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第3章 王子様のトラウマ
49話 【虜囚がもう一度、王子様になるまで】
「……認識阻害魔法で家を隠していたのに、まさかこんな子どもに見つけられてしまうとは。ここで突き返したら、後から何言われるか分からないですし、どうぞ、入ってください」
魔法使いはため息を吐いて、面倒くさそうに首を押さえながら少年を小さな家に招きました。
たくさんの本に薬草や薬瓶。
キョロキョロと辺りを見回しながら、体を縮こませた少年は足の踏み場のない床をゆっくり進みます。
少年は魔法使いの後ろに立って彼の指示を仰ぎます。
しかし、魔法使いの瞳は少年の方に向くことはありませんでした。
手錠が付いたままの少年を心配することなく放ったらかしにしたのです。
机に向かって必死に何かを書き続けるだけ。
数刻経ってやっと後ろを振り向いた魔法使いは冷たく言います。
「ここは好きに使ってください。私、子どもの世話は苦手なので」
淡白な言葉の後、魔法使いはまたすぐに机に向かってしまいました。
「……あ、あの、」
「話すなら端的にお願いします」
紙に魔法陣を描いては消しを繰り返す魔法使いは、作業に視線を向けたまま、不機嫌そうな声で少年を威圧します。
あまりの冷たい対応を受けて、少年は後退りしてしまいますが、何とか勇気を振り絞って彼に話しかけます。
「俺は……プリズメルの……王子……で」
「はぁ……そんなにオドオドしてましたかね、我が国の王子は」
大きなため息が少年の勇気を打ち消そうとしますが、助けを求めるために、これまでの境遇を伝えるために少年は一歩前に進みます。
「……あ、あの、えっと……と、捕らえられてたんだ。ルヴェールに」
「そうですか。プリズメル侵略から5年。ずっとルヴェールに。温室育ちとは思っていましたが、案外タフですね」
あの地獄を耐え続けてもう5年も経っていた。
苦痛以外に何も考えられなかった少年に、さらに重くのしかかってきたその事実は、彼を床にへたり込ませました。
「お、俺は……傷が治るから……死ねないから」
そんな重みはとっくに彼の許容量を大きく超えていて、俯いて手錠が視界に入った瞬間、堰を切ったように涙が流れました。
死ねない、その文言を聞いた魔法使いは、身体を少年の方に向けて前のめりになります。
「なるほど。そんな過酷な状況の中、どうやってここまでたどりついたのですか?」
「捕らえられていた牢の黒い岩に……俺の治癒の力が触れたら、形が変わって……」
少年がこれまでの経緯を説明すると、魔法使いはルビーの瞳に彼を映し、饒舌に語りだしました。
「それはミゾル石ですね。アレは魔力を込めると変化する物質です。魔法を使える王族を何故そんなところに置くのか……肝心なところで抜けてるというか、神子の力を過信しすぎて頭が回っていないというか。
……その力は、こんなことをするためのものではないのに。まあ、あの愚王のことです。あの白い石に囚われて、知らないだけでしょうね」
「魔力……?魔法?」
王子として伝承でその存在を聞いていた少年でしたが、突然なだれ込む情報に驚きを隠せません。
困惑する少年に、魔法使いは冷たい声音ながらも丁寧に説明をします。
「貴方は非常に稀有な治癒魔法の使い手なんですよ。その魔法が発動した際の残滓の魔力がその石に触れたことで形が変わったのでしょう」
「治癒、魔法……この呪いが……」
そんな絶望する少年に魔法使いは何も言わず、ただ目を細めて見つめていました。
そして、人差し指の指先を彼の方に向けて、桃色の花びらのような輝きを彼に振り撒きました。
すると、間もなくして少年の瞼はゆっくりと塞がり、深い眠りに誘われました。
まだ夜も更けていない朝。
少年に興味のないはずだった魔法使いが彼の身体を揺すりました。
「一つだけ、貴方に魔法をお伝えしておきたくて」
「……魔法?」
まだ寝足りず、目を擦りながら魔法使いの話を聞きます。
「貴方が捕らえられていた牢を思い出してください」
「う、うん」
少年は魔法使いに言われた通り目を瞑ります。
「そして、念じてください。そこで呟くのです。
追跡、と」
少年はあの地獄のような光景を脳裏に映し、ゆっくりとその言葉を紡ぎます。
すると眩い青い光が彼を包み、気付けば少年はまた牢屋の中に戻ってきてしまっていました。
動揺する少年の頭に直接、魔法使いの声が響きます。
『流石ですね。追跡魔法の応用を簡単にやってのけるとは。今、私が使っているのは《念話》という魔法で、相手の考えを共有できるものです。
貴方には才能があるらしい。きっとこれもできそうですね。頭の中で話したいことをイメージして、私を思い浮かべてそれを飛ばしてください』
