前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。

八神 凪

文字の大きさ
54 / 258
波乱の学校生活

51.囲まれるアル


 「……なんで」
 「なぜ俺を見て嫌そうな顔をするんだ! 失礼じゃないか!」
 「そりゃ、ラッドのことは聞いていたけどお前のことは聞いてないからな」
 「なにおう……!」
 「まあまあ、一人も二人も変わらないよ! ミーア先生よろしくお願いします」
 「はい、またよろしくねラッド君。イワン君も」

 話し合いから数日。
 いわゆる新学期は始まっていたが、手続きやらなんやらで城でうける授業開始が遅れていた。
 
 ま、それはいいとしてまさかイワンまで一緒に居るとは思わなかった。
 あの時、ラッドを襲撃者から守ろうとした功績で我儘をひとつ聞いてもらった形らしい。

 ちなみに勉強は城の一部屋を使い、剣や魔法はゼルガイド父さん達、騎士が使う訓練場の一角を使うことになっている。
 
 「いやあ、またアルと勉強できて嬉しいよ」
 「なにがそんなに嬉しいんだよ、男同士で。」
 「お前、ラッド様に向かってその言い方はなんだ!」
 「あ? 魔法教えないぞ」
 「ぐぬぬ……」

 ま、飽きないのはいいかもな?
 そんなわけで昼は授業を行い、その日のカリキュラムが終わったら帰ってもいいし、自主訓練をしてもいい、という一日の流れが出来上がっていた。

 とりあえず初日を終え、訓練場で汗を拭いていると澄んだ声が聞こえて来る。

 「アル、お疲れ様」
 「エリベール様じゃないですか、もう戻って来たんですか?」
 
 声の主は小さな巨人……もとい小さな王女、エリベールだった。
 あれから一度大森林の向こうにあるという国へ戻ったのだが、どうやら戻ってきたようだ。

 「エ、エリベール様!! ご、機嫌麗しくぅぅ!」
 「来ていたんですね」
 
 目に見えて狼狽えているイワンに、余裕のラッド。対王族なら任せておこうと顔を拭っていると、俺の前に来てエリベールが口を開く。

 「ええ! 早くアルに会いたかったもの!」
 「ぶっ!?」

 「おお……ゼルガイド団長の息子、やるなあ……」
 「女王にあそこまで言わせるとは……子供のくせに……!」
 「玉の輿か。羨ましいな」

 エリベールのとんでも発言に少し離れていた騎士達がニヤニヤと笑いながら口をそろえてなにやら話していた。
 俺は口に含んだ水を噴きだしせき込んでいると、エリベールがサッと避ける。

 「きゃあ!? 汚いです!」
 「お前なに言いだしてるの!?」
 「お前こそエリベール様をお前呼ばわりとはどういう了見だ!?」
 「ええい、うっとうしい! てい!」
 「おうっ!?」

 とりあえず掴みかかって来たイワンを投げ捨ててやると、エリベールが首を傾げながら俺達に言う。

 「? アルとは本を読む約束をしていましたから、急がないとと思いまして」
 「あー、うん、そうだよな」
 「ぷぷ……」

 笑うなラッド。
 女王とはいえ、まだ12歳の子供だし、立場を考えても恋愛感情で言ったわけではないに決まっているのだ。
 だけど可愛い子に『早く会いたかった』など言われたらにんともかんとも……

 「訓練は終わりですか? それならお部屋に行きましょう」
 「汗臭いから近づくなって……」
 「気にしませんよ? みんなを守るために訓練をしているのでしょう、それは誇ることです」
 「……」

 みんなのため、か。
 どうだろうな。

 「ラッドは?」
 「僕は遠慮しておくね! お邪魔になりそうだし!」
 「いらん気を遣うな、いいぞ別に。その、なんだ、ラッドがエリベール様と結婚する可能性もあるだろうし」
 「敬語はいりませんわよ」
 「うーん、僕は他の貴族とかになるかな? 妹が娶るより、僕が国王になった方がいいでしょ、多分。だから婿にはなれないんだ」

 おのれラッド。こういう時はペラペラと口を開くんだな……。それにしても10歳で結構しっかり認識しているもんだなと、それはそれで感心する。

 しかし、二人きりというのも気まずいので、
 
 「イワンはどうだ? この後暇なら――」
 「恐れ多い……!! 失礼します!」
 「あ、おい!?」

 俺が最後まで言うのを聞かず、脱兎のごとく逃げ出した。
 あいつ、エリベールのこと好きそうなのに。
 うまく行ったら親父さん喜ぶと思うけどなあ……

 「それじゃラッド様、アルを借りますね」
 「うん! また!」
 「おおおおおい……」
 「~♪」

 俺はエリベールに引きずられて宛がわれている部屋へと向かう。
 とりあえず抗うのを止めてエリベールの横へ並んで歩くことにシフトチェンジした。

 「あら……」
 「流石に女の子に引っ張られるには恥ずかしいしな。……さて、なにかわかるといいけど」
 「……そうですわね。せめてお母様が亡くなるまでにはなんとかしたいです」
 「いつエリベール様が死ぬか分からないってのが難儀だな。子供を作るには早いし」
 「こ、子供!? ……え、ええ、そうですわね」

 俺の袖をぎゅっと掴んで上ずった声を出す。
 不安なのだろう、いつ死ぬか分からないのであれば俺だって怖い。
 ちょっと言い過ぎたかと思っていると、リグレットの声が響いた。

 <アル様、エリベール様は無理かもしれませんが、お母様は再生の左腕セラフィムで助けられるのでは?>
 「あ!」
 「ひゃん!?」
 「あ、ごめん」

 確かに、ただの病気なら治せるか?
 母親が生存していても元の父親の血は残せていないので、そこは微妙なライン。
 だけど、エリベールは嬉しいだろう。実の母親が生き残るのは。

 ……俺は前世も今世も失くしてしまったから気持ちは痛いほどわかる。

 「よし」
 「どうしましたか?」
 「いや、なんでもない。その内エリベールの国へ行ってみたいと思って」
 「まあ、もちろんご招待しますわ! とりあえず今は『ブック・オブ・アカシック』を」
 「オッケー、それじゃ出すよ」

 俺は収納魔法から本を取り出し、エリベールの知りたい情報を聞くことにした。
 
 
感想 479

あなたにおすすめの小説

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

26番目の王子に転生しました。今生こそは健康に大地を駆け回れる身体に成りたいです。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー。男はずっと我慢の人生を歩んできた。先天的なファロー四徴症という心疾患によって、物心つく前に大手術をしなければいけなかった。手術は成功したものの、術後の遺残症や続発症により厳しい運動制限や生活習慣制限を課せられる人生だった。激しい運動どころか、体育の授業すら見学するしかなかった。大好きな犬や猫を飼いたくても、「人獣共通感染症」や怪我が怖くてペットが飼えなかった。その分勉強に打ち込み、色々な資格を散り、知識も蓄えることはできた。それでも、自分が本当に欲しいものは全て諦めなければいいけない人生だった。だが、気が付けば異世界に転生していた。代償のような異世界の人生を思いっきり楽しもうと考えながら7年の月日が過ぎて……