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幸せになる為に【side ルド】全四話
幸せな花嫁
しおりを挟む「亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした」でリクエストを頂いていた、結婚式~長男ルカ出産までのルド視点のお話です。
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王都からアミナスに帰って来た。
帰りはフレディ殿下が気を遣って馬車を出して下さった。
「ああ、リヴィさんへの卒業祝いですよ。
荷物がありますからね。ついでに乗る分には構いませんよ。まあ歩きたいなら止めませんがね」
苦笑しながらリヴィは馬車の中へ招いてくれた。
「……ルドはここを走って薬を取りに行ってくれたのよね」
馬車の道は舗装されていて、多少の揺れはあるものの快適な旅を送れている。
王都とアミナスを結ぶこの道だが。
「あー……実は、ここは通ってないんだ」
「えっ」
言えば怒られそうな気もするな。
何と言っていいか、頬をポリポリと掻いた。
「アミナスと王都の間に森があるだろ?
直線距離だとそこが一番早いから森を抜けてった」
思った通り、リヴィは目をまんまるく見開いた。
そんな彼女の可愛さに、改めて再会できた事を嬉しく思った。
だがリヴィは眉を吊り上げてやっぱり怒ってしまった。
「危ないじゃないですか!!何て事をしたんですか……!!」
「ごめん」
「無事だったから良かったようなものの、貴方に何かあったら……」
「リヴィ……」
リヴィを助ける為に時間をかけず王都に行くには森を抜けていく方が直線距離で早かった。
確かに舗装された道の方が安全ではあるが、回り道になる上アミナスからだと往来する馬車に乗れる宛も無かった。
だから迷わず森を抜けて行ったのだ。
「リヴィ、心配かけてごめん。森は訓練で何回も通った事あったし、その……、近道だから。
リヴィを絶対失いたくなかったし、リヴィに何かあったら後悔どころじゃないから……」
とはいえリヴィは俺のそういう事情は知らないから、心配かけたのは否めない。
「もう、危険な事はなるべく止めて。……とはいえ、貴方は警備隊だからどうしても任務とかあるのかもしれないけれど……」
「リヴィ……」
「せっかくこれから……夜も会えるようになったのに……」
……これは……、まさか、もしかして。
リヴィの顔がみるみる赤くなる。
俺はたまらずリヴィの手を取って口付けた。
「リヴィ、結婚しよう。アミナスに帰ったらすぐ結婚式挙げよう。幸せにする。だから毎日一緒にいよう」
「えっ……、というか、先程の王都での言葉も求婚だったんじゃ……」
「俺としてはちゃんと準備して、新居も建ててからと思ったけど、待てなくなった。
リヴィが良いならすぐ結婚しよう」
リヴィは目を瞬かせて、眉根を下げて苦笑した。
「今頷かなかったら新居が建ち終わるまで結婚できなそう。……いいわ。ルド、なるべく早く結婚式を挙げましょう」
そうして俺達はアミナスに帰ると結婚式の準備に取り掛かった。
本当なら王都中から祝福を受けてパレードするはずだった。
だが俺たちは平民となったので、アミナスの孤児院の隣でアミナスの親しい人たちだけを呼んだ簡素なものになる。
親はいない。
互いの両親とは縁を切ってしまった為リヴィの晴れ姿を見せてやれないのは残念だった。
フレディ殿下には一応日時を記した手紙を送った。
都合つくかどうかは分からないから無理せずに、と書き添えた。
「晴れの日だから、せめてリヴィの格好だけは花嫁さんにしなきゃね」
べハティさんがシスターたち、アミナスの女性陣に言って白いワンピースを花嫁衣装に仕立ててくれた。
ベールも孤児院の子どもたちお手製のもので、衣装の制作に三ヶ月を要した。
