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第1章
第124話《ドブネズミにお怒りの巧斗さん》
俺は遠目に総一郎の反応を見ながら、心の中で思わず身震いしてしまった。
『そうか…すずめが、ヤキモチを妬いてそんなことを…ククッ』
一方、総一郎はスマホの画面を見ながら、完全にご機嫌モードに入ったようで、ひなに対しても態度が明らかに柔らかくなっている。
『ひな、教えてくれてありがとう。酷い事を言われて辛かったな。すずめのことはもう気にしなくていい。鷹崎家の婚約者を傷つけた罰として、こっちから直接みっちりお仕置きしておいてやるからな。』
『総君…!えへへ。総君なら絶対僕の味方になってくれるって思ってた!ボッコボコにやっちゃって♫』
何故か目に見えて、すっかり余裕を取り戻したらしい総一郎は、キラキラと目を輝かせたひなの頭を優しく撫でながら、満足そうにクックと笑っていた。
「…下衆が。」
何処かから地を這うような怒りの声がして、ぶるっと背筋が凍る。
(なんだ今の低い声…。一体どこから?この辺には他には誰もいないし…もしかして巧斗さん!?いやでもあんんなに紳士な人がこんな事を言うだなんて想像できないし、空耳…にしてはやたらリアルな声だったよな…。)
でも、空耳じゃないとしたら、俺に言っているのか、総一郎やひなに言っているのかどっちなんだろう。
総一郎もひなも俺からしてみれば一流の下衆だが、俺も俺で昨晩ひなをメッセージで煽って攻撃?したのは確かだからな。
まぁあれも復讐の為に必要だと思ってやったことなので、誰に何と言われたり、嫌われたりしようと、決して後悔はしない。
__しない…筈だったのだが、俺の心の声とは裏腹に、何故か右手が勝手に巧斗さんの裾をぷるぷる震えながらきゅっと掴む。
(ん?なんだこれ、貧乏ゆすりか?)
「!すみません、すずめ…。怖がらせてしまいましたね。あまりにも不愉快なドブネズミが2匹、視界にうつったものですからつい…。」
「え、ネズミ?…なーんだ、そっかぁ。あはは、びっくりした!」
俺の様子を見て、巧斗さんは俺を怯えさせたと思ったのか、気遣わしげに震えていた俺の右手をそっと両手で包み込んで暖めてくれた。
手のぬくもりが伝わってくると同時に、巧斗さんの怒りが実際の人間に向けられたものではなかったことに、俺はほっと胸を撫でおろした。
(そうか…。下衆って言ったのはねずみの事だったんだ。まぁ実は俺もネズミは苦手な部類だから、巧斗さんの気持ちはよく分かるな。)
「でも、巧斗さん、ねずみが苦手なんだね?なんだか意外な弱点見つけちゃったかも。」
「ええ…、どうもあの手の小賢しい害獣には我慢がならなくてね。見かけるとすぐにでも駆除してやりたくなります。」
そう言いながら、彼が猛禽類のような鋭い視線を向けているのは、明らかに総一郎とひなが歩いている方向だ。
そして、その方向にはネズミどころか、人間以外の生き物が一匹たりとも見当たらない。
(あれ…もしかして、ドブネズミってあの二人の事を言ってる…?)
「…まぁ、優しい君はきっと嫌がるだろうから今は我慢しますが、もしあの2匹が噛り付いてきたら、その時は俺にすずめを守らせてほしいな。」
ふっと眉を下げながらさっきまで彼の両手で握られていた右手の甲に王子様みたいにキスを落とされて、二重の意味でドキッとする。
一つは、普通にカッコいい人に格好いい事をされたトキメキで、もう一つは彼の言葉に対してだ。
(わ、巧斗さんカッコいい……でも俺、現在進行形で彼氏と幼馴染に徹底的に復讐しようとしてるし、優しいとは正反対の位置にいるんだけどな…。)
『そうか…すずめが、ヤキモチを妬いてそんなことを…ククッ』
一方、総一郎はスマホの画面を見ながら、完全にご機嫌モードに入ったようで、ひなに対しても態度が明らかに柔らかくなっている。
『ひな、教えてくれてありがとう。酷い事を言われて辛かったな。すずめのことはもう気にしなくていい。鷹崎家の婚約者を傷つけた罰として、こっちから直接みっちりお仕置きしておいてやるからな。』
『総君…!えへへ。総君なら絶対僕の味方になってくれるって思ってた!ボッコボコにやっちゃって♫』
何故か目に見えて、すっかり余裕を取り戻したらしい総一郎は、キラキラと目を輝かせたひなの頭を優しく撫でながら、満足そうにクックと笑っていた。
「…下衆が。」
何処かから地を這うような怒りの声がして、ぶるっと背筋が凍る。
(なんだ今の低い声…。一体どこから?この辺には他には誰もいないし…もしかして巧斗さん!?いやでもあんんなに紳士な人がこんな事を言うだなんて想像できないし、空耳…にしてはやたらリアルな声だったよな…。)
でも、空耳じゃないとしたら、俺に言っているのか、総一郎やひなに言っているのかどっちなんだろう。
総一郎もひなも俺からしてみれば一流の下衆だが、俺も俺で昨晩ひなをメッセージで煽って攻撃?したのは確かだからな。
まぁあれも復讐の為に必要だと思ってやったことなので、誰に何と言われたり、嫌われたりしようと、決して後悔はしない。
__しない…筈だったのだが、俺の心の声とは裏腹に、何故か右手が勝手に巧斗さんの裾をぷるぷる震えながらきゅっと掴む。
(ん?なんだこれ、貧乏ゆすりか?)
「!すみません、すずめ…。怖がらせてしまいましたね。あまりにも不愉快なドブネズミが2匹、視界にうつったものですからつい…。」
「え、ネズミ?…なーんだ、そっかぁ。あはは、びっくりした!」
俺の様子を見て、巧斗さんは俺を怯えさせたと思ったのか、気遣わしげに震えていた俺の右手をそっと両手で包み込んで暖めてくれた。
手のぬくもりが伝わってくると同時に、巧斗さんの怒りが実際の人間に向けられたものではなかったことに、俺はほっと胸を撫でおろした。
(そうか…。下衆って言ったのはねずみの事だったんだ。まぁ実は俺もネズミは苦手な部類だから、巧斗さんの気持ちはよく分かるな。)
「でも、巧斗さん、ねずみが苦手なんだね?なんだか意外な弱点見つけちゃったかも。」
「ええ…、どうもあの手の小賢しい害獣には我慢がならなくてね。見かけるとすぐにでも駆除してやりたくなります。」
そう言いながら、彼が猛禽類のような鋭い視線を向けているのは、明らかに総一郎とひなが歩いている方向だ。
そして、その方向にはネズミどころか、人間以外の生き物が一匹たりとも見当たらない。
(あれ…もしかして、ドブネズミってあの二人の事を言ってる…?)
「…まぁ、優しい君はきっと嫌がるだろうから今は我慢しますが、もしあの2匹が噛り付いてきたら、その時は俺にすずめを守らせてほしいな。」
ふっと眉を下げながらさっきまで彼の両手で握られていた右手の甲に王子様みたいにキスを落とされて、二重の意味でドキッとする。
一つは、普通にカッコいい人に格好いい事をされたトキメキで、もう一つは彼の言葉に対してだ。
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