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第2章 ここはシンデレラの世界らしい
28話 贈り物で暴かれる本性 (三人称視点)
「これを見て」
魔女は撫でるような優しい声で告げると、ローブの中から慎重にガラス細工を取り出した。
「これは!」
「ガラスの靴さ」
魔女が大切に腕に抱えていたのは一対の透明な靴。
エラが知っている中で、ガラスを作ろうとする人間なんて一人しかいない。
あんなに美しい物を作れるほどガラスを愛している人は彼しかいなかった。
「……リヨね!きっとリヨの作ったものね!」
魔女は静かに頷いて、抱えられた月夜に輝く宝石を慈しむように見つめる。
「そうだよ。吾輩の……璃世が魂を込めて作った作品だ」
「……魔女、さまの?」
「うん。吾輩の、とっても大切な存在、だよ」
ミステリアスさを孕んでいた魔女の澄んだ水色の瞳が、急に鋭くなりエラを刺すナイフに変わる。
「……へぇ」
それを感じ取ったエラも、目を細め、視線を尖らせてそれに対抗する。
この束の間のやり取りで、魔女とエラの間の空気がヒリつく。
「魔女様とそこまで関係深いとは、さすが神子だ」
「エラ様の見立ては的中ですね。エラ様、感情に飲まれないで、冷静に。手に入るものも入らなくなりますよ」
そんな雰囲気などお構い無しにクリスはリヨに感心していたが、一方タルタルは2人の様子を俯瞰して見ていた。
氷水のような冷静な言葉に、ハッとしたエラは暗い表情を一瞬で切りかえる。
「そうなのですね。リヨは心優しいですし、こんな美しい物を作るのですから、魔女様が大切に想われるのも納得です」
その言葉で魔女の方も平静さを取り戻し、ピリついた空気は一気に和やかなものとなる。
「ごめん、ちょっと意地悪言っちゃったね。
元々、この作品は璃世がキミのために作った物だ。吾輩の手からで申し訳ないけれど、どうかキミに贈らせて欲しい」
「え?私に?この美しい靴を?」
思ってもみなかった魔女の言葉にエラは吃驚し、咄嗟に高鳴る胸をおさえた。
「うん!ただ一つ条件があって」
どんな条件でも飲もうとするような勢いでエラは食い気味に頷いた。
「必ず王子様と踊って欲しい」
魔女の願いが想定外のものだったのか、エラはキョトンとした顔をう浮かべる。
「分かりました。最初からそのつもりでしたし、そんなことでこんなに美しいものが頂けるのなら」
エラの返事を聞くと、魔女はホッとしたように肩をなで下ろして、抱えていたガラスの靴を彼女に渡そうとする。
「大切にしてね」
手渡す際にそう告げた魔女。エラがその靴に触れて自分の元へ持っていこうとした時、強い力でそれが阻止される。
魔女がそれを手放すのを躊躇っていたからだ。
子どもが大好きな玩具を手放さないのと同じようになかなか手が離れない。
それが魔女にとってとても大切なものであると察したエラは無理に引き剥がすことなくただその力が抜けるのを待っていた。
数分か立って徐々に魔女が力を弱めていき、やっとエラの手にガラスの靴が渡る。
ガラスの靴を抱き締めて、その輝きに見蕩れていたエラの隣にクリスが寄ると、横からガラスの靴を覗き込み、右足部分のラベンダーの飾りを指さした。
「この穴?みたいなやつ、何ですかね?」
左には青のガラス玉が填められているのに、右の装飾の真ん中にはそれがない。ただ留め具は左と同様付いている。
「……!そういうことね、リヨ」
「どゆこと?」
クリスが首を傾げていると、エラはニヤリと笑って自分の首にかけてある首飾りを外す。
「リヨからもらったこのガラス玉をここに填めるのよ」
銀色に輝くガラス玉だけを取り出し、ゆっくりとラベンダーの花の真ん中にそれをはめ込んだ。
そしてようやく左右が美しいアシンメトリーになり、二つで一つの作品ができ上がる。
