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第5話 オナンの末裔が妻の怒りを買うという話

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 ――オナンそのたねおのれのものとならざるをりたればあにつまところにいりしときあにをえせしめざらんためにらしたり(創世記38.9)

 夜、缶ビールを飲みながらパソコンで賃貸物件の広告を眺めていると、理佐がテーブルとのあいだに割り込んで、無理矢理オレの膝の上に乗ってきた。猫じゃあるまいし。
 
 「ねぇねぇ、コースケ見て」

 後ろ手になんか隠し持って、すごく嬉しそうな顔でオレを見上げている。Tシャツの首回りの隙間から、ピンク色の乳首が見える。

「ん、どした?」

 まるで子どもみたいだが、ここは素直に反応するところかな。
 
「じゃーん」

 学生証だ。中野理佐って書いてある。
 
「お、大学に届けを出したのか」
「そ。裏も見て、ホラ。住所ここになってるよ」
「ふーん。こうやって見ると……改めてオレたち夫婦になった感あるよな」

 とオレは、目の前にあるオッパイを軽く揉みながら、理佐にキスして言った。
 
「これもらった時、学生課の窓口でおめでとうって言われて、ちょっと泣いちゃった」
「なんで?」
「さあ、なんでだろ……。こういうささやかな結婚生活に憧れてたからかな。毎日掃除と洗濯して、お買い物に行ってご飯をつくって。旦那さんにチューしてもらって、いっぱい好きでいっぱいエッチして、子どもができて」
「その相手がオレみたいなオッサンでほんとに良かったワケ?」
「いいに決まってんじゃん。むしろコースケにアタシの若さをあげられて嬉しい」
「今さらだけど、オレ、非モテの非イケメンだけど」
「非モテって、アタシにモテてるからいいじゃん。アタシはコースケと一緒にいるだけで幸せだし、それに、アタシの好きのポイントは顔じゃないし」
「じゃあ、何が好きのポイント?」
「うーん……」

 と言いながら理佐はオレのものを取り出すと、ジュッポリいった。
 
「決め手はそれか?」
「決め手じゃないけど重要な要素」

 じゅぽじゅぽ……ふぐふぐ……。

「あれぇ? なんか反応がイマイチですけど?」

 たまに上目遣いするのがたまらん可愛い。

「すまん……さっき理佐がシャワーしてる間にエロサイト見ながら1発抜いた」
「えーっ。こんなに可愛い奥さんの中で遠慮なく出せるのに、なんで?」
「ホラ、となりのアラサー女子……」
「え……おとなりさんとやったの?」
「違わいっ。ギシアンの件で苦情が来ただろ? 毎晩だとまた苦情が……」
「いいじゃん。夫婦の営みなんて、誰に文句言われる筋合いもないんだから」
「そうかな」
「そうよ。セーシくんを無駄にしてもったいない。外に出すくらいならアタシが飲む」
「じゃあ、明日からは中で。とは言うものの、なんだかんだ言ってもやりにくいから、引っ越そうかなって物件見てたんだけど」
「となりのアラサーが原因なら引っ越すのはやめようよ。なんかムカつく」
「でもこのままいくと直接文句言ってくるかもよ」
「そんなの、アナタもご一緒にどうぞって言ってやる」
「え……3P……?」
「3Pしたことある?」
「ないわっ。非モテがそんなのあるワケない。理佐はあるのか?」

 理佐はうふふ……と言ってジュッポリ咥えた。

「コースケ、喉の奥までいって超元気になってるんですけど」
「いや、これは……」
「アタシが3Pしてるとこ想像した?」
「べ、べつに……」
「じつは学校跡でやってた時に……2人連れのおじさんが来て、2本一度に入らないかって。で、試してみたんだ」
「……」
「そしたら超大っきくて、1本でも痛いくらいギチギチで、結局入らなくて。アタシ好きじゃない人とお口は嫌なんで、仕方ないから前と後ろ同時に……」
「……」
「あれ? 萎えちゃったのね」
「だって、なんか……」
「今の全部つくり話だし。後ろは処女よ。やっぱコースケはヤキモチのところ、もっと慣れた方がいいよ。この状態だと、アタシの過去のこといろいろと話すのは、まだ早そうだね」

 うん。オレにはそういう耐性がないから、たぶんすぐには無理だな。AV女優とか風俗嬢とかを彼女にもってる人もいるんだろうけど、どれだけ鍛わった精神してるのか知りたい。たとえ理佐がその時その相手に気持ちを持ってなかったとしても、セックスすれば感じるだろうし、そう考えるとオレには当分無理だわ。


 結局その夜はセックスなしで翌朝を迎えた。
 その日は土曜なので、理佐と一緒に遅くまで寝てようと思っていたら、玄関のチャイムが鳴った。

「誰だろうね、まだ7時半じゃないか」
「アタシ出ようか?」

 理佐がノーブラにタンクトップと短パンで出た。いや待て、それ、相手が男ならマズいだろ。

「どうもありがとうございます」

 という理佐の声が聞こえる。幸い、相手は女性のようだ。
 で、しばらく何か話していたが、理佐が帰ってきてオレの顔を見るなり、

「となりのアラサーが来た」
「え?」
「たぶん偵察。何が入ってるか分からないレジ袋を持ってきて『落ちてましたけどお宅のでは?』とか言ってたけど、あれはきっと中身はゴミ。アタシがどんな女かを確認しに来たっぽいわ」
「何のために?」
「となりのサラリーマンとギシアンやってる相手がどんな女か、興味あるんでしょ」
「変わった人だな」
「ビンの底みたいなメガネかけてたけど、わりと綺麗な人ね。巨乳だし。あれはFかGあるかも」
「理佐はいくつ?」
「アタシはE65」
「分からん。それってどれくらい?」
「コースケはあんまりオッパイに興味ないでしょ」
「なくはない」
「ぜったいウソ」

 とか言いながらまったりしてたら、またチャイムが鳴った。

「もう、誰だよ。今度はオレが出るわ」

 オレはTシャツを着て短パンを履くと、玄関まで行ってドアを開けた。

「どなた?」
「あ、警察の者ですがね。あなたが女子高生とワイセツなことをしているという情報がありまして」
「はぁ?」

 たしかに。
 オレも分からなかったくらいだから、理佐は女子高生と間違われてもおかしくないな。
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