動転する中、少年は頭に流れてきた魔法使いの言葉をそのまま実践し、爆発する感情を《念話》に込めてぶつけます。
「な、なんで、俺をここに戻したんだ!」
少年の魔法が届いたのか、魔法使いは小さな笑いをこぼしたあと、彼の問いに冷静に答えます。
『ルヴェール王が誰もいない牢を見れば、逃亡した貴方をどんな手を使ってでも探し出すでしょうから。ルヴェールに勝てるわけがない今の状況で、国民までも危険に晒すのは……非常に面倒くさい』
「……国民……?アンタ、国民がどうなったか知っているのか?!」
自身が見たあの悲惨な王都の光景を思い出して、魔法使いの含みある言葉に小さな希望を見出したのです。
『知っているもなにも、私が魔法で彼らを匿っているので。もちろん貴方のご両親も』
「……そう、だったのか」
魔法使いによってその希望は現実のものでした。
しかし、少年からそれ以上の言葉は何も出ませんでした。
国民や両親や無事だったことへの安堵と。
それ以上渦巻く、何故自分だけがこんな地獄にいるのだろうという絶望。
そして、自分をその地獄に追いやった者への憎悪。
少年の心を読んだように、魔法使いはその真相を話します。
『王様は貴方を差し出すことで、ルヴェール王の関心を貴方に向けさせようとしたのですよ。よく言えば合理的、悪く言えば国のために子を売るクソ親ですね』
「お父、様……」
『まあ、親子のいざこざは、時が来たら存分に話し合っていただくとして、今のプリズメルの状況をざっと説明します』
少年は膝を抱えて、静かに魔法使いの話を聞きます。
『私は命を受け、王様、王妃様……そして全国民を仮死状態にする魔法にかけ、王宮の礼拝堂に封印しています。
侵略時、ルヴェール王国側にはこの国を蹂躙したという幻覚魔法をかけてなんとか誤魔化している状況です。
ただ、対象が広いものですからどうしても粗もある。
これが今、神子の加護に預かるルヴェールに知られれば、簡単にこの魔法は破壊される。そしたら本当の意味でプリズメルは終わりです』
感情のない説明の後、冷えた声音が少年の頭に響きます。
『殿下ならお分かりですよね?貴方も、そして民も救われる最前の道を考えてください。
あ、それと。ここから私の家をイメージして追跡魔法を唱えれば行き来できることだけは伝えておきます。では……』
魔法使いが《念話》を断とうとした時、堪えていた少年の感情が溢れだしました。
「……ってくれよ」
『はい?』
「アンタが救ってくれよ!そんなに強い魔法使いなんだろ?!なら、アンタがこの国を救ってよ」
そんな少年の心の叫びに、魔法使いはため息で返しました。
『嫌ですよ。聞いたでしょう?この私の尽力っぷり。もうこれ以上扱き使われたくありません。貴重な研究時間がもったいない。
魔法が使えるのなら、王子様である貴方がやったらどうです?』
そこから、魔法使いは投げやりにそれだけ言うと、《念話》を強制的に終了しました。
その後、少年は考えました。
そして、彼のできる最前の策を取りました。
まず、牢を見渡し、彼が抜け出した穴を塞ぎます。
王様と王母様に気づかれないようにするためです。
魔法使いが言っていたこの黒い岩の特徴は魔力を流すと形を変えられるということ。その穴を塞ぐこともまた、魔力を流し込むことで可能だと気が付いたのです。
そして、毎日毎日飽きずにやってくる悪魔達に震えながら、彼らを待ち構えます。
暴言を吐かれ、破片で突き刺される。そんな拷問に耐え抜いて、満足気に去っていく二人の背中を見届けた後、彼は追跡魔法を唱えます。
魔法使いの家に身を移し、彼は手錠を付けたまま、器用に本のページをめくり、食らいつくように魔法の勉強をしました。
朝には同様に追跡魔法で牢に戻り、拷問を受け、追跡魔法で魔法使いの元に行っては、魔法を習得する。
王様も王母様にもそれに気付かれぬよう秘密裏に、そんな過酷な生活を繰り返し始めたのです。
一方、魔法使いは彼の懸命さに目を向けることはなく、必死にとある研究に没頭していました。
そんな生活が5年続いた時。
少年が18歳になった時。
その深夜も、同じように研究に没頭する魔法使いの横で、少年は魔法の本を読んで、実践を繰り返していました。
魔法使いの手が止まり、天を仰ぎながらボソリと何かを呟きました。
「……神子の加護が……消えた……」
プツリと糸が切れたように、少年に目を向け語りかけてきました。
「……殿下……いいえ、サン。今から貴方の国を取り戻しませんか?」
そう言った魔法使いの顔は、奮起させるような言葉を言った者だとは思えないほど、全てに諦めた表情でした。
そして徐ら立ち上がると、今度は全ての靄が吹っ切れたような、軽薄な笑顔を見せて、少年に手を差し伸べてきたのです。
そこからは……