完成品を見たクリスは大きく手を叩いた。
「なるほど!リヨとエラさまの共同作業ってとこか!洒落てるなぁ!」
「……っ!きょ、共同作業、だなんてっ!」
エラはクリスの言葉に頬を真っ赤に染める。
「……乙女だなぁ……男だけど」
「一言多いぞ、クリス。お前は軽そうに見えて堅いんだ。それに、男が乙女になってもいいだろ」
「お、おう。そうだな」
タルタルの突き刺すような視線と指摘に珍しくクリスがたじろぐ。
その様子を優しく見守りながら、ショウが魔法についての注意を述べた。
「さて、吾輩はそろそろ帰ろうかな。ちなみに、魔法は0時を過ぎれば解けちゃうから、気を付けてね」
「分かりました」
「じゃあ、吾輩はこれで。いい夜を」
「本当に!本当に!ありがとうございました。もしリヨに出会えたら、エラはキミの贈物は最高に美しいと言っていた、と伝えてください!」
そんなエラの言葉に笑顔をうかべて答えながら、魔女は眩しい輝きを放って、最後は暗闇に消えていった。
伯爵邸の庭にはかぼちゃの馬車と着飾った騎士とプリンセスが立っている。
クリスは御者席に乗り、タルタルは長い裾のドレスで馬車に乗るエラをエスコートをするために扉の前に移動する。
「良かったな、エラ様。欲しかったリヨからのガラスの贈り物だろ?」
「さすがエラ様が選んだガラスの神子。綺麗ですね。かつてのルヴェール王国を思い出します」
位置についた2人は、温かい声をかけながら、彼女が馬車に乗り込むのを待っていた。
しかし、エラはその場に佇んだままで、なかなか馬車に乗ろうとしない。
「……」
ずっと俯いては、抱えているガラスの靴を凝視していた。
「エラさま?」
「エラ様?」
心配になった2人が首を傾げながら名前を呼ぶと、彼女から小さな呟きが聞こえてくる。
「リヨ……」
この場にいない人物の名を熱っぽく口にしていて、二人の呼び掛けは彼女には届いていないようだった。
そして、彼女だけの世界は止まることを知らず広がっていく。
騎士たちを置き去りにしてしまうほどに。
「リヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨ」
「「……!」」
狂気を含んだギラギラと輝く濃紫の瞳孔が大きく開く。
玲瓏な声とは裏腹に、不気味に囁くような低い声。その迫力に騎士たちですら言葉を失う。
「好き。大好き。愛してる」
エラはガラスの靴にキスをすると、陶器のような白い額をガラスに擦り寄せて、頬を熟した林檎のように赤く染める。
「はぁ、こんなに美しいものを作ってくれるなんて。それも私……僕に!僕のために!ガラスの神子が!いいや、リヨが!」
恍惚とした表情を浮かべながら声を荒らげる。
「忌まわしきこの国の王子が!忌避していたガラスに踏みつけられる!僕とリヨの愛の結晶に屈服するんだ!」
そんな主の姿を見たクリスが何とか相棒に向けて言葉を絞り出す。
「おっと、まずいなこりゃ。タルタル、エラ様を止めてくれ」
「無理なこと言うな。不可能なのはお前もよく知ってるだろ」
理性的なタルタルもお手上げ状態で、彼らはその様子を見守ることしか出来ないでいた。
エラはトロンと目を垂らして、抱えていたガラスの靴から右の方を取ってじっとながめる。
「ラベンダーに銀化のガラス玉。この右の装飾はリヨが僕のために作ってくれたことが見るだけでわかるよ。僕だけを考えて作ってくれたものだと」
「よ、良かったっすね、エラさ……」
ご機嫌な様子のエラに乗っかり、この場を平和的にどうにかしようとするクリスだったが、彼の言葉を遮る勢いで、彼女の声色は何トーンも低くなる。
「こっちは本当に僕だけのために作ってくれたのかな?僕の印象とはまるで違うけれど、何故?一体誰に向けて作ったの?」
次は左の靴に持ち替えて、舐めるように訝しむように見つめていた。
