55 / 258
波乱の学校生活
52.エリベール様
「これが……」
「ああ、『ブック・オブ・アカシック』だ。読んでみるか?」
「は、はい……ちょっと怖いですけど」
不幸を呼ぶ本だなんて呼ばれている代物なのでエリベールは恐る恐る手に取る。
ちなみにここは俺が寝泊まりする部屋。
その隔離された空間で美少女と二人きりなシチュエーションに、不幸だとは思えないと一瞬考えてしまう。
……ま、両親を惨殺されているからそれ以上の不幸ってのが考えにくいというだけだが。
そんなことを考えていると、エリベールはパラパラとめくっていく。
俺から見えるのは魔法の応用編といった当たり障りのない知識ばかり。
「……普通の本ですね」
「だと思うだろ? でも例えばこのページを……」
さして特筆すべき点もない、ビギナークラスの魔法を記したページを開き、俺は本を掴んだまま思い浮かべる。
すると――
「あ!? イエーナ鳥のオレンジソテーのレシピと作り方が出てきました!?」
「と、まあこんな感じで俺が欲しいと思った情報に書き換わるんだ。後半は白紙ばかりだからそこを使おうと思う」
「すごいです!」
「ちょ、近いって」
いきなり抱き着いてきたので俺は慌ててベッドの端へ寄る。
きょとんとした顔のエリベールが一瞬首を傾げた後、にやりと笑い、スッと迫ってきた。
「ふふ、照れているんですかー?」
「違う。女王に対して恐れ多いだけ」
「えー、そうですか? じゃあこうしたらどうです!」
「うわあ!?」
何が楽しいのか、エリベールは俺をベッドに転がし上に乗って来た。
勝ち誇ったような顔で腰に手を当てて俺に言う。
「ほら、ドキドキしませんか?」
「違う意味でドキドキするよ……ほら、早く降りてくれ。女王様がはしたないよ」
「むう」
なにかが不満らしいお姫様。
力づくで対処するのは簡単だけど、どうしようか考えていると……
「アル、授業終わったみたいだな。一緒に帰――」
「「……」」
「すまん、気が利かない父さんで……俺は応援しているからな!」
「ま、待ってゼルガイド父さん! 誤解だ! エリベールを止めてくれ!」
「カーネリアに報告だ……!!」
俺の叫びは届かず、不穏な言葉を残してゼルガイド父さんは扉を閉めた。
いや、息子が襲われていたら助けるか、恐れ多いとか言って拳骨ものだろう!?
しかし俺はそこで見てしまう。
「……あ!」
扉が、閉じる、瞬間、向こう側に、居たのは、ラッド、だった……
なんかサウンドノベルゲームの犯人を見つけた時みたいな言葉が脳裏をよぎり、俺はエリベールをベッドに転がす。
「あいつ……!」
「あん!? アル、どうしたんですか?」
「ラッドをとっちめる!」
「ええ? ……どこにもいませんけど」
「逃げ足は速いな相変わらず……」
扉を開けてエリベールと廊下を見渡すがそこには誰もいなかった。
「くそ、後で問い詰めてやる……」
「ふふ、仲がいいんですね」
「そういう訳じゃないよ。それより、早いところ情報を引き出せるか試してみよう」
「そうですね、ごめんなさい。同年代の子と話す機会がないのではしゃいでしまいましたわ」
「……まあ、いいけどさ」
笑顔で舌を出すエリベールから目を背け本を手に椅子へ座る。
いつ死ぬか分からないとは思えないほど元気だし、それが逆に不安でもある。
それを見せないように振舞っているのか、と。
前世で俺をサポートしてくれた怜香。
あいつも最後の最後で病気に犯されていることを告白したが、それまでは微塵もそんな様子は無かったのに。
……それを覆すため、俺は本を開く。
「情報は」
「この異常ともいえる短命の理由。それを」
「わかった」
目を瞑り、本を持つ手に集中する。
その時、俺のそでをギュッと、エリベールが掴む。
震えているな。
……できれば、なんとかしてやりたいが。
そんな俺の願いに応えるように、白紙のページが埋まっていく――
◆ ◇ ◆
「いい雰囲気でしたね!」
「ですね、ラッド王子のおかげでいいシーンが見られました」
