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5話 やってみたいこと
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「つぐみさんは、恋人としてやってみたいことってありますか?」
いつも通り、つぐみさんと廊下で談笑中。大好きな人の隣にいられることの幸せを存分に楽しみながら、興味本位で質問をぶつける。
「恋人として、かぁ……うーん…………」
つぐみさんはあごに手を当て、真剣に悩んでいる。
彼女が恋愛というものを漠然と捉えているのは、もちろんわたしも承知の上だ。
だから、「よく分からない」と言われてもおかしくない。可能性は低くても、ちょっとした新発見があればいいなと思って訊ねてみた。
にもかかわらず、つぐみさんは即答で切り捨てず、傍目からでも容易に分かるほど真剣に考えてくれている。この事実だけで、胸に熱いものが込み上げてくる。
恋人を悩ませておいて幸せを感じるなんて、我ながら厄介な彼女だ。弁明させてもらえるなら、悩ませるのが目的じゃないということだけは、どうか分かってほしい。
「ジュースにストローを二本さして、一緒に飲むっていうのはどうかな? 小さい頃にマンガかなにかで見たんだけど、恋人じゃないとできないと思うし、美夢ちゃんとだったらやってみたい」
意外、と言えば失礼だろうか。想像以上に具体的な案を出してくれた。
そして、あまりに魅力的なその行為は、脳内に思い描いただけで気持ちが激しく昂ぶる。
「いいですねっ、機会があれば――いえ、ぜひとも機会を作って実現させたいですっ」
声のトーンが上がって少し早口になってしまうのも、無理はない。
今日の帰りにでもコンビニでストローを購入し、明日からカバンに常備しておこう。
「そうだ、美夢ちゃんはなにかないの? 美夢ちゃんが提案してくれることって新鮮だし、幸せな気持ちになれるから、いろいろ聞かせてほしいな」
「数え切れないほどありますね」
即答だった。
付き合い始めるより前、つぐみさんに恋をした瞬間から、宇宙と同じように願望が際限なく広がり続けている。
あと、さりげなく告げられた感想に歓喜せずにはいられない。わたしが望んだ行為でつぐみさんも幸せを感じてくれているのなら、感無量というか本望というか、とにかく嬉しい!
「人前で話しても問題ないような内容だと……は、裸で抱き合うなんて、どうでしょうか」
「は、裸でっ!?」
性欲旺盛でセクハラ発言常習犯のわたしとしては比較的ソフトな発想だけど、『恋人としてやってみたいこと』という前提で話しているだけに独特な生々しさがあり、声に出してみると思った以上に照れてしまう。
顔全体がカーッと熱くなるのを感じる。つぐみさんも顔が真っ赤だから、誰かが通りがかったら何事かと驚かれてしまうかもしれない。
「それ以上に過激なのもたくさんありますけど、さすがに人前では口に出せないです」
「は、裸で抱き合うより、過激なこと……っ」
失言だったと気付いたときには、すでに遅かった。
耐性のないつぐみさんは、耳まで紅潮してしまう。
わたしは少しでも冷まそうと、とっさに彼女の顔に手を伸ばす。
「ひぅっ、み、みみ、美夢ちゃんっ!?」
冬の寒さでひんやりしている両手を頬に当てたのに、冷めるどころか熱さが増した。
つぐみさんが動揺しているのを受けて冷静に状況を分析してみて、ハッとなる。
恋人同士、間近で向かい合い、頬に手を添える。なんでもないことのように見えて、けっこう大胆な行為なのでは?
