前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。

八神 凪

文字の大きさ
52 / 258
波乱の学校生活

49.推察②


 「どういうことです、陛下?」
 
 俺をラッドの護衛に、勉学を共に学ぶという話。
 聞いたゼルガイド父さんが一番初めに疑問を口にする。
 『ブック・オブ・アカシック』についてと、俺のことは国王が知っているからこそ、あの日、ラッドは元のクラスに戻ったのだ。

 俺は持つ者が不幸に見舞われる本を持つ、忌むべき存在のはずだが。
 
 「今、進言した通り。近いうちに城へ通ってもらうことになるか、住み込みでここに滞在してもらおうと考えている」
 「それはどうしてでしょう? ……私の孫は不幸を招く、それで王族と関わらないよう通達があったと記憶しておりますが」

 モーラ婆さんが少々きつめの声で詰問する。
 元々きつい感じはある婆さんだが、分かり合った後のカーネリア母さんや俺達孫にはすこぶる優しい。

 ……もちろん怒ると怖く、それこそこの前の戦いの後、くどくどと説教を受けたしな……

 それはともかく、続きを聞いてみるとしよう。

 「確かに半年ほど前にはミーア先生の助言もあり、そう取り決めた。しかし、先日の戦い、それとお前達に双子を与えてくれたという奇跡を考え、そこまで悪いものではないのでは、と考えたのだ」
 「私達にとってはそうですね、アルが来てくれたからこうやってまた夫婦とやっていけています」
 「うむ。伝説は伝説にすぎん。本人に不幸があっても、周りに影響を及ぼさないのでは、と考えたのだ。……それに、クラスが変わってからラッドのやつが目に見えて落ち込んでおってな」
 「それは言わなくていいです父上。そういうわけで受けてくれるかい、アル?」

 ラッドが笑顔で国王の手を叩き、俺達は苦笑する。
 なんというか、それでいいのだろうかとも思うが、決定なようだ。

 「……まあ、陛下と王子に逆らうにはいきませんしね」
 「お。……くくく、生意気を言いよるわ! では、住み込みと通いどちらにする」
 「うーん……」

 俺は膝の上で、手をこねくり回しているルーナの後ろ頭を見つめる。
 ふむ、少しずつ変えていくか。

 「……では、通いで。カーネリア母さんも教諭としてくるなら、一緒に来るのがいいかと」
 「そうか、そうだな。一家そろって城で働くなら住み込みで良さそうなものだが……」
 「やはり家で団欒は取りたいですし、家でゆっくりさせてください。メイドに暇をやるわけにもいきません」

 最後はゼルガイド父さんが笑いながら締める。
 これでいい、とりあえず通いにしておき、徐々に泊まりを増やしていけば俺が居ない日が徐々にでき、慣れてくれるだろう。

 話はこれで終わり……かと思われたが、国王は仕切り直しさらに続ける。

 「……アルを引き入れたのはもう一つ理由があるのだ。その、問題とされた『ブック・オブ・アカシック』。ミーア先生の言では所有者の知りたい情報が浮かんでくるのだと聞いている」
 「ええ」

 曖昧な返事をしていると、国王はなかなかファンキーな提案を口にする。

 「例えばだが……私の知りたい情報をアルに伝えて、それをアルが『知りたい』と思えば本にその情報が浮かんでくるのかどうか、というのを試してみたいと思ったんだ」
 「!」

 ……なるほど、それは確かに面白いかもしれない。
 ただ、それは本当に『俺が知りたい』と思わなければ浮かんでこないと思うので、知りたいこと次第だろう。

 しかし、恐らくその情報は一致しているはず。

 「襲撃者のこと、ですね?」
 「うむ。さすがに話は早いか。そうだ、もしあらゆる知識が詰まっているというのであれば可能性はあると思わないか?」
 「承知しました。すぐにでも……」
 「まあ、今日のところは話だけだ。城で過ごすようになれば機会はあるだろう」
 
 と、収納魔法を使おうとしたが止められた。
 冷や汗をかいているところを見ると、なんだかんだで『ブック・オブ・アカシック』の存在は気味が悪いと思っているのかもしれない。

 まあ、不幸を呼ぶ本と言われていればそれも致し方のないことだ。
 そう思いながら胸中で笑っていると、ラッドが立ち上がり俺の横で手を伸ばして来た。

 「それじゃ改めてよろしく頼むよアル!」
 「ったく、元気になって」
 「ルーナちゃんもよろしくね!」
 「はーい!」

 ルーナは片手を上げて返事をしてにこっと笑う。
 
 「可愛いね、僕の妹は歳が近いからこう小さい子は見たことがないんだよね。ルーク君は……寝ちゃってるか」
 「まあ、退屈だからなあ」
 「アル、退屈とはなんだ?」
 「あ、やば……」
 「ふふ、口は災いの元だね、アル?」

 ゼルガイド父さんが腕組みをして片目を瞑って俺に苦言を呈し、カーネリア母さんが笑う。
 そこでラッドが思い出したかのように国王へ言う。

 「そうだ父上、エリベール様をお呼びしなくていいんですか?」
 「あ!? そうだったな」
 「エリベール様がどうして? 帰ったのではなかったのですか?」

 エリベールって誰だ?
 ゼルガイド父さんが不思議そうに尋ねている間に、ラッドが部屋を出て呼びに行く。
 
 「うむ、その、アルに会ってみたいというのでな」
 「俺?」
 「アルにいちゃ……ねむい……」
 「はいはい、寝ていいからなルーナ」

 急に話を振られてきょとんとしていると――

 「お連れしました!」
 「申し訳ない、エリベール様。こちらの話は終わりましたので、どうぞ」
 「ありがとうございます、フォルネリオ様」
 「あ」

 国王の名前はフォルネリオというのか……いや、それよりもエリベール様だ。
 目の前に現れた人はあの時、俺の傷を治してくれた女の子だった。
感想 479

あなたにおすすめの小説

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

26番目の王子に転生しました。今生こそは健康に大地を駆け回れる身体に成りたいです。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー。男はずっと我慢の人生を歩んできた。先天的なファロー四徴症という心疾患によって、物心つく前に大手術をしなければいけなかった。手術は成功したものの、術後の遺残症や続発症により厳しい運動制限や生活習慣制限を課せられる人生だった。激しい運動どころか、体育の授業すら見学するしかなかった。大好きな犬や猫を飼いたくても、「人獣共通感染症」や怪我が怖くてペットが飼えなかった。その分勉強に打ち込み、色々な資格を散り、知識も蓄えることはできた。それでも、自分が本当に欲しいものは全て諦めなければいいけない人生だった。だが、気が付けば異世界に転生していた。代償のような異世界の人生を思いっきり楽しもうと考えながら7年の月日が過ぎて……