The Three copper coin's Tawdry Tales 「異邦人の書」

まるこめX

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混血の放浪者 6-1

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シェイガンの疲労は溜まっていた。息も荒くなり、増えるばかりの異形を相手にするのにも限界が近づいていた。一人では既に迎えていた限界であったが。ナジカのクレリックが支えてくれていた。彼もまた、幼いながら健闘している、だが根が挙がるのも時間の問題だった。

「……ヘヘヘッ、冗談キツいぜ……やれやれ、まだやるってのかい?一体どれだけ居るのか、数えるのもとっくに飽きたってのによォ……」

「シェイガンさん……!も、もうぼくも術が……」

クレリックとして覚醒したてのダヤンは、その力が尽きるのも早かった。それをカバーしていたのは、『4つ爪』としての意地だった。

「そうかい……。いや……よく頑張ったよおまえは……くそッ、また来やがった……」

幾つ屍を築き上げたのか、シェイガン達の周囲にはおびただしい数の異形の亡骸が積み上がって居た。だがその向こうからまた異形は坂を登ってくるのだ。疲労で短剣を握る手が震えている。短剣使いはぎゅっとそれを握りなおし、飛び掛かってくる異形達を迎え撃った。

「くそッ……しくじった、オレとしたことがッ!!」

一度に相手にするのは4体、両手、両足。それぞれが飛び掛かる異形を払いのける。だが続く5体目への対応は、体力が尽きた今、迅速に移す事ができなかったのだ。短剣の振り上げが間に合わない、目前に異形のその鋭い木の爪が襲い掛かる。

「どぅれぇいッ!!!!!」

それを振り払ったのは、なんとピックフォークであった。農耕器具であるそれが、力強く振り払われ短剣使いの窮地を救った。そこにすかさず、振りが間に合った短剣の一撃をお見舞いした。

「……おいおい、どうしたよオッサン達よ。見物しておいてくれてよかったのによォ」

シェイガンとダヤンの元に集まったのは、聖域に逃げ込んでいた村人達だ。そして何よりも、年長の3人組が二人の窮地を助けたのであった。シェイガンは内心に浮かぶ喜びと、驚きを軽口で覆い隠したが、その口元は思わず笑っていた。

「フンッ……!余所者とカマルの子せがればかりに、頼っちゃおれん。ここはおれ達の村だ、文句は言わせんぞ……おれ達にも戦わせろッ!」

「みんな……!」

思いもよらない助太刀に、二人はその限界を引き上げた。もう少しだけ、あと少し…耐えて見せる事ができる。
「それに、おれ達はおっさんじゃない!」

「ダロ!」

「ヤム!」

「ロナムだ!覚えておけ余所者!おれたちゃ、この村で一番の木工師だ!」

「あいよ、ダロヤムロナム。なんだか頼もしい響きだぜ……」

「「「まとめて呼ぶな!」」」「あと『さん』をつけろ!年長者には敬意を払え!」

「いちいち、注文がうるさいねェ……」

援軍のおかげで、防衛線はしばらく持った。経験が少ない村人達は、できる限りの防衛に努め。怪我をすれば後ろに下がり交代する。その戦法で持久戦を乗り越えようとした。

だがそれもしばらくして限界が来る、陽は登りきった。

「……よぉく見えるね、まだまだウジャウジャいやがる……同じメニューばかりじゃあ、飽きるってもんだぜ……」

「ロナムさん、下がって……!手当はぼくが……」

「ちくしょうッ!これしきの事でッ!あいてて……もっとゆっくり運んでくれ……」

「だらしないねぇ!ダヤンだってがんばってるってのにさ!きばりな!」

「そうよ!いつも酔っぱらってるから、いざって時へこたれるのよ!」

いつの間にか参戦した、女主人とその娘が村人達を叱咤する、だがそれも時間稼ぎにすぎない……。

「おじさん……いや……大丈夫、ぜったい、おじさんが帰るまで。ぼくたちがこの村を守るんだッ!!」

ダヤンはハッとした、ナジカの祠に振り返ってわが目を疑った。

アーチから見えるナジカの祠が、にわかにその輝きを取り戻しているのだ。

「そうだ!おれたちにはナジカ様の加護がついている!負けるわけがねえ!こんな所でへこたれねえぞ……!あれ……なんでこんな事を忘れていたんだ……?」

それは、ハッバンの術が解けた事により、村人達がナジカへの信仰心を取り戻したのだ。皆口々に戸惑いを覚えていた、この村はナジカ信仰が中心にあり、その恩恵で村が発展したのだ。自然への恵み、家族とその人々の安寧と繁栄、それを可能にしてきたのは、ナジカの加護があってこそだった事を思い出したのだ。

「おい……あれを見ろッ……!」

村人達もその様子に気が付いた。ナジカの祠……それに祀られた石像が輝きを取り戻した。信仰を取り戻した聖域は、一気にその範囲を拡大しはじめた。

聖域は、迫る異形達を押しのけ、それぞれを灰塵と期していった。一気にそれは加速度的に広がり、その大群をすべて無に帰したのである。

その灰は、不毛なる大地のバランスを取り戻させ、聖域が広がった跡には、草木が生い茂って居た。荒野は緑の大地を取り戻しあのである。

「おいおい……なんてこった……旦那ッ、アンタやりやがったのか……!」

シェイガンは唖然として、そして歓喜した。村人達の歓声はそれにも負けないほどだった。その喜びに、皆が抱き合い乗り越えた事を祝福した。その祝福の歓喜はシェイガンとダヤンを巻き込み、あの三人組がダヤンを掲げ上げ、称えたのだ。

「まって!おじさん達!あぶないよッうわッ……やったんだ、おじさん、ぼくたちやったんだ!」

放浪者は、ポータルを潜り抜け、状況を把握した。そして彼らが成し遂げた事を確信したのだ。だが、混乱もあった。

「おい、アンタ!アンタがやってくれたんだってな!この村を……窮地から救ってくれたんだ!あんたは村の恩人だッ!」

放浪者は、目をぱちくりとさせた。歩くのもやっとだったが、その様子を気遣って村人達は肩を貸し、放浪者を支えた。力が抜けた放浪者はその場に座り込んだ。疲労感が一気に襲ってきたのだ、静かに下ろされた彼は、ラナと抱き合うダヤンの姿を見て、安堵の笑みを浮かべた。

「おじさんッ……!」

放浪者の姿に気付いたダヤンは、感極まり、こちらの状態もおかまいなしに、胸に飛び込んで来た。その勢いに放浪者は、痛みがぶり返し顔を歪めたが、そのままにさせることにした。代わりにその頭を撫でてやる事で想いに応えたのである。

「見ないうちに成長したな、ダヤン」

「……そんなに時間は経ってないよ」

「そうだな。だが、おまえは成長したよ、ダヤン」

少年はまるで父親に褒められたような気分だった。初めての事ではあったが、どこか懐かしく、そしてこの上ない喜びだった。

「ハッ……まるで親子みてェだな、旦那。……どうだい、気分は」

「……悪くない」

シェイガンはその言葉に満足し、静かに笑って見せた。彼なりの労いなのだろう。放浪者は短剣使いに目礼を向けた。それもまた労いとして。

放浪者は、意識が遠くに去っていくのを感じた。一気に得た安堵が、放浪者の体に休息を与えたのだった。その様子に気付いたダヤンは焦りの声を挙げた。

「どうしたの?おじさんッ……??!!おじさんッ……!!」

「大丈夫よ、ダヤン……眠っただけよ」

「……ったく、しょうがねェな。手を貸してやるよ旦那、……あんたは良い夢を見るべきだ」

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