雇われ聖女となったシーフ娘はやがて世界を救う?

八神 凪

文字の大きさ
30 / 57

第三十話

しおりを挟む
 さて、休みの日に依頼をしてからまた忙しい日が続いていた。謁見は慣れてきたし、ムーンシャインはまあまあ使えるようになった。
 よく分からない話を聞くのも……まあ、うん、慣れたかな……変な奴が多い気もするけど精霊達がフォローしてくれるし。
 しかし、まだアリアの行方は分からないらしい。本気で探しているのは間違いないようだけど、やはり聖女だとバレるのが怖いので聞き込みが難しいとのこと。

「リアお疲れ様ー!」
「ふう……サンキュー、シルファー! 晩飯前に風呂に行くかあ」
「そうしよっか。ディーネはご飯担当じゃないし、呼んでみようー」

 本日の謁見が終わり、自室へ戻るため廊下に出る。そこでシルファーが追いかけて来て一緒にお風呂へ行くことにした。
 自室で着替えた後、ディーネを探しに出ると、イフリーと会った。

「あれ、イフリーどうしたんだ?」
「お、リアにシルファーか。今日もお疲れさん!」
「おつかれー。って、なんか渋い顔をしているけど、どしたの?」

 シルファーも気づいたようでそんな質問を投げかけていた。するとイフリーは肩を竦めて持っていた手紙をひらひらとさせた。

「この前のホブゴブリン討伐の結果が来たんだよ」
「お、報酬の話?」

 あたしは思わず笑みをこぼしてしまう。結構いいお金になったと思うんだよね。

「ま、ひとまずそれだな。だけど、ひとつ問題がある」
「なんだよ?」
「……王都のギルドへ来て欲しいと言って来ているらしいんだ」

 手紙によると報酬は依頼を受けた場所で受け取れるけど、聖女が依頼を受けたことについて話を聞きたいとのことだ。
 それを聞いてあたしは腕組みをして答える。

「別に聞く必要はないんじゃないか? ギルドより聖女の方がランクとして上だろ? もし話を聞きたいなら聖殿に来いって言えば良くないか?」
「おお、ハッキリ言っちゃうねー、さすがリア。でも、わたしもそう思うよー」

 シルファーも同じ意見のようで、パチパチと拍手をしながら頷いていた。
 イフリーはどう答えるのか? すると少し間を置いてから彼が話を続ける。

「ま、確かにそうなんだよな。依頼を受けたのはロルクアの町だから王都のギルドが口を出すことはねえんだよ。リアの案で返しておくぜ」
「エルゴさんに迷惑はかからないかな? そこが問題なければあたしはそれがいいと思う」

 町のギルドがそもそも寂れている原因でもあるので、協力したくないといえばそうだ。
 何の話があるか知らないけど、こっちは悪いことをしていないから呼び出しに応じる必要は無いと考えている。

「一つ気になるのがギュスター伯爵の名前も入っていることだ。あのタヌキ親父、前にもアリアにアプローチをかけてきたからな」
「そうなのか?」
「それは益々行けないねー。身内の誰かと合わせたいって感じがするもん」

 なるほど、この前会った時に塩対応だったのはそういう理由があったのか。シルファーもあまりいい顔をしていなかったから何かあるのかとは思ったけど。

「そんじゃ、ノルムとディーネにも話してから返答をしとくぜ。報酬は次の休みに俺が取りに行ってくる。悪いが今回の休みは聖殿で大人しくしててくれ」
「オッケー、面倒ごとはごめんだしな」

 この前、久しぶりに依頼を受けてスッキリしたし、欲しいものも今のところないから大丈夫だ。
 手紙を出すかどうかだけど、悶着がある今はやっぱり難しいと思い書き直すことにした。
 まだひと月も経っていないし、親父も心配しないだろう。
 あたし達は特に気にすることもなく、イフリーに任せることにした。

◆ ◇ ◆

「ふむ、話し合いは拒否してきたか、コイル」
「そうですな。エルゴの奴がこちらへ回答を送って来たのですが、依頼の結果が全てだと聖女様達が言っていた、と」

 聖殿へ送った手紙の回答をコイルと呼ばれた男がギュスターに報告していた。顎に手を当てて眉を顰めるが、ギュスターは特に機嫌が悪いということも無かった。

「どうされますか?」
「まあ、これは想定内だ。こちらから出向く口実は出来たからこれはこれでいい」
「謁見ですか?」

 コイルが尋ねると、ギュスターは頷いてから答える。

「謁見はそうなのだが、少し時間を取ってもらおうと考えていてな。今回の件を深く切り込んでおきたい」
「しかし、あくまでも冒険者登録をしているイフリーという精霊の男が依頼を受けた形です。しかもゴブリン討伐のみならず、ホブゴブリンをも倒しています」

 故に話を聞きたいと言ったところで落ち度がないため、この回答も問題がないとコイルは話す。しかし、ギュスターはフッと笑ってから煙草に火をつけた。

「なに、それ自体は正攻法で特に問題はないから良い。しかし、依頼を受けるということは王都のギルドでも受けてもらえる可能性がある」
「なるほど。それで接触する機会を増やすという思惑ですか」

 コイルが小さく頷きながら理解を示した。

「謁見があるから毎回は難しいだろうが、先日のように休みの日に依頼をするというのはどうだろうか?」
「私は構わないと思いますが、応じますかね?」
「他のギルドを助けて、王都のギルドは助けられないということは無いだろう? そこを押せばいい」

 ギュスターは紫煙を吐きながらそう語った。
 聖女がギルドを助けたという話はギュスターにとって渡りに船だった。外で活動することが殆どないため、顔を合わせるのは謁見かパーティのみである。
 そのため、外で活動するという実績を知ったのなら依頼という形で外に出てもらうということが可能になったと考えていた。

「(……さて、問題は精霊達か。聖女が居なければならない状況を考えねばならんな――)」
しおりを挟む
感想 57

あなたにおすすめの小説

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎
ファンタジー
こんにちわ!!私はティファ。18歳。 ある国で軽い気持ちで兵士になったら気付いたら最強騎士になってしまいました!でも私、本当は小さな料理店を開くのが夢なんです。そ・れ・な・の・に!!私、仲間に裏切られて敵国に捕まってしまいました!!あわわどうしましょ!でも、何だか王様の様子がおかしいのです。私、一体どうなってしまうんでしょうか? *小説家になろう様にも掲載されております。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる

八神 凪
ファンタジー
世界には多種多様な種族が存在する。 人間、獣人、エルフにドワーフなどだ。 その中でも最強とされるドラゴンも輪の中に居る。 最強でも最弱でも、共通して言えることは歳を取れば老いるという点である。 この物語は老いたドラゴンが集落から追い出されるところから始まる。 そして辿り着いた先で、爺さんドラゴンは人間の赤子を拾うのだった。 それはとんでもないことの幕開けでも、あった――

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

処理中です...