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第3章 王子様のトラウマ
43話 俺の見たかった光景
「……え、それは……」
その目は俺の胸を貫くぐらい真っ直ぐで、それに焼かれるように全身が熱くなる。
好き。
そんなサンの力強い声が頭の中で反響する。
それが心臓に届いては鼓動を速くさせる。
俺の掌を包む力はぎゅっと強くなり、額の距離もいつの間にか、互いの息がかかってしまうほど近くにあった。
色素の薄い長い睫毛、1本1本が天使の羽根のようで。
その美しさに唾を飲んだ。
睫毛の下から垣間見える青い宝石。
それがゆっくりと俺を包み込む。
この青空にこのまま飛び込んで、身の全てを預けてしまいたいと思ってしまうくらい。
気が付けば、その思いに溺れそうになっていた俺は全身の力を抜いて、彼の一挙手一投足に委ねようとしていた。
俺のふわふわとした頭の中に冷水をかけたのは他でもなく眼前の天使だった。
「俺は……お前の作品が大好きだ!」
(そっちか!)
そんなサンの心から溢れた叫びのような告白。
じんわりと胸が熱くなるような感覚とともに、訳も分からない期待が割れるような感覚が心の隅に覗いた気がした。
……いや、"そっちか"ってなんだ。
ガラス職人としてこれ以上ないくらい嬉しい言葉だろ!
心の中でそんな問答をして、何か胸に引っかかるもどかしさを強引に押しのける。
そうだ。俺はガラス職人。
俺の作品に込めた想いが、作品を通してサンに伝わった。
サンの心が少しでも動いた。
だから、サンは息切れするほどの勢いで想いを伝えてくれたんだ。
「ありがとな!」
瞼に涙を溜めて、それをキラリと反射させるサンを見据えた俺は、全てを出し切った満悦の笑みを浮かべる。
サンは俺の表情に釣られるように、あの時の、太陽のような眩しくて優しくて、でも無邪気な顔を向けて見せる。
その額には、透明な宝石が一筋だけ通った。
俺が見たかったのはこの顔だ。
俺が成したかったのはこれなんだ。
俺が父のガラスと出会って、これに人生を捧げたいと思ってた時と同じ、心が動いた時の表情。
この時、俺の中の一つの夢が叶った気がした。
そんな達成感に浸っていると、次に沸き立ったのは世界の存亡についての希望だった。
これでサンが少しでもガラスを好きになってくれたら。
ガラスにもっと触れてくれるようになったら。
静かに仕舞ったあのガラスの靴を外に取り出して、エラの元に出向いて。
二人の間には、少し行き違いがあるのかもしれないけど……。
俺のガラスが2人を繋げることができたら、あとはもう大丈夫。
ガラスを深く愛しているエラならきっと彼を包み込んでくれるだろう。
大分遠回りはしそうだけど、そんなハッピーエンドもいいんじゃないか?
世界は滅びないし、俺は2人のためにガラスを作り続けられる。
俺のガラス細工で2人を笑顔にしていたい。
それが俺の次の目標であり、夢だ。
その決心を全身に刻み込ませるように、瞳を閉じて、胸に拳を当てる。
そんな俺の行動を察してか、サンは少し俺から距離を取って、彼の定位置となりつつある折りたたみ椅子の背もたれに手を置いていた。
サンは椅子の横にある机に目を向ける。
「ずっと気になっていたのだが、これは?」
父の作ったアネモネのブローチをじっと見つめていた。
「あ、それは」
「……美しいな」
ズキン。感動で熱くなっていた俺の胸が冷んやりと氷に当てられた様に痛みが走る。
何故か、サンのその言葉が電流のように走って、毒のように全身を駆け巡ってはチクチクと蝕む。
俺は……父の技術には到底及ばない。
俺の作品を好きだと言ってくれたサンも、父の作品を見たら……。
やばい。そんなことを考えたら。
何だこの胸が締め付けられそうな苦しさ。
息ができなくなって視界が歪む。
これは父が作ったモノ言わないと。
俺はまだまだだろって、ヘラっと笑いながら。
父の作品は凄いだろって。
俺の作品は父のモノには敵わないだろって。
サンは俺の作品を好きだって言ってくれたけど、これを見たらそんなのすぐにひっくり返るだろって。
そのブローチから視線を外し、サンは静かに徐冷炉の前に立ってその中を覗き込む。
やめて。比べないでくれ。
サンの口が、何か言葉を紡ぎだそうと動く。
やめてくれ、何も言わないで。
父のモノを見ないで。
俺の作品から目を逸らさないで。
怖くて、受け止めるのが苦しくて、思わず下を向く。
髪が揺れ、服が擦れる音が聞こえた後、サンが息を吸った音がした。
「……だが俺はこっちの方が好きだ」
「……!」
その目は俺の胸を貫くぐらい真っ直ぐで、それに焼かれるように全身が熱くなる。
好き。
そんなサンの力強い声が頭の中で反響する。
それが心臓に届いては鼓動を速くさせる。
俺の掌を包む力はぎゅっと強くなり、額の距離もいつの間にか、互いの息がかかってしまうほど近くにあった。
色素の薄い長い睫毛、1本1本が天使の羽根のようで。
その美しさに唾を飲んだ。
睫毛の下から垣間見える青い宝石。
それがゆっくりと俺を包み込む。
この青空にこのまま飛び込んで、身の全てを預けてしまいたいと思ってしまうくらい。
気が付けば、その思いに溺れそうになっていた俺は全身の力を抜いて、彼の一挙手一投足に委ねようとしていた。
俺のふわふわとした頭の中に冷水をかけたのは他でもなく眼前の天使だった。
「俺は……お前の作品が大好きだ!」
(そっちか!)