「はい! これで二人がくっつけば、少なくともこの大陸にしばらくは残ってくれるでしょう。それでは僕はこれで!」
「……だと、いいんですがね」
ラッド王子に促されてアルの様子を見に行ったところ、エリベール王女と仲良くやっているのを見ることができた。
王子としてはアルは凄いやつで、傍に置いておきたい人間の一人だという。もしエリベール王女と結婚、もしくは婚約でもしてくれればと思い世話を焼きたいらしい。
確かにそうすればアルはこの大陸から動けなくなるだろう。
俺だってそうしてもらいたい。
直接言ったことはないが、あいつは本当に俺の息子と思っている。
一生このまま暮らしてもらっても構わないし、ルーナが懐いているので血が繋がっていないアルと結婚させてもいいとすらとも。
だけどアルはどこか一歩引いていて、俺やカーネリアは名前を言ってからの『父さん』『母さん』だ。
もちろん、俺達夫婦を尊敬しているし言うこともよく聞いてくれる。
だが、今後のことを考えてか一生懸命大人であろうとしている気がしてならない。
強さはあの年にしてはかなりのもので、魔法を交えた戦いなら無詠唱で撃ってくるアル相手は稀にひやっとすることもある。
強いことはいいことだ。守りたいものを守ることができるし、仕事も取りやすい。
だけどアルはあくまでも復讐のために強くなりたい。
これはかなり危ういのだ。
特に比較対象が少ない今、自分はかなり強いと思い込んで無茶をするからな……。
そういう調子に乗ったヤツが死んだり、生涯寝たきりになったという例を俺は知っている。
「……なんとかならんもんか」
俺は屋敷に帰ってカーネリアにも相談するかと家路を急いだ――
「ああ、『ブック・オブ・アカシック』だ。読んでみるか?」
「は、はい……ちょっと怖いですけど」
不幸を呼ぶ本だなんて呼ばれている代物なのでエリベールは恐る恐る手に取る。
ちなみにここは俺が寝泊まりする部屋。
その隔離された空間で美少女と二人きりなシチュエーションに、不幸だとは思えないと一瞬考えてしまう。
……ま、両親を惨殺されているからそれ以上の不幸ってのが考えにくいというだけだが。
そんなことを考えていると、エリベールはパラパラとめくっていく。
俺から見えるのは魔法の応用編といった当たり障りのない知識ばかり。
「……普通の本ですね」
「だと思うだろ? でも例えばこのページを……」
さして特筆すべき点もない、ビギナークラスの魔法を記したページを開き、俺は本を掴んだまま思い浮かべる。
すると――
「あ!? イエーナ鳥のオレンジソテーのレシピと作り方が出てきました!?」
「と、まあこんな感じで俺が欲しいと思った情報に書き換わるんだ。後半は白紙ばかりだからそこを使おうと思う」
「すごいです!」
「ちょ、近いって」
いきなり抱き着いてきたので俺は慌ててベッドの端へ寄る。
きょとんとした顔のエリベールが一瞬首を傾げた後、にやりと笑い、スッと迫ってきた。
「ふふ、照れているんですかー?」
「違う。女王に対して恐れ多いだけ」
「えー、そうですか? じゃあこうしたらどうです!」
「うわあ!?」
何が楽しいのか、エリベールは俺をベッドに転がし上に乗って来た。
勝ち誇ったような顔で腰に手を当てて俺に言う。
「ほら、ドキドキしませんか?」
「違う意味でドキドキするよ……ほら、早く降りてくれ。女王様がはしたないよ」
「むう」
なにかが不満らしいお姫様。
力づくで対処するのは簡単だけど、どうしようか考えていると……
「アル、授業終わったみたいだな。一緒に帰――」
「「……」」
「すまん、気が利かない父さんで……俺は応援しているからな!」
「ま、待ってゼルガイド父さん! 誤解だ! エリベールを止めてくれ!」
「カーネリアに報告だ……!!」
俺の叫びは届かず、不穏な言葉を残してゼルガイド父さんは扉を閉めた。
いや、息子が襲われていたら助けるか、恐れ多いとか言って拳骨ものだろう!?
