恋愛、はじめました

ありきた

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2話 恋人つなぎ

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 昨日の夜は、遅くまで通話を楽しんだ。
 恋人になったから、というわけではないけど、やっぱり声を聞けるのは素直に嬉しい。

「つぐみさん、恋人つなぎって知ってますか?」

 一限目を終えた休み時間、廊下に出てつぐみさんと合流すると同時に問いかける。

「恋人つなぎ?」

 小首を傾げて頭に疑問符を浮かべ、聞き慣れない言葉を繰り返す。
 つぐみさんが恋愛に疎いのは知っているので、反応としては予想通り。

「手をつなぐときに、指を絡めるんです。えっと、こんな感じで――」

 手をつなぐのに許可を取るのも他人行儀かと思い、一抹の高揚感を抱きながらつぐみさんの手に触れる。
 わたしは常日頃からエッチなことを考えているし、友達にセクハラ発言をすることも多い。
誰に対しても敬語で話しているのは、無理やりにでも品性を加味しようとした結果だ。
 ただ、ボディタッチをするのは大好きな人だけと決めていた。
 実際に触れてみると、感動すら覚える。
 血が通っているんだと実感できる確かな温もり。乾燥しやすい季節でありながら瑞々しさを失わない、もちもちとした肌触り。
 手のひらの皮が少し分厚くなっているのは、日頃からバレー部の活動に全力を尽くしている証なのだろう。
 体の一部分に過ぎないはずなのに、わたしの心を惹き付けるには充分すぎるほどの魅力が詰まっている。

「美夢ちゃん、どうしたの?」

 心配そうな声にハッとなり、慌てて本来の目的を果たす。
 二人の手のひらを重ねて、指を絡める。
 決して複雑な行為ではないので、数秒とかからず恋人つなぎを実演できた。

「手をつなぐときは、恋人つなぎがいいなって思ったんです。つ、つぐみさんがよければ、ですけど……」

 嬉々として言い放ったものの、断られたらどうしようという不安から語尾が尻すぼみになってしまう。

「もちろんいいよ! 恋人つなぎかぁ、名前からして特別な感じがするね!」

 つぐみさんは絡めた指に軽く力を込め、わたしの手をキュッと握って笑顔を浮かべる。
 無邪気で純粋な表情はあまりに尊く、見惚れずにはいられない。
 かわいい。かわいすぎる。
 手を通じて鼓動が伝わっているんじゃないかと心配になるぐらい、胸が高鳴る。
 無情にも休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り、二言ほど交わしてから各々の教室に向かった。
 合える時間が少ないから、二人の仲が進展するのは決して速くない。
 それでも、少しずつだけど確実に進んでいる。
 ずっとこのままのペースかもしれないし、ふとしたきっかけで急激に濃密な関係となる可能性もある。
 この先のことを考えると、不安よりも期待の方が遥かに大きい。
 以前にも増してエッチな妄想が捗ってしまうのは、一種のイメトレということにしておこう。
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