そして、結婚式の日。
教会の出入り口から二人で厳かに入場する。
中道の左右に備え付けてあるベンチには見知った顔が並んでいた。
警備隊の隊長はじめ、仲間たち、警備の先で出会った住民代表、いつもオマケしてくれる店の親父、リヴィの側も孤児院の子どもたちはじめ、リヴィを慕う街の人たち、シスターたちは前で歌を歌っている。
ベンチは参列者でいっぱいで、抽選がされたと聞いた。親しい人たちで挙げる予定が、リヴィが思いの外街の人たちから慕われていた為か参列者が増えたのだ。
隅の方には怪しいフードの者が三人いた。
その内の一人と目が合うとにっこり笑われた。
お忍びで来たフレディ殿下だった。あとの二人は護衛か何かだろう。
見渡しながら神父の前に着いた。
リヴィは白い衣装に身を包み、薄く化粧を施されていつも以上に美しい。
きっとリヴィはどんな衣装でもこうして俺を魅了してやまないんだ。
「これより、警備隊のルド、診療所のリヴィの結婚式を始めます。式が滞りなく終わるよう、この者たちに祝福を……」
神父は杯から聖水を振り掛ける。アミナス流の結婚式の祝福らしい。
「それでは、ルド。貴方はリヴィを愛し、敬い、慈しみ、労り、いついかなる時も、例え二人を分かつ時が来ても、彼女に愛を捧げると誓いますか?」
「誓います」
「リヴィ。貴女はルドを愛し、敬い、慈しみ、労り、いついかなる時も、例え二人を分かつ時が来ても、彼に愛を捧げると誓いますか?」
「誓います」
誓いの言葉を述べ終えると、神父は高らかに宣言した。
「この日、この時、一組の夫婦が誕生致しました。警備隊のルドと診療所のリヴィに皆様からの祝福を」
神父の言葉が終わると同時に参列者から割れんばかりの拍手が響いた。
警備隊の面々からは指笛も鳴っている。
「ルド!ほらそこでキスするんだ!」
「ファレル王国ではするらしいぞ!」
誰かが言い出したか、「キース、キース」と野次が飛ぶ。
確かに結婚式で誓いの口付けをする国があるというのは聞いた事がある。
だから、ごくりと唾を飲み込んで。
くるっとリヴィに向き直り。
顔が熱くなるのを感じながら頬に口付けた。
途端にわっと歓声が上がった。
本当なら唇にするんだろうけど、それは人前だと恥ずかしすぎた。
リヴィをちらりと見ると、薄っすらと涙を溜めて頬を染めて笑っていた。
「ルド、お返しよ」
「えっ」
そう言われたと思ったら、ぐいっと顔を引き寄せられて――。
ふにゅっと唇にリヴィの唇が重なった。
参列者たちからどっと歓声や黄色い声があがる。何故か隅の方にいたフレディ殿下のお供の一人が立ち上がらんばかりの勢いなのを殿下ともう一人に押さえられていた。
いや、それより、リヴィが積極的で鼓動が速くなる。
(こ、これは心臓飛び出死の前触れでは……)
トオーイさんが勝手に語っていた結婚式から初夜の話で出てきた心臓がドギュンドギュン鳴る現象が俺にも起きていた。
ああ、けれど。
これからはずっとリヴィと一緒にいられるんだ。
そう思ったら何か涙が溢れて止まらなくなった。
「リヴィ、ありがとう。俺と結婚してくれて。
これから、リヴィだけは幸せにする。
例え死んでも、天から幸せにするから」
必死に袖で拭うけれど、あとからあとから溢れてしまう。
リヴィはやっぱり眉根を下げて苦笑した。
「だめよ、ルド。死んじゃだめ。
私たちはこれから生きて幸せになるの。
幸せになる為に生きるのよ」
ああ、なんか、もう、こんな幸せでいいんだろうか。
「うん、ありがとう、リヴィ、生きてて、くれて。ありがとう」
ただ、愛する人が生きてそばにいてくれる。
温かくて、ただそれだけで満たされていく。
これからもリヴィのそばで生きていきたい。
それだけが今の望み。
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