しかし俺はそこで見てしまう。
「……あ!」
扉が、閉じる、瞬間、向こう側に、居たのは、ラッド、だった……
なんかサウンドノベルゲームの犯人を見つけた時みたいな言葉が脳裏をよぎり、俺はエリベールをベッドに転がす。
「あいつ……!」
「あん!? アル、どうしたんですか?」
「ラッドをとっちめる!」
「ええ? ……どこにもいませんけど」
「逃げ足は速いな相変わらず……」
扉を開けてエリベールと廊下を見渡すがそこには誰もいなかった。
「くそ、後で問い詰めてやる……」
「ふふ、仲がいいんですね」
「そういう訳じゃないよ。それより、早いところ情報を引き出せるか試してみよう」
「そうですね、ごめんなさい。同年代の子と話す機会がないのではしゃいでしまいましたわ」
「……まあ、いいけどさ」
笑顔で舌を出すエリベールから目を背け本を手に椅子へ座る。
いつ死ぬか分からないとは思えないほど元気だし、それが逆に不安でもある。
それを見せないように振舞っているのか、と。
前世で俺をサポートしてくれた怜香。
あいつも最後の最後で病気に犯されていることを告白したが、それまでは微塵もそんな様子は無かったのに。
……それを覆すため、俺は本を開く。
「情報は」
「この異常ともいえる短命の理由。それを」
「わかった」
目を瞑り、本を持つ手に集中する。
その時、俺のそでをギュッと、エリベールが掴む。
震えているな。
……できれば、なんとかしてやりたいが。
そんな俺の願いに応えるように、白紙のページが埋まっていく――
◆ ◇ ◆
「いい雰囲気でしたね!」
「ですね、ラッド王子のおかげでいいシーンが見られました」
「はい! これで二人がくっつけば、少なくともこの大陸にしばらくは残ってくれるでしょう。それでは僕はこれで!」
「……だと、いいんですがね」
ラッド王子に促されてアルの様子を見に行ったところ、エリベール王女と仲良くやっているのを見ることができた。
王子としてはアルは凄いやつで、傍に置いておきたい人間の一人だという。もしエリベール王女と結婚、もしくは婚約でもしてくれればと思い世話を焼きたいらしい。
確かにそうすればアルはこの大陸から動けなくなるだろう。
俺だってそうしてもらいたい。
直接言ったことはないが、あいつは本当に俺の息子と思っている。
一生このまま暮らしてもらっても構わないし、ルーナが懐いているので血が繋がっていないアルと結婚させてもいいとすらとも。
だけどアルはどこか一歩引いていて、俺やカーネリアは名前を言ってからの『父さん』『母さん』だ。
もちろん、俺達夫婦を尊敬しているし言うこともよく聞いてくれる。
だが、今後のことを考えてか一生懸命大人であろうとしている気がしてならない。
強さはあの年にしてはかなりのもので、魔法を交えた戦いなら無詠唱で撃ってくるアル相手は稀にひやっとすることもある。
強いことはいいことだ。守りたいものを守ることができるし、仕事も取りやすい。
だけどアルはあくまでも復讐のために強くなりたい。
これはかなり危ういのだ。
特に比較対象が少ない今、自分はかなり強いと思い込んで無茶をするからな……。
そういう調子に乗ったヤツが死んだり、生涯寝たきりになったという例を俺は知っている。
「……なんとかならんもんか」
俺は屋敷に帰ってカーネリアにも相談するかと家路を急いだ――
あなたにおすすめの小説
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
26番目の王子に転生しました。今生こそは健康に大地を駆け回れる身体に成りたいです。
克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー。男はずっと我慢の人生を歩んできた。先天的なファロー四徴症という心疾患によって、物心つく前に大手術をしなければいけなかった。手術は成功したものの、術後の遺残症や続発症により厳しい運動制限や生活習慣制限を課せられる人生だった。激しい運動どころか、体育の授業すら見学するしかなかった。大好きな犬や猫を飼いたくても、「人獣共通感染症」や怪我が怖くてペットが飼えなかった。その分勉強に打ち込み、色々な資格を散り、知識も蓄えることはできた。それでも、自分が本当に欲しいものは全て諦めなければいいけない人生だった。だが、気が付けば異世界に転生していた。代償のような異世界の人生を思いっきり楽しもうと考えながら7年の月日が過ぎて……