エレメント

kaoru

文字の大きさ
15 / 125
番外編

餅つき 前編

しおりを挟む
『『『ほわ~』』』

  テレビの前で妖精達が、口と目を大きく開けて、見ている。

「これが、餅つきよ」

『凄いです』

『速いですね』

『今日は、これをするのですね』

「そうよ」

「いやいやいや、母さん?嘘を言っちゃだめでしょ」

「えっ、だって、これから餅つきするんだから、嘘なんて言ってないわよ」

 テレビで映し出されているのは、正月の準備や正月の様子を映し出した再放送のもので…母さんは、高速餅つきで有名なお店のものところで、妖精達に餅つきの説明をした。

「臼も杵もないんだから、あんなのは、出来ないよ。ウチはこれ」

 俺は、直径四十センチ程で高さが五十センチ程の円柱の機械を皆にみせる。

「えっ、まだそれ使えるの?」

 母さんが、すごく驚いてる。

「使えるよ。一応、壊れたら、餅つき出来るベーカリーにしようかなぁーて、思っているけど、壊れないんだよねー」

「はぁー、だってそれ、三十年以上になるでしょ、確か、正也が、小学校に上がった位に買ったものよ」

「そうらしいね。年一回しか使わないからかな?」

『それは、何ですか?』

「餅つきの機械だよ」

『これで、餅つきするですか?』

 妖精達が、和室から出て来て、餅つき器を囲んでペタペタ触り出す。

「そうだよ。はい、皆、危ないから下がっていて」

 俺が、みんなを機械から離したところに、瑞樹とファラムが、一晩、水に浸けた餅米を持ってきてくれた。
 俺は、蓋を開け、用意しておいた水を機械の底入れ、はねをセットして、米を入れてもらい、蓋をしてスイッチをいれる。

 妖精達は、じーと、機械を見ているがウンともスンともいわないので、焦れ始めた。

 『餅つきしてるですか?』

「いや、まだだよ。今は、餅をつけるように、お米を蒸しているんだ」

『むしてる?』

「ほら、茶碗蒸しとか、プリンとか、蒸しパンとか、蒸気で温めて料理したでしょ。それを、蒸すっていうんだよ」

『!、美味しくなるですね』

「えっ?ああ、まぁ、食べられるようにはなるから…」

 「少し時間がかかるようでしたら、お茶にしませんか?」

 休みの日は、朝食のあと、コーヒーを飲んでまったりするのだけど、今日は、餅つきをするので、朝食後、正兄を送り出し、直ぐに片付けをしたからちょうどいい、コーヒー飲みながら待つことにする。

 ウチの、コーヒータイムは、ちょっと贅沢なものになってる。
 カウンター席や、ダイニングテーブルに座りながら、注文を始める。
 
「今日は、どうしようかなぁ?モカチーノで、シナモンつけて」

「アルフちゃん、私は、カプチーノで、綺麗な模様入りにして」

『キャラメルカプチーノ』

『カフェショコラ』

『カプチーノで、ルフナつけて下さい!』

「…カフェラテで」

 それぞれ、好きなものを注文する。基本はキルさんがやるのだけど、温めたミルクを泡立てるのはアルフさんが得意で、しかも、ラテアートを特集した画像を見せたら、挑戦してくれて、それが、めちゃくちゃ上手だった。アルフさんの意外な才能にダリルくん達も驚いていて、自分達も挑戦したけど、キルさんは…、ファルムは、綺麗な模様は描けたけど、時間がかかりすぎて…、ダリルくんは、立体的なのが、上手だったうえに、フレーバーコーヒーも、美味しいくしてくれる。なので、朝のコーヒーは、オーダーに応じて三人で入れてくれる。

 俺達は、休みの日だけだけど、家にいる母さん達は、毎日らしく、しかも、綺麗な模様も、毎日言われるらしく、アルフさんは、正兄の本棚で、世界の模様を勉強中…
 ココが、ルフナつきと言ったのは、ダリルくんに、立体的にルフナさんを模した泡をのせて欲しいということ…どうやら、喧嘩をしたらしい。そう、立体ラテアートの一番注文数が多いのが、妖精達によるルフナさん、理由は、喧嘩(妖精達と、ルフナさんの喧嘩は、大抵、食べ物の事で、口達者なルフナさんに、妖精達が負けることが多い…)の後の憂さ晴らしに、ルフナさんを飲み込むためだ。

「またですか…」

 ダリルくんが、ため息混じりで、アルフさんから、泡立てたミルクをもらってる。
 ちなみに、母さんや妖精達は身体が小さいので、エスプレッソカップで飲んでるから、絵を描くのも細かい作業になっている。

 「俺も、久々に描いてもらおうかな、山椒魚バージョンのキルさんのせられる?」

「のせられますけど…良いんですか?蜥蜴苦手ですよね」

「とかげと言うな」

 ダリルくんの返答に、キルさんが突っ込み入れる。

「トカゲはね…でも、キルさんのは、マルっこいし、小さいから可愛げあるからね。でかくなるとやっぱりダメだけど」

「ああ、はい。可愛いですね、分かりました」

「おい!」

 ココのルフナさんを、完成させて、俺のカップの上にも泡をのせ、ササッと、形を整え爪楊枝でなにやら描いて、俺の前にカップを置く。

「おお、かわいい」

「ホントだ。更に、丸みをつけてくれたんだね。ダルマみたい」

 俺と、瑞樹がかわいいキルさんにほのぼのしていると、複雑な顔をしたキルさん、笑顔のダリルくんとアルフさんも、自分のカップを持って席につく。
  精霊達は、冒険せず、メニューが決まっている。キルさんとダリルくんは、大丈夫?と思ってしまう程の濃いコーヒーだ。ちゃんとした道具や材料があればエスプレッソっと言っていいのだけど、ウチのは、エスプレッソ風で、ただ、インスタントのコーヒーをとかすだけたがらなぁ…それを、ストレートで、二人は飲んでしまう。アルフとファラムは、アイスカフェオレだ。最近、知ったのだが、二人はあまり温かいものは食べないらしい。冷たいものの方が好きなんだそうだ。
 この季節、熱々の鍋とかやるけど、二人は熱をとってから食べてる。
 勿体ないと思ってしまうのは、俺だけかなぁ?

 そんなことを思いながら、キルさんラテをスマホで写真に納め、コーヒーを飲んでいると、餅つきのブザーがなる。

「おっ、蒸し上がった。テーブルの上片付けて」

 俺は、皆に片付けを頼み、慌てて機械に近づき、蓋を取る。設定を餅つきの方に回すと、ウィンウィンという音の合間に、ゴゴゴという音がし出して、徐々に米粒がなっていく…俺はキッチンに向かい、手を洗い、水に濡れたままのてで、機械のところにもどる。

『『『ほわ~』』』

 粒がなくなり、お餅になって 回転し始めたのを、妖精達は、また、口と目を大きく開けてみている。

「つけたよ」

「こっちも、準備OK」

「はいよっと」

 俺は、回っている餅にタイミングを合わせ持ち上げ、そのまま、瑞樹達が用意してくれたラップの上に餅をどさりと置く。それを見て、瑞樹が機械のスイッチを切ってくれる。

 俺はそのまま鏡餅の分を丸めて、後は、伸してしまう。

「あれ?鏡餅、一つ分しかないわよ?」

「え?ああ、ウチは、玄関だけだよ。神棚ないから」

「去年まではそうだったけど、今年は…」

 そう言って母さんは、精霊達に目を向ける。

「ん?どういう事?」

「もう、あなた達、慣れすぎよ。」

 







 



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...