雇われ聖女となったシーフ娘はやがて世界を救う?

八神 凪

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第四十九話

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「その依頼、お受けしましょう」
「ちょっと……!?」
「ええ!? オーガですよ、オーガ! ホブゴブリンとは比べ物にならない凶悪な魔物なんですよ!」

 エルゴさんの話を聞き、あたしは即決で依頼を受けることにした。
 正直、シーフとしてのあたしが受けようと思ったらかなり手ごわい相手だ。正面切ってやり合えるわけもない。
 罠を張って、薬品や道具を総動員してようやく勝てるかどうか。それがオーガという魔物だ。とにかくゴブリンよりも賢いのが厄介なんだよなあ。
 だけど戦える冒険者が居ない今、放置するわけにもいかない。嫌がらせだとエルゴさんは言うけど、どういう理由があっても魔物を放置するような形になるのはマズイのである。

「オーガの集団なら黙っているわけにはいかね……いきませんわ。幸い、あたしも魔法が使えるし、精霊たちと協力すれば倒せますわですのよ」
「コホン!」
「ま、まあ、そういうことなので任せて欲しいですわ」
「まあ、依頼票に書いている場所を見る限り、王都とこの町の間にある森の中みたいだし、放置はまずいよねー。王都から冒険者を出すべきだと思うけど……嫌がらせかー」
「面目ない……私が不甲斐ないばかりに……」

 シルファーが依頼票をヒラヒラさせながら口を尖らせていると、エルゴさんは後頭部に手を当ててガクリと肩を落とす。

「ま、後は任せておきな。オーガなんざ、俺達にかかりゃ目じゃないからな。それにここの冒険者達はお前が不甲斐ないなんて思っているヤツはいねえよ」

 そこでイフリーが親指を立てながら笑う。するといつの間にか受付カウンターに集まって来た冒険者達が口を開く。

「だな。イフリーさんの言う通りだぜ! ……というか、俺達が倒せれば一番いいんだけどな……」
「こうなりゃみんなで行くか?」
「ああ。聖女様を危険な場所へ行かせるわけにはいくまい」
「みんな……いや、そうだな。ここで頭を抱えているだけの男のなにがギルドマスターと言うのか。この依頼、私が行く」
「「「え!?」」」

 あたしを危険に晒さない方がいいと、冒険者達が全員で依頼を受ければいいんじゃないかと口にする。みんないい奴等じゃないか。そう思った矢先、エルゴさんが頬を叩いてから、自分でこの依頼を完遂すると言い出した。
 あたしはもちろん、他の冒険者達も目を見開いて驚いていた。そこへイフリーが言う。

「いけるのか? 装備は? 腕は鈍っちゃいないだろうな?」
「……鍛錬は続けている。実戦からは遠ざかっているが……」
「エルゴさんが戦うのは初めて見るぜ……? こりゃ、オレ達も行くしかねえな!」
「「おお!」」
「なので聖女様はいらっしゃらなくて大丈夫です」
「却下、ですわ」
「え?」

 オーガ討伐は、ここで活動している冒険者達が全員で行くことになった……のだけど、あたしは渋い顔で却下をした。
 エルゴさんや冒険者達がキョトンとする中、あたしは続ける。

「せっかく私が行く気になったのに、もういいとはあり得ませんね! そして私は回復魔法も使えるからケガをした時の保険になれます」
「む、むう……それは一理ありますが……」
「困っていますよ。ここはお任せした方がいいのでは……?」
「ダメですディーネ。ここで別れてしまい、万が一誰かが亡くなったりしたのを後で聞いたら私はきっと後悔するでしょう。ここは一緒に行くのです」
「し、しかし……」
「ディーネ」
「……! わかりました……」

 ディーネが反対するのはいつものことなのだけど、今回ばかりはそういうわけにはいかない。
 悪いけど、人目があるので聖女としての権限を活かすことにした。
 彼女達はリアだとわかっているけど他の人間が見ている間は聖女(あたし)の言葉に従わざるを得ない。いつも利用されているわけだし、ここは逆に利用させてもらう。

「た、確かにありがたい申し出ですが……」
「ま、大丈夫だろ。王都の連中がなにか言ってきたら俺が言う」
「あた……私からも文句を言っておきましょう」
「……申し訳ありません。では、お力をお貸しください」
「まったく……先代に知られたらなんと言われるか……」
「……気がかりはそれだけではないがな。まあ、やりようはあるか」
「ん?」

 ディーネはいつものことだけど、ノルム爺さんが神妙な顔で呟いたのは気になるな?
 ま、後で聞けばいいか。
 そうと決まれば――

「全員、しっかりした装備を。私達も装備をしましょう」
「わたし達は大丈夫だからアリアだけかなー? ガッチガチに固めようー」
「オーガ討伐は報酬が無いも同然になる。それでも行きたい者だけついていきてくれ」
「「「おおー!」」」
「聖女様と共闘とか二度とないかもしれないし、行くしかねえだろ!」
「よろしくお願いしますね」
「は、はいー!」
「やっぱ美人だよな……」

 冒険者達がやる気になっているので、あたしが笑いながら『頼むぜ』をやわらかく言う。
 すると彼等はさらにやる気になったようである。ふむ、あたしの顔は悪くないのか。
 まあ、アリアは可愛らしい感じの雰囲気だったしな。
 そんな調子で場は騒然となり、各々装備を整えたり道具をカバンに詰めたりとお忙しだった。

「私の装備はどうしましょうか」

 あたしはひとまず装備を買うかと小声で言うと、ディーネがため息を吐きながらギルドの外へ来るように示唆して来た。

「?」
「なんだろうー」

 シルファーも知らないらしく、顔を見合わせてから後を追う。そのまま近くに止めていた馬車へとやってきた。

「……不本意ながら、装備はあります。前にイフリーへ頼んでおいたものです」
「お、マジで!」
「まさかディーネが……!?」
「ああ、持ってきてたのか。前の休みの時、ディーネが見繕っておいてくれと言ってたんだよ」
「おお……でもサイズは……」
「私が誤るはずがありません」

 自信満々でディーネが腰に手を当ててそういう。どうやらこういう事態に備えていたらしい。だけど早々ないと思っていたとのことなので「不本意」だと。
 プレートメイルの胸当て部分にガントレット。レッグガードと急所は守れる感じだな。
 シーフとして活動するならこの装備は重いけど、防御重視なら間違いない一品だ。

「こりゃいいや。武器は? あたしのダガーでいいか」
「そんなわけありますか! これを」
「お、ロッド?」
「はい。刃物を振り回す聖女などあってはなりませんし、これで魔法を使ってください。それもいざという時だけで」
「えー」
「まあまあ、依頼を受けられるだけでも進展があったよ。……オーガを放置できないし、リアの回復の力はきっと使う時が来ると思うし、英断だと思う」
「よっしゃ、んじゃ行きますか」
「オッケー!」

 ということで予期せぬ形でギルドの冒険者達とオーガ退治となった。
 規模がどれくらいか? 依頼票の内容ならなんとかなると思うけど、イレギュラーってのはあるもんだしなあ。この前のホブゴブリンみたいに。
 あたしはそんなことを考えながら集合するのだった。
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