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61話 一期生vs二期生⑥

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 このスタジオは入口の扉から見て左奥に、六畳ほどの範囲でタイルカーペットが敷かれている。アナログゲームのコラボなどで使われる場所だ。
 あたしとミミちゃんは水分補給を済ませた後、そこで軽く体をほぐしている。

「隙あり!」

 うーんと両腕を真上に伸ばすミミちゃんの背後に忍び寄り、ガバッと抱き着く。

「きゃっ」

「柔軟運動は大切だよね~」

 シャンプーとミミちゃん由来のいい匂いを嗅ぎながら、目一杯に広げた指を不規則に動かしておっぱいの感触を楽しむ。

「相変わらず仲いいねー」

「が、眼福です……っ」

 少し離れたところで水分補給中のシャテーニュ先輩とエリナ先輩が、微笑ましそうにこちらを見ている。
 そうこうしているうちに休憩時間が終わり、あたしたちは再びテーブルに向かう。

「さぁさぁ、いよいよ最後の対決が始まるよ~! 三つ目の種目は――ジェスチャー対決! スタッフさんから出されるお題を体で表現して、パートナーのお題を当てられたらポイントゲット! 解答権は各問題につき一度きり! 先に2P獲得したチームの勝ちだから、早ければ二問目で決着ってことになるね!」

 出題はスタッフさんからお題を記したメモを渡されるという、極めてアナログな方法で行われる。

「それではさっそく、第一問! いまスタッフさんから、シャテーニュ先輩とミミちゃんにお題のメモ用紙が渡されたよ~」

 お題を確認した二人は、席を立って先ほどストレッチするのに使っていた場所へ移動する。
 あたしはミミちゃん、エリナ先輩はシャテーニュ先輩に視線を注ぐ。

「ふふんっ、これは簡単ね。招き猫よ!」

 エリナ先輩が得意げに答えを告げると、クイズ対決で使われたのと同じピンポーンというSEが響いた。

『早くて草』
『なにが起きてるのか分からないけど逆に面白い』
『エリナ様ナイス』

 3D配信ではないため、リスナーさんたちにはほとんど情報が伝わらない。
 なにかと不安もあったけど、コメント欄を見る限りだと心配なさそうだ。

「ミミちゃんは……四つん這いになってるってことは、動物だよね? うーん、なんだろう」

 無難なところで犬や猫、あえての馬やライオンという可能性もある。
 キリンに鹿に牛に猪、サイとかカバも有り得るし――って、何気にこれって難問じゃない?

「むむむ……ん?」

 四つん這いになったミミちゃんが少し身じろぎすると、そのちょっとした動きに伴って、おっぱいがぷるんっと揺れた。
 刹那、あたしの脳内に浮かんだ無数の選択肢はたった一つを除いて消滅する。

「分かった! 牛だ!」

 ブブーッ!
 明確に外れであることを示すSEが鳴り、ミミちゃんが残念そうな表情を浮かべて立ち上がった。

「犬ですよぅ……」

「そっちか~……」

「シャテーニュ、次にあんたが正解すればその時点でアタシたちの勝ちよ」

「頑張るよー」

 うなだれる二期生チームとは対照的に、早くも王手をかけた一期生チームには気力がみなぎっている。
 二人が席に戻ると、今度はあたしとエリナ先輩にお題のメモが渡された。
 二つ折りにされたメモの内側には、かわいらしい文字で『グラビアモデル』と書かれている。
 成人してもなお小学生と間違われるあたしに、果たして上手く表現できるのだろうか。

「ミミちゃん、任せたよ!」

「はい、必ず正解してみせますっ」

 ミミちゃんと拳をコツッと合わせ、あたしは席を立つ。
 こうなったら、持てる色気のすべてを出すだけだ。
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