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波乱の学校生活
45.燃える市街地
しおりを挟む「きゃああ!?」
「うわあああ!?」
なんてこった……!
現場に駆け付けた俺が見た光景は悲惨の一言。
燃える屋台に、血を流して倒れている人。
そして――
「……」
「ぎゃあ!?」
逃げまどう人を背中から斬りつける覆面姿の人間が、居た。
こいつら一体……? いや、考えている暇はないか!
「止めろ!」
「……!」
「早く逃げて!」
「あ、ああ、す、すまない……!!」
子供連れの男を襲おうとしていた覆面の剣を横から弾き、攻撃を逸らす。
一瞬の間だが、逃げるにはそれで十分だ。
……学校で剣と魔法を習うとはいえ、実戦で戦う冒険者以外は平時に使うことが無いためこういう強襲状態には弱いか。
そんなことを考えていると、目の前の覆面がロングソードと呼ばれる長剣を俺に向けて口を開いた。
「……先に死にたいのか、小僧」
「あいにくそういう訳にもいかなくて……ね!」
「なに……!?」
「ぐああ!?」
俺は左手で別の人間に斬りかかっていく覆面にファイヤーボールをぶっぱなしてやると、目の前の男がそちらに目を向け驚愕する。
「よそ見とは余裕だな!」
「ぬぐ……!?」
ファイヤーボールに包まれた男はゴロゴロと火を消すために悶えているので、ひとまずスルー。
もう一人奥に居るが、あそこまでは遠い……。なら、無詠唱に気を取られた目の前の男に集中するべきだと剣を振る。
「ハッ!」
型通りというと実戦向きではないように思えるがそんなことは無く、この世界のものは覚えればそれなりに戦えるようになるし、連続して打ち込めばかなりの脅威になる。
正面からの切り落とし、右からの切り上げ、横一文字の三つの型を瞬時に繰り出してやると、横一文字をガードしたところで男がたたらを踏んだ。
「ちぃ……! 子供のくせに鋭い! ちぇいさぁ!」
「バランスが悪いのに振れるものか!」
「う、お!? があぁぁ!?」
俺は姿勢を低くして懐に潜り込むと、下から切り上げて相手の腕を狙う。
斬れたかと思ったが、金属の鈍い音がして弾かれたので俺はすぐにバックステップで後退。
「くっ……!? 勘のいい……」
直後、覆面が膝蹴りを繰り出してきたがそれは空振りに終わる。
こいつらきちんと武装しているな、行きずりの犯行じゃなさそうだ。
<怖くないんですか>
「……」
リグレットに尋ねられるが答えない。正直、怖い。
真剣での戦いは初めてなのだ、手足は震えているし背中は汗でびっしょりになっている。
だけど、無差別に人を攻撃するような奴らだ、せめて警備の騎士や兵士が来るまで食い止めないと犠牲者が増える。
回復魔法の素である‟ベルクリフ”は使えるかどうかの資質判定を受けていないので怪我人は治せない。
再生の左腕《セラフィム》があれば治療できるけど、カーネリア母さんの時に使った感じだと連発は不可。残念だが、ここは食い止める以外、俺に出来ることは無い……と思う。
「死ね……!」
「それはできないって言ってるだろ! <ファイアーボール>!」
「うぐ!? 詠唱無しで使ってくる魔法使いとは……!」
「くっ……!?」
踏み込んできた男にファイアーボールをぶつけたものの、そのままの勢いで剣を振り下ろされた。よろけていたので俺の肩を掠めた程度だが、痛みが走る。
ならばと、俺は踏ん張り、マチェットを勢いよく横薙ぎに振るう。
「だああああ!!」
「無駄だ。……なんだと!?」
マチェットを受けた瞬間、覆面のロングソードが真っ二つに折れて乾いた金属音が響く。
そして俺はさらに左手を伸ばしながら踏み込む。
覆面の向こうに見える驚愕した目が合ったが、すでに俺の魔法は完成していた。
「<アイスニードル>!」
「がっ……!?」
ゼロ距離で放った氷の刃。
それが腹、肩、足を刺し貫き、覆面は仰向けに倒れた。
「お、のれぇ……このような子供に……」
「はあ……はあ……。や、やったか。そのケガじゃもう戦えないだろ、次は――」
<あ、大丈夫そうですよ>
「ん……」
リグレットがそう言い、顔を上げると駆けつけてきた騎士や兵士が覆面の男達を取り押さえていた。
「良かった……。こいつら一体何者」
『なんだ』と言いかけたところでとんでもない光景が目に入る。
「こいつ、腹を切ったぞ!?」
「と、止めろ!」
「捕まりはせん……! ははは――」
「ば、爆発……うわああ!?」
捕まった覆面達は一斉に自害したのだ。
首を切る者、腹を切る者。
さらに爆裂する魔法で周囲を巻き込みながら死んだ者……
「な、なんだこいつら……なんでこんな簡単に死ねるんだ……?」
<アル様、下を!!>
「……!? ま、待て!」
「……死ね」
リグレットの声で足元に目をやると、覆面の男が懐から何かを取り出し、火をつける。
まずい、と直感が俺を刺激しすぐに<シルバーガード>を発動させて飛びのくと、刹那の瞬間、爆発を起こして男は粉々になった。
「……っ」
地面に伏せながらわけがわからないと冷や汗をかく。
しかし、最初から自爆するつもりだったような感じだった。特に最後目にした覆面の目は笑っていた。
「……あ!」
<どうしました?>
「大丈夫か、君!?」
そこで俺はピンとくるものがあり、近づいて来た騎士に声をかける。
「どれくらいの規模で出てきました!?」
「あちこちで爆発が起こっていたから散らばっているが……
「あちこち……! まずい城に戻るんだ!」
「え?」
「こいつらはおそらく囮だ、本命は別に居る――」
「あ、君!!」
狙いは恐らく城で、解放状態になっているところを侵入するつもりだろう。
ゼルガイド父さんやカーネリア母さんは何とかなるとしても、まだ小さいルークやルーナが心配だ。
「……ラッドも誕生日が近いしな、助けてやらないと……!」
城までの道は分かっていると、俺は全力で駆け出した――
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