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力を手に入れるために
22.旦那さん
――カーネリア――
「ふふ、良く寝ているね」
拾った子供、アルを寝室に寝かせてから数分。
私は様子を見に部屋へ行くと、可愛い寝息を立てて寝ていることの安堵する。
近くの椅子をベッドの横へ持ってきてから隣に座り、今後のことを考えることにした。
この子は少し話しただけでも賢く、礼儀もあって育ちもいいことを伺わせる。
ただ、五歳で復讐を口にすることに違和感があることは否めないけど。
きっと大きくなればアルは出ていくに違いない。というよりもライクベルン王国に肉親が居るならそうすべきなのだ。
「……本当にかわいい子。私の子なら良かったのに」
本来であれば幸せに暮らせるはずだったアルは本当に不憫だ。経緯を聞いて黙っていられず衝動的に息子にすると口にしていた。
同情と思われても、子供ができなかった身代わりと揶揄されても構わない。あの広い大森林で偶然出会った。これはきっと運命だったのだろう。
腐っていた私に神様が道を与えてくれたのだと。
『私と同じ境遇』を持つこの子を遣わせたのだと。
「アルはいつか必ずライクベルンへ連れて行くよ」
「ん……お父さん……お母、さん……」
私が手を握ると、アルはうなされながら両親のことを口にしていた。目の前で殺されたショックは私には分からない。
だから、せめてここに居る間は幸せに暮らして欲しいと願うばかりだ。
そう誓いながら私はアルの手を握る――
◆ ◇ ◆
ん……? なんか手に柔らかい握られた感触が……。なんだ?
眠りから覚めた俺は、手が力強く握られていることに気づき意識を覚醒させてめをうっすらと開ける。
すると、困った顔で俺を見下ろすカーネリア母さんの顔が目に入り、目をこすりながら口を開く。
「おはよう……カーネリア母さん」
「ああ、起こしちゃったかい、ごめんよ」
「ううん、おしっこに行きたくなったから……」
「あはは、おねしょは恥ずかしいもんね。お買い物に行ける?」
「もちろん! お金はないけど……」
「気にしないでいいんだよ。今日はアルの誕生日だ、ケーキを買おうかね」
そんな話をしながら俺は一度トイレへ行き、その足で買い物へと出ていく。
屋敷についたときはまだ昼前だったが、外に出てみるとすでに陽が落ちかけていた。
城壁の向こうに見える夕日が綺麗だと思いつつ、手を繋いで商店の並ぶ道をゆっくり歩いていく。
「カーネリアさんじゃないか……!? 帰って来たのか」
「また世話になるよ」
「こんにちは」
「子供……? えっと……」
「私の子供だよ、それより、今日の一番いい肉をおくれ」
「あ、ああ」
立ち寄ったのは肉屋の親父さんが困惑しながら俺とカーネリア母さんを見比べていた。子供ができない、というのは周知の事実のようで、
「まあ、カーネリアさん! 戻ってこられたのですね! お子さん……?」
「そうだよ、アルっていうんだ。可愛いだろう。今日が誕生日なんだ、私も昨日だったし、いいやつを頂戴」
「そ、そうですね! お誕生日ですか? それではこちらのケーキでお祝いをしましょう」
「子供か……いいのか?」
「問題ないよ。あんたは私にフルーツを売ってくれればね」
「はっ、相変わらず大雑把だな。あの方は知っているのか?」
「今朝、顔は見たけどねえ」
「そうか。またな、坊主」
「はい!」
お菓子屋と八百屋の人も俺という存在が異質だと言わんばかりの目で見て来た。
大森林に移り住んでいたことも知られているので、どこから連れて来たんだと目が訴えていたな。
そんなことはどうでもいいとばかりにカーネリア母さんは鼻歌交じりに荷物と俺の手を握り帰路につく。
荷物を持とうかと声をかけようとしたところで、大通りを往来していた人たちが端へ寄っていき、俺達もそれに倣う。
「朝の騎士団……」
「もう帰って来たんだね。……ふうん、大型の魔物の討伐か。冒険者じゃちょっと難しいか」
「本当だ、でかい蜘蛛……」
キングサイズのベッドくらいある大蜘蛛を吊るした騎士が目の前を通り俺はあっけにとられる。スライムくらいなら戦ったけど、あんなのもいるのか……
そのまま騎士達が流れて城へ行くその様子を眺めていると、赤い鎧を着た騎士がカーネリア母さんのところで立ち止まった。
「くっく……お疲れさん。」
「や、やっぱりカーネリアか!? 今朝のは見間違いじゃなかったんだな!」
「まあね。あんたにゃ悪いけど、この子とあの屋敷で暮らすことにするよ」
「この子……?」
「あ、こんにちは……アルと言います」
「え!? ちょ、待ってくれ……それは誰の子……」
「あたしだよ」
意地の悪い顔で笑いながら俺の頭に手を置くと、赤い鎧の騎士は膝から崩れ落ちた。
「ば、馬鹿な……カーネリアが俺以外の相手と結婚を……? 子供ができただって? だ、誰だその男は! ことと次第によってはこの手で――」
「どうするつもりだい? あたしは再婚してないよ。ほら、副隊長が呼んでいるよ、行ってきな」
「い、いや、しかし……」
「大丈夫、あたしは居るから。また屋敷にでもおいで」
「……わかった。アル君、またな」
「は、はい」
俺の頭に手を置き、いかつい鎧の下から出た声は優しそうな感じがした。この人が元旦那だろうか?
特にカーネリア母さんはなにを言うでもなく、屋敷へと戻ったのだが――
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