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咲夜の恋路
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しおりを挟む「…検査受ける前にヒートがきてΩってわかったんだけど……」
咲夜にこの事を話すのは、というよりもこの事を人に話すのは初めてで、緊張していた。
彼の目を塞いだまま、落ち着いて話し始めた。
「オレ、βだった!」
「あたしも!!」
「3組のー君はαだって!」
「すごいな~、運動も勉強もできるもんね!」
6年生半ば、第2性の診断結果が返ってきた放課後の教室は賑わっていた。
昔と違って2性で差別することは少なくて、隠す人は少なかった。
俺はただ1人、静かに開封されていない診断書をランドセルに放った。
結果なんて分かりきっている。
1年前、小学5年生の夏に俺は初めてヒートが来て、Ωということが診断された。
俺は学年でただ1人、首輪をしていた。いじめや嫌なことこそ言われなかったが、好奇の目は度々向けられていたと思う。
自慢する気ははなからないが、俺の家はいわゆる中流家庭というやつで、恵まれていたと思う。
自分の体に合った薬を買うことができたし、薬も効きやすい体質で発情期でも薬を飲めばほんの少し気怠いくらいに済んだ。
昔から、勉強が好きだった。
学年が上がれば上がるほど難易度は上がったが、それはそれで楽しかったし、もっと難しいのをやりたくなった。
両親や先生の勧めでαが多く通う中間一貫校を受験して、特待生で合格することが出来たのは嬉しかった。
両親と約束したのは「必ず首輪を付けること」
最初は真面目に守っていた。
けれど中一の秋に、咲夜と出会った。出会ったというよりはこちらが勝手に見たのが正解だが、いわゆる一目惚れというやつをした。
どうしても彼のそばに居たくて、近づきたくて仕方がなくなってしまった。
無知ながら、まだ名前も知らなかった彼と番になりたいと思った。
俺は何を思ったのか、中二で同じ1番上のレベルのクラスになると首輪を外して生活した。
元から中一の時はハイネックで首輪が目立たなかったので気にしている生徒はいなかった。
彼から話しかけてくれて、友達になれたのはラッキーだった。
彼のそばに、首輪なしでいても大丈夫なような気がした。もし何か間違いがあっても…。
それに、今更Ωとバレたくなかった。
「…俺は…咲夜と…一緒にいたい…好き…だから」
やはり彼の目を塞いだまま言葉を続ける。
彼はなんて言うだろう。
重いだろうか。
これまでにないくらい緊張しながら沈黙を耐えていると彼が口を小さく開く。
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