そんなサンの心から溢れた叫びのような告白。
じんわりと胸が熱くなるような感覚とともに、訳も分からない期待が割れるような感覚が心の隅に覗いた気がした。
……いや、"そっちか"ってなんだ。
ガラス職人としてこれ以上ないくらい嬉しい言葉だろ!
心の中でそんな問答をして、何か胸に引っかかるもどかしさを強引に押しのける。
そうだ。俺はガラス職人。
俺の作品に込めた想いが、作品を通してサンに伝わった。
サンの心が少しでも動いた。
だから、サンは息切れするほどの勢いで想いを伝えてくれたんだ。
「ありがとな!」
瞼に涙を溜めて、それをキラリと反射させるサンを見据えた俺は、全てを出し切った満悦の笑みを浮かべる。
サンは俺の表情に釣られるように、あの時の、太陽のような眩しくて優しくて、でも無邪気な顔を向けて見せる。
その額には、透明な宝石が一筋だけ通った。
俺が見たかったのはこの顔だ。
俺が成したかったのはこれなんだ。
俺が父のガラスと出会って、これに人生を捧げたいと思ってた時と同じ、心が動いた時の表情。
この時、俺の中の一つの夢が叶った気がした。
そんな達成感に浸っていると、次に沸き立ったのは世界の存亡についての希望だった。
これでサンが少しでもガラスを好きになってくれたら。
ガラスにもっと触れてくれるようになったら。
静かに仕舞ったあのガラスの靴を外に取り出して、エラの元に出向いて。
二人の間には、少し行き違いがあるのかもしれないけど……。
俺のガラスが2人を繋げることができたら、あとはもう大丈夫。
ガラスを深く愛しているエラならきっと彼を包み込んでくれるだろう。
大分遠回りはしそうだけど、そんなハッピーエンドもいいんじゃないか?
世界は滅びないし、俺は2人のためにガラスを作り続けられる。
俺のガラス細工で2人を笑顔にしていたい。
それが俺の次の目標であり、夢だ。
その決心を全身に刻み込ませるように、瞳を閉じて、胸に拳を当てる。
そんな俺の行動を察してか、サンは少し俺から距離を取って、彼の定位置となりつつある折りたたみ椅子の背もたれに手を置いていた。
サンは椅子の横にある机に目を向ける。
「ずっと気になっていたのだが、これは?」
父の作ったアネモネのブローチをじっと見つめていた。
「あ、それは」
「……美しいな」
ズキン。感動で熱くなっていた俺の胸が冷んやりと氷に当てられた様に痛みが走る。
何故か、サンのその言葉が電流のように走って、毒のように全身を駆け巡ってはチクチクと蝕む。
俺は……父の技術には到底及ばない。
俺の作品を好きだと言ってくれたサンも、父の作品を見たら……。
やばい。そんなことを考えたら。
何だこの胸が締め付けられそうな苦しさ。
息ができなくなって視界が歪む。
これは父が作ったモノ言わないと。
俺はまだまだだろって、ヘラっと笑いながら。
父の作品は凄いだろって。
俺の作品は父のモノには敵わないだろって。
サンは俺の作品を好きだって言ってくれたけど、これを見たらそんなのすぐにひっくり返るだろって。
そのブローチから視線を外し、サンは静かに徐冷炉の前に立ってその中を覗き込む。
やめて。比べないでくれ。
サンの口が、何か言葉を紡ぎだそうと動く。
やめてくれ、何も言わないで。
父のモノを見ないで。
俺の作品から目を逸らさないで。
怖くて、受け止めるのが苦しくて、思わず下を向く。
髪が揺れ、服が擦れる音が聞こえた後、サンが息を吸った音がした。
「……だが俺はこっちの方が好きだ」
「……!」
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