「ご、ごめんなさい、ほっぺたを冷まそうと思って……つ、つぐみさんが嫌なら、すぐに離しますっ」
「ううん、嫌じゃないよっ。い、いきなりだったからビックリしちゃったけど、すごく嬉しい」
つぐみさんはそう言うと、はにかんだような笑顔を浮かべ、わたしの頬にそっと両手を添えてくれた。
ひんやりして気持ちいいのに、つぐみさんの手の感触が鮮明に伝わってきて、当然ながら目の前にはつぐみさんがいて、興奮のあまり体温の上昇が止まらない。
チャイムが鳴って慌てて教室に戻った後、余韻に浸りながら脳内で何度も思い返して幸福を噛み締める。
偶然の産物とはいえ、あれは紛れもなく『恋人としてやってみたいこと』の一つに数えられる行為だった。
いつも通り、つぐみさんと廊下で談笑中。大好きな人の隣にいられることの幸せを存分に楽しみながら、興味本位で質問をぶつける。
「恋人として、かぁ……うーん…………」
つぐみさんはあごに手を当て、真剣に悩んでいる。
彼女が恋愛というものを漠然と捉えているのは、もちろんわたしも承知の上だ。
だから、「よく分からない」と言われてもおかしくない。可能性は低くても、ちょっとした新発見があればいいなと思って訊ねてみた。
にもかかわらず、つぐみさんは即答で切り捨てず、傍目からでも容易に分かるほど真剣に考えてくれている。この事実だけで、胸に熱いものが込み上げてくる。
恋人を悩ませておいて幸せを感じるなんて、我ながら厄介な彼女だ。弁明させてもらえるなら、悩ませるのが目的じゃないということだけは、どうか分かってほしい。
「ジュースにストローを二本さして、一緒に飲むっていうのはどうかな? 小さい頃にマンガかなにかで見たんだけど、恋人じゃないとできないと思うし、美夢ちゃんとだったらやってみたい」
意外、と言えば失礼だろうか。想像以上に具体的な案を出してくれた。
そして、あまりに魅力的なその行為は、脳内に思い描いただけで気持ちが激しく昂ぶる。
「いいですねっ、機会があれば――いえ、ぜひとも機会を作って実現させたいですっ」
声のトーンが上がって少し早口になってしまうのも、無理はない。
今日の帰りにでもコンビニでストローを購入し、明日からカバンに常備しておこう。
「そうだ、美夢ちゃんはなにかないの? 美夢ちゃんが提案してくれることって新鮮だし、幸せな気持ちになれるから、いろいろ聞かせてほしいな」
「数え切れないほどありますね」
即答だった。
付き合い始めるより前、つぐみさんに恋をした瞬間から、宇宙と同じように願望が際限なく広がり続けている。
あと、さりげなく告げられた感想に歓喜せずにはいられない。わたしが望んだ行為でつぐみさんも幸せを感じてくれているのなら、感無量というか本望というか、とにかく嬉しい!
「人前で話しても問題ないような内容だと……は、裸で抱き合うなんて、どうでしょうか」
「は、裸でっ!?」
性欲旺盛でセクハラ発言常習犯のわたしとしては比較的ソフトな発想だけど、『恋人としてやってみたいこと』という前提で話しているだけに独特な生々しさがあり、声に出してみると思った以上に照れてしまう。
顔全体がカーッと熱くなるのを感じる。つぐみさんも顔が真っ赤だから、誰かが通りがかったら何事かと驚かれてしまうかもしれない。
「それ以上に過激なのもたくさんありますけど、さすがに人前では口に出せないです」
「は、裸で抱き合うより、過激なこと……っ」
失言だったと気付いたときには、すでに遅かった。
耐性のないつぐみさんは、耳まで紅潮してしまう。
わたしは少しでも冷まそうと、とっさに彼女の顔に手を伸ばす。
「ひぅっ、み、みみ、美夢ちゃんっ!?」
冬の寒さでひんやりしている両手を頬に当てたのに、冷めるどころか熱さが増した。
つぐみさんが動揺しているのを受けて冷静に状況を分析してみて、ハッとなる。
恋人同士、間近で向かい合い、頬に手を添える。なんでもないことのように見えて、けっこう大胆な行為なのでは?
「ご、ごめんなさい、ほっぺたを冷まそうと思って……つ、つぐみさんが嫌なら、すぐに離しますっ」
「ううん、嫌じゃないよっ。い、いきなりだったからビックリしちゃったけど、すごく嬉しい」
つぐみさんはそう言うと、はにかんだような笑顔を浮かべ、わたしの頬にそっと両手を添えてくれた。
ひんやりして気持ちいいのに、つぐみさんの手の感触が鮮明に伝わってきて、当然ながら目の前にはつぐみさんがいて、興奮のあまり体温の上昇が止まらない。
チャイムが鳴って慌てて教室に戻った後、余韻に浸りながら脳内で何度も思い返して幸福を噛み締める。
偶然の産物とはいえ、あれは紛れもなく『恋人としてやってみたいこと』の一つに数えられる行為だった。
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