危険な気配を察したタルタルが慌てて補足を付け加えようとする。
「エ、エラ様なら……こんなデザインも履きこなせるだろうという想いを込めたのでは?」
「…………………………そっか!そうだよね!僕の新たな可能性への期待だよね!ああ好き。大好き」
タルタルの答えに満足したのか、光が無くなっていた瞳にハイライトが刺して、いつものラベンダーの美しい瞳が帰ってくる。
騎士たちは胸を撫で下ろしたが、不安な点は残ったままだった。
「タルタル、根拠もないこと言って大丈夫か?」
「重要な今、これ以上暴れられたら困ります。あくまで応急処置です」
エラをこれ以上暴走させないため、彼女の耳に届かないように小さく話す2人。
そんな2人に構うことなく、一瞬戻ったはずの花のように美しい瞳はまた靄がかかっていく。
そして、エラはどんどん己の内にある狂気を解放する。
「最後にこれを割って、ヤツの碧眼に突き刺すんだ。目玉をくり抜いて、踵を削ぎ落として……」
「割っていいんすか?リヨとの大切なものでしょ~?」
もうどうにでもなれと思ったのか、クリスが大きな声でエラに問いかける。
一方タルタルはその光景を呆れながら見つめていた。
「またお前は……。エラ様のお答えなんて、分かっているのに、そうやって面白がって……」
「いいんだ、タルタル。ね、クリス、何度でも言ってあげるよ。
ガラスは割れるから愛おしいんだよ。それが美しければ美しいほど、割れた破片は美しいんだ。だから、リヨが作ったコレが壊れる時はきっと世界のどんなものよりも綺麗なんだろう」
エラは蕩けた表情でガラスの靴を壊れるか壊れないかの境目の力加減でぎゅっと抱き締めた。
「リヨ、ずっとずっと僕の為だけに作って。キミの美しい作品たちを僕が一番美しく壊してあげるから」
天を仰いで星に願うと、エラは不気味な笑みを浮かべる。
そして、王城に向けて指を指すと、憎悪に満ち溢れた濃紫の瞳を向けて宣言した。
「そんな僕とリヨの未来のために、まずはこのクソみたいな国の王子を篭絡してやるよ」
魔女は撫でるような優しい声で告げると、ローブの中から慎重にガラス細工を取り出した。
「これは!」
「ガラスの靴さ」
魔女が大切に腕に抱えていたのは一対の透明な靴。
エラが知っている中で、ガラスを作ろうとする人間なんて一人しかいない。
あんなに美しい物を作れるほどガラスを愛している人は彼しかいなかった。
「……リヨね!きっとリヨの作ったものね!」
魔女は静かに頷いて、抱えられた月夜に輝く宝石を慈しむように見つめる。
「そうだよ。吾輩の……璃世が魂を込めて作った作品だ」
「……魔女、さまの?」
「うん。吾輩の、とっても大切な存在、だよ」
ミステリアスさを孕んでいた魔女の澄んだ水色の瞳が、急に鋭くなりエラを刺すナイフに変わる。
「……へぇ」
それを感じ取ったエラも、目を細め、視線を尖らせてそれに対抗する。
この束の間のやり取りで、魔女とエラの間の空気がヒリつく。
「魔女様とそこまで関係深いとは、さすが神子だ」
「エラ様の見立ては的中ですね。エラ様、感情に飲まれないで、冷静に。手に入るものも入らなくなりますよ」
そんな雰囲気などお構い無しにクリスはリヨに感心していたが、一方タルタルは2人の様子を俯瞰して見ていた。
氷水のような冷静な言葉に、ハッとしたエラは暗い表情を一瞬で切りかえる。
「そうなのですね。リヨは心優しいですし、こんな美しい物を作るのですから、魔女様が大切に想われるのも納得です」
その言葉で魔女の方も平静さを取り戻し、ピリついた空気は一気に和やかなものとなる。
「ごめん、ちょっと意地悪言っちゃったね。
元々、この作品は璃世がキミのために作った物だ。吾輩の手からで申し訳ないけれど、どうかキミに贈らせて欲しい」
「え?私に?この美しい靴を?」
思ってもみなかった魔女の言葉にエラは吃驚し、咄嗟に高鳴る胸をおさえた。
