【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月@お飾り妻配信開始!

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陥れた女


 残酷な描写があります。
 苦手な方はお気を付けくださいm(_ _ )m

~~~~~~~~~~~~~

 たった一人に愛される。
 私はずっとたった一人が欲しかった。

「スオウ様って言うの!かっこいいわぁ!私が番ならいいのに」

 寄宿学校の学習の一貫で、警邏隊の演習を見に来ていたアネモネはスオウに一目惚れした。
 警邏隊のスオウは竜人だ。
 竜人には番という概念がある。
 噂話ではスオウはまだ番と出逢ってないらしい。

 アネモネはどうしてもスオウが欲しかった。
 番が見つかる前に何とかしたかった。
 竜人と番の絆は絶対だ。
 近くにいれば反応するというから、アネモネは残念ながらスオウの番ではないのだろう。

 だからアネモネはスオウの番になる事にした。
 竜人の番は中々見つからないとされている。寄宿学校はあと二年はあるし、その間に方法を探そう。
 アネモネはうっそりと微笑んだ。

 アネモネは武器である見た目を利用して、王立図書館の禁書庫に入る術を手に入れた。

(ここなら竜人の番になる方法が分かるはず)

 片っ端から番に関する情報を探していく。

 その中で偶然であったが、これならいけるんじゃないかという手段を発見した。

 それは縁の魔女による『魂替え』と呼ばれるものだった。

 その名の通り魂の情報を交換する事。
 アネモネは早速縁の魔女の住む家に行った。

「ほぅ。おんしの黒き穢れは面白いの。
 良いぞ。魂替えしてやろう」

 縁の魔女は愉快そうに嗤い儀式を行った。

「魂の定着まで時間がかかる。2年は竜人に会わないがよかろう。あと元の本質は変わらぬ。番は番じゃ。魂替えをしても竜人の番は変わらぬ。
 ……まあ一時的に享楽は得られようが、縁を変えた代償は高いぞ」

 仄暗く嗤う魔女の言葉を真に理解しないまま、アネモネは竜人と番になる事を楽しみにしていた。


 縁の魔女に言われた通り2年は我慢した。
 どのみち寄宿舎に2年いなければならなかったから苦では無かった。
 その間にスオウに溺愛する恋人ができたと噂になっていたがアネモネには関係無かった。

 どれだけスオウがその恋人を愛していようと、番の前では霞むだろう。
 アネモネはらんらんと上機嫌にスオウの元へ向かった。


 そして運命の日。

 スオウはアネモネの気配に気付くとすぐ様近寄り、跪く。
 夢にまで見た光景にうっとりしたアネモネはスオウの求愛に応えた。

 視線の先に泣く女性がいたが、それはアネモネの優越感を満たすのみ。

 その日から竜人の巣に連れ込まれ、毎日抱かれた。
 それは幸せで満たされるものだった。
 起きている時は常に求められるので辛くはあったが、竜人から与えられる生気のせいか食べずに交わる事ができていた。


 だが、愛される事に悦びを感じていたアネモネの幸せは長くは続かなかった。

 ある日スオウが目覚め、アネモネに軽くキスを落とすのを微睡みながら感じていた。

 竜人の蜜月が終わり、これから書類上の夫婦となるべく動くのだろう。

 名実ともにスオウと夫婦になる。
 どれくらい巣に篭っていたか分からないが既に子どもを身篭っているかもしれない。
 この先の未来を感じ、満たされていた。


 昼過ぎに帰って来たスオウは顔を赤く腫らしていた。
 しかも、アネモネに帰れと言う。
 その表情には何も映していなかった。

 一度帰って嫁入り道具を持って来いということかしら?と、アネモネはしぶしぶ帰る事にした。

「早く迎えに来てね」

 そう言ったが、スオウからの返事は無かった。


 あれから1週間。
 スオウからの連絡も迎えに来る気配も無い。

「もう、スオウ様ったら遅いわ。私が他に行っちゃってもいいのかしら」

 ぷりぷりと怒りながら待っていたが、窓の外に現れた愛しい番の姿を見て歓喜し、そのまま彼を迎えに行った。

「お待ちしてましたわ、スオウ様!私首を長くし………………て………………………」

 言い終わらぬうちにアネモネは膝を着いた。
 ごぼっと血を吐く。
 自分の胸を見ると真っ赤に染まっていた。

「……え………」

 スオウを見ると彼は無表情で胸に刺さった鋭い爪を引き抜き、再び振りかざす。

「運命を捻じ曲げた者よ、報いを受けよ」

 アネモネは首に鋭い痛みを感じた。

「お前が現れなければ。
 書き換えなければ。
 俺も本能に逆らえなかったクズだが。
 それでもお前を許しはしない 」

 糸の切れた人形のようにアネモネの身体は崩れていく。
 ヒュウ、ヒュウと息を吸うが苦しさから逃れられない。

「俺………い……………ゼ…………が……………」

 愛しい番から受ける痛みは、アネモネの意識を奪って行く。

 どうして。
 竜人の番になれたのに。

 幸せになれるのではなかったのか。


『一時的に享楽は得られようが、縁を変えた代償は高いぞ』

 
 魔女の言葉が頭に浮かぶ。



 スオウはアネモネが事切れてからも、その身体を切り刻んでいた。


 暫くして、スオウは立ち去り、アネモネの側に縁の魔女が現れた。

「竜人の番を奪ったのじゃ。殺されても文句は言えぬ。
 縁を変えるとその先の未来も変わる。

 バカなおなごじゃ。
 竜人に拘らなければ幸せになれただろうに」

 アネモネの遺体から魂を抜き取り再び魂替えをする。

 その情報は元の持ち主へ。

「……悪い事をしたな。
 詫びとしてすぐに転生させよう」

 淡い光は魔女に導かれ、ある女性の中に入った。
 これから産まれる生命の元に宿り、その誕生を待つ事になる。


 とある墓の前。
 物言わぬ骸になった男を見て縁の魔女は立ち尽くした。

 愛しい恋人の墓を抱いたまま、男は眠るように事切れていた。

 縁の魔女は初めて己のした事を悔いた。

 せめて来世は共にあれるよう。

 魔女は男の魂を導く。
 だが番の概念を持つ獣人や竜人を拒んだ。

 導きは難航したが、どうにか人族の中に収まりホッとした。

 二人を邪魔する糸を解き、しっかりと縁を結び直した。

 竜人の番替えをした結果、縺れた縁の糸を解すのにこれから時間を要するだろう。
 魔女は溜め息を吐きながら、二度と魂替えはすまいと固く誓ったのだった。

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