の向きを変える。

「どこへ?」
「ギルドだ。期待はできないが聞いてみるのもいいだろう」
「了解でーす」

 ミンクが敬礼をしてとてとてと後ろをついていき、ディズも頷いて横に並ぶ。町の地形はすでに覚えているのでギルドへはすぐに到着した。

「お、エルフ……珍しいな」
「こっちの方はそうなのだな。私はタイド。冒険者だ」
「おお、ギルドカードもあるのか。そっちの二人も」
「ええ」

 ギルドに入り、受付カウンターでタイドが名乗りながらギルドカードを見せていた。
 ディズとミンクの二人もサッと取り出して身分を証明する。
 受付の男は頷いた後、にこりと笑ってから用件を尋ねた。

「オッケー。問題ないな! 今日は依頼かい? まだ、それなりの依頼が残っているぞ」
「いや、依頼ではないんだ。人探しをしている」
「人探し? 冒険者か? 話を聞くか……代わってくれ」

 受付の男がそれならと場所を移動するため受付を交代した。タイド達を端のテーブルへ案内し、席につかせた。

「で? 名前とかは分かるのか?」
「ああ、名前はフランツという。冒険者だと思う」
「冒険者か分からないのか? いや待てよ、フランツ……?」
「知っているのですか?」

 男が不意に考え込むと、ディズが眉を上げて反応する。三人のエルフが黙って待っていると、手をポンと打ってから顔を上げた。

「そうだ、昨日から来ているシーフクランの新人のカードがそうだった。知り合いか?」
「……! シーフクランの新人!?」
「フランツが……? 同名なだけ、とか」
「どんな容姿ですか?」

 ディズが訝しみ、ミンクがフランツの容姿を尋ねると、受付の男は片手を少し上げてから反応する。

「金髪の普通の兄ちゃんだったよ。クランに入っているくらいだから探している人間とは違うのではないかな」
「いや……金髪で普通に見える男なら探している者かもしれん」
「え?」
「そうね、フランツは普通の男だものね」
「うんうん」

 タイドが普通の男ということを聞いて、探しているフランツであろうということを呟き、納得していた。
 残り二人のエルフも真面目な顔で頷いていた。ギルド職員は妙な信頼感があるんだなと呆れた顔で三人を見ていた。

「フランツに会うことはできるだろうか?」
「え? ああ、さっき依頼をしに出て行ったから帰ってくるのを待っていれば会えるぞ」
「なるほど、ではここで待たせてもらいましょうか」

 事情を知らないギルド職員はあっさり帰ってくることを言い、ディズがそれなら待とうと提案した。

「それがいいだろう。ここまで来たら少し待つくらい大したことは無い」

 タイドも動かないで会えるならと即決した。

「ではフランツさんが戻ってきたら声をかけてもらってもいいですか? わたし達はここで食事でもしながら待っています」
「え? まだ朝だし、戻ってくるのはかなり後だぞ」
「いえ、ここですれ違っても嫌なので。あ、ビールをお願いいたします!」
「果実酒をもらおう。それとナッツの盛り合わせを」
「チーズも欲しいですね」
「君たち!?」

 ミンクは待つといいつつ、併設されている酒場のマスターにビールを注文していた。
 さらにタイドは果実酒、ディズがチーズを注文し、男は驚愕する。
 すると酒場のマスターがフッと笑い、注文を受け付けた。

「朝からいくのかい? エルフは自由でいいな」
「そうでもないのだけどな。今は人探しでゆっくりできない」
「だよねー。あは、来た来た♪」

 エルフは長寿なのでマスターは羨ましいとトレイを持ってテーブルへ来る。お酒とつまみが届いてミンクが両手を合わせて歓喜の声を上げていた。

「なんなんだ……まあ、フランツが帰ってきたら声をかけるとするよ」
「頼みます」
「「「乾杯―」」」

 ひとまずギルド職員の男は頭を掻きながら席を立って受付に戻っていく。エルフの三人はしばし休息をすることになった。

◆ ◇ ◆

「グリーンスライムって割と可愛い感じだったわね。攻撃してこないなら一匹欲しいかも」
「変わった子だねえ。あの子は『うへえ』って言ってすぐ倒していたけど」
「ま、まあ、お嬢様ということで偏見がないんですよ」

 そして昼を回っておやつを食べる時間が差し掛かって来たころ、アリア達が依頼を終えて戻って来た。
 グリーンスライムの駆除だったが、アリアは不思議な生き物だと怖がることなくダガーの柄で突いたりしていた。
 大多数に囲まれなければそれほど大した魔物ではないため、ゆっくりと観察して倒していたらこの時間になったというわけである。

「お昼食べたいですね。……っと、そろそろ喋らないようにしないと」
「はは、そうしておくれ! アタシはどっちでもいいんだけどさ」

 ギルドに近づいてきたところ、アリアはハッと気づいて口をつぐんだ。ジャネットが苦笑しながら返し、受付へと向かう。

「お、戻って来たか! ……グリーンスライムの体液が入った瓶が七本……と、問題ないな。こいつが報酬だ」
「毎度♪ って、依頼は相変わらず増えないわねえ」
「国は動いちゃくれないから大変だよ。冒険者が減っても困るのは自分達だと思うんだがな。ああ、そうだ、お前達が帰ってきたら伝えることがあったんだ」
「ん? なんだい?」

 職員の男がそう口にすると、ジャネットが首を傾げる。すると、酒場の席がある方に親指を向けて言う。

「……!」
「……!」

 するとそこには見知ったエルフの三人組が座っていた。もちろん、アリアとフランツは即座に目を丸くして驚く。

 何故なら――

「うおーい! ビール! ビールがたりまへんよぉ!」
「ナッツもだ! 金ならある、早く!」
「……」

 酔ってマスターに絡むミンクとタイドの二人と、黙々と飲み続けるディズの姿だったからだ。
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