「うん!ただ一つ条件があって」
どんな条件でも飲もうとするような勢いでエラは食い気味に頷いた。
「必ず王子様と踊って欲しい」
魔女の願いが想定外のものだったのか、エラはキョトンとした顔をう浮かべる。
「分かりました。最初からそのつもりでしたし、そんなことでこんなに美しいものが頂けるのなら」
エラの返事を聞くと、魔女はホッとしたように肩をなで下ろして、抱えていたガラスの靴を彼女に渡そうとする。
「大切にしてね」
手渡す際にそう告げた魔女。エラがその靴に触れて自分の元へ持っていこうとした時、強い力でそれが阻止される。
魔女がそれを手放すのを躊躇っていたからだ。
子どもが大好きな玩具を手放さないのと同じようになかなか手が離れない。
それが魔女にとってとても大切なものであると察したエラは無理に引き剥がすことなくただその力が抜けるのを待っていた。
数分か立って徐々に魔女が力を弱めていき、やっとエラの手にガラスの靴が渡る。
ガラスの靴を抱き締めて、その輝きに見蕩れていたエラの隣にクリスが寄ると、横からガラスの靴を覗き込み、右足部分のラベンダーの飾りを指さした。
「この穴?みたいなやつ、何ですかね?」
左には青のガラス玉が填められているのに、右の装飾の真ん中にはそれがない。ただ留め具は左と同様付いている。
「……!そういうことね、リヨ」
「どゆこと?」
クリスが首を傾げていると、エラはニヤリと笑って自分の首にかけてある首飾りを外す。
「リヨからもらったこのガラス玉をここに填めるのよ」
銀色に輝くガラス玉だけを取り出し、ゆっくりとラベンダーの花の真ん中にそれをはめ込んだ。
そしてようやく左右が美しいアシンメトリーになり、二つで一つの作品ができ上がる。
完成品を見たクリスは大きく手を叩いた。
「なるほど!リヨとエラさまの共同作業ってとこか!洒落てるなぁ!」
「……っ!きょ、共同作業、だなんてっ!」
エラはクリスの言葉に頬を真っ赤に染める。
「……乙女だなぁ……男だけど」
「一言多いぞ、クリス。お前は軽そうに見えて堅いんだ。それに、男が乙女になってもいいだろ」
「お、おう。そうだな」
タルタルの突き刺すような視線と指摘に珍しくクリスがたじろぐ。
その様子を優しく見守りながら、ショウが魔法についての注意を述べた。
「さて、吾輩はそろそろ帰ろうかな。ちなみに、魔法は0時を過ぎれば解けちゃうから、気を付けてね」
「分かりました」
「じゃあ、吾輩はこれで。いい夜を」
「本当に!本当に!ありがとうございました。もしリヨに出会えたら、エラはキミの贈物は最高に美しいと言っていた、と伝えてください!」
そんなエラの言葉に笑顔をうかべて答えながら、魔女は眩しい輝きを放って、最後は暗闇に消えていった。
伯爵邸の庭にはかぼちゃの馬車と着飾った騎士とプリンセスが立っている。
クリスは御者席に乗り、タルタルは長い裾のドレスで馬車に乗るエラをエスコートをするために扉の前に移動する。
「良かったな、エラ様。欲しかったリヨからのガラスの贈り物だろ?」
「さすがエラ様が選んだガラスの神子。綺麗ですね。かつてのルヴェール王国を思い出します」
位置についた2人は、温かい声をかけながら、彼女が馬車に乗り込むのを待っていた。
しかし、エラはその場に佇んだままで、なかなか馬車に乗ろうとしない。
「……」
ずっと俯いては、抱えているガラスの靴を凝視していた。
「エラさま?」
「エラ様?」
心配になった2人が首を傾げながら名前を呼ぶと、彼女から小さな呟きが聞こえてくる。
「リヨ……」
この場にいない人物の名を熱っぽく口にしていて、二人の呼び掛けは彼女には届いていないようだった。
そして、彼女だけの世界は止まることを知らず広がっていく。
騎士たちを置き去りにしてしまうほどに。
「リヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨリヨ」
「「……!」」
狂気を含んだギラギラと輝く濃紫の瞳孔が大きく開く。
玲瓏な声とは裏腹に、不気味に囁くような低い声。その迫力に騎士たちですら言葉を失う。
「好き。大好き。愛してる」
エラはガラスの靴にキスをすると、陶器のような白い額をガラスに擦り寄せて、頬を熟した林檎のように赤く染める。
「はぁ、こんなに美しいものを作ってくれるなんて。それも私……僕に!僕のために!ガラスの神子が!いいや、リヨが!」
恍惚とした表情を浮かべながら声を荒らげる。
「忌まわしきこの国の王子が!忌避していたガラスに踏みつけられる!僕とリヨの愛の結晶に屈服するんだ!」
そんな主の姿を見たクリスが何とか相棒に向けて言葉を絞り出す。
「おっと、まずいなこりゃ。タルタル、エラ様を止めてくれ」
「無理なこと言うな。不可能なのはお前もよく知ってるだろ」
理性的なタルタルもお手上げ状態で、彼らはその様子を見守ることしか出来ないでいた。
エラはトロンと目を垂らして、抱えていたガラスの靴から右の方を取ってじっとながめる。
「ラベンダーに銀化のガラス玉。この右の装飾はリヨが僕のために作ってくれたことが見るだけでわかるよ。僕だけを考えて作ってくれたものだと」
「よ、良かったっすね、エラさ……」
ご機嫌な様子のエラに乗っかり、この場を平和的にどうにかしようとするクリスだったが、彼の言葉を遮る勢いで、彼女の声色は何トーンも低くなる。
「こっちは本当に僕だけのために作ってくれたのかな?僕の印象とはまるで違うけれど、何故?一体誰に向けて作ったの?」
次は左の靴に持ち替えて、舐めるように訝しむように見つめていた。
危険な気配を察したタルタルが慌てて補足を付け加えようとする。
「エ、エラ様なら……こんなデザインも履きこなせるだろうという想いを込めたのでは?」
「…………………………そっか!そうだよね!僕の新たな可能性への期待だよね!ああ好き。大好き」
タルタルの答えに満足したのか、光が無くなっていた瞳にハイライトが刺して、いつものラベンダーの美しい瞳が帰ってくる。
騎士たちは胸を撫で下ろしたが、不安な点は残ったままだった。
「タルタル、根拠もないこと言って大丈夫か?」
「重要な今、これ以上暴れられたら困ります。あくまで応急処置です」
エラをこれ以上暴走させないため、彼女の耳に届かないように小さく話す2人。
そんな2人に構うことなく、一瞬戻ったはずの花のように美しい瞳はまた靄がかかっていく。
そして、エラはどんどん己の内にある狂気を解放する。
「最後にこれを割って、ヤツの碧眼に突き刺すんだ。目玉をくり抜いて、踵を削ぎ落として……」
「割っていいんすか?リヨとの大切なものでしょ~?」
もうどうにでもなれと思ったのか、クリスが大きな声でエラに問いかける。
一方タルタルはその光景を呆れながら見つめていた。
「またお前は……。エラ様のお答えなんて、分かっているのに、そうやって面白がって……」
「いいんだ、タルタル。ね、クリス、何度でも言ってあげるよ。
ガラスは割れるから愛おしいんだよ。それが美しければ美しいほど、割れた破片は美しいんだ。だから、リヨが作ったコレが壊れる時はきっと世界のどんなものよりも綺麗なんだろう」
エラは蕩けた表情でガラスの靴を壊れるか壊れないかの境目の力加減でぎゅっと抱き締めた。
「リヨ、ずっとずっと僕の為だけに作って。キミの美しい作品たちを僕が一番美しく壊してあげるから」
天を仰いで星に願うと、エラは不気味な笑みを浮かべる。
そして、王城に向けて指を指すと、憎悪に満ち溢れた濃紫の瞳を向けて宣言した。
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