***
「血腥くて、ありきたりな復讐譚だし、リヨに聞かせる話でもないな。
簡単にまとめれば……少年は、魔法を解かれた両親と和解して、 弱った性根を無理矢理強く見せて、民を奮い立たせ、学んだ魔法を巧みに使い、魔法使いの協力を得て、革命を成功させ、プリズメル王国を取り戻したのです。
おしまい。
そんなところだな、俺の23年の人生は」
魔法使いはため息を吐いて、面倒くさそうに首を押さえながら少年を小さな家に招きました。
たくさんの本に薬草や薬瓶。
キョロキョロと辺りを見回しながら、体を縮こませた少年は足の踏み場のない床をゆっくり進みます。
少年は魔法使いの後ろに立って彼の指示を仰ぎます。
しかし、魔法使いの瞳は少年の方に向くことはありませんでした。
手錠が付いたままの少年を心配することなく放ったらかしにしたのです。
机に向かって必死に何かを書き続けるだけ。
数刻経ってやっと後ろを振り向いた魔法使いは冷たく言います。
「ここは好きに使ってください。私、子どもの世話は苦手なので」
淡白な言葉の後、魔法使いはまたすぐに机に向かってしまいました。
「……あ、あの、」
「話すなら端的にお願いします」
紙に魔法陣を描いては消しを繰り返す魔法使いは、作業に視線を向けたまま、不機嫌そうな声で少年を威圧します。
あまりの冷たい対応を受けて、少年は後退りしてしまいますが、何とか勇気を振り絞って彼に話しかけます。
「俺は……プリズメルの……王子……で」
「はぁ……そんなにオドオドしてましたかね、我が国の王子は」
大きなため息が少年の勇気を打ち消そうとしますが、助けを求めるために、これまでの境遇を伝えるために少年は一歩前に進みます。
「……あ、あの、えっと……と、捕らえられてたんだ。ルヴェールに」
「そうですか。プリズメル侵略から5年。ずっとルヴェールに。温室育ちとは思っていましたが、案外タフですね」
あの地獄を耐え続けてもう5年も経っていた。
苦痛以外に何も考えられなかった少年に、さらに重くのしかかってきたその事実は、彼を床にへたり込ませました。
「お、俺は……傷が治るから……死ねないから」
そんな重みはとっくに彼の許容量を大きく超えていて、俯いて手錠が視界に入った瞬間、堰を切ったように涙が流れました。
死ねない、その文言を聞いた魔法使いは、身体を少年の方に向けて前のめりになります。
「なるほど。そんな過酷な状況の中、どうやってここまでたどりついたのですか?」
「捕らえられていた牢の黒い岩に……俺の治癒の力が触れたら、形が変わって……」
少年がこれまでの経緯を説明すると、魔法使いはルビーの瞳に彼を映し、饒舌に語りだしました。
「それはミゾル石ですね。アレは魔力を込めると変化する物質です。魔法を使える王族を何故そんなところに置くのか……肝心なところで抜けてるというか、神子の力を過信しすぎて頭が回っていないというか。
……その力は、こんなことをするためのものではないのに。まあ、あの愚王のことです。あの白い石に囚われて、知らないだけでしょうね」
「魔力……?魔法?」
王子として伝承でその存在を聞いていた少年でしたが、突然なだれ込む情報に驚きを隠せません。
困惑する少年に、魔法使いは冷たい声音ながらも丁寧に説明をします。
「貴方は非常に稀有な治癒魔法の使い手なんですよ。その魔法が発動した際の残滓の魔力がその石に触れたことで形が変わったのでしょう」
「治癒、魔法……この呪いが……」
そんな絶望する少年に魔法使いは何も言わず、ただ目を細めて見つめていました。
そして、人差し指の指先を彼の方に向けて、桃色の花びらのような輝きを彼に振り撒きました。
すると、間もなくして少年の瞼はゆっくりと塞がり、深い眠りに誘われました。
まだ夜も更けていない朝。
少年に興味のないはずだった魔法使いが彼の身体を揺すりました。
「一つだけ、貴方に魔法をお伝えしておきたくて」
「……魔法?」
まだ寝足りず、目を擦りながら魔法使いの話を聞きます。
「貴方が捕らえられていた牢を思い出してください」
「う、うん」
少年は魔法使いに言われた通り目を瞑ります。
「そして、念じてください。そこで呟くのです。
追跡、と」
少年はあの地獄のような光景を脳裏に映し、ゆっくりとその言葉を紡ぎます。
すると眩い青い光が彼を包み、気付けば少年はまた牢屋の中に戻ってきてしまっていました。
動揺する少年の頭に直接、魔法使いの声が響きます。
『流石ですね。追跡魔法の応用を簡単にやってのけるとは。今、私が使っているのは《念話》という魔法で、相手の考えを共有できるものです。
貴方には才能があるらしい。きっとこれもできそうですね。頭の中で話したいことをイメージして、私を思い浮かべてそれを飛ばしてください』
動転する中、少年は頭に流れてきた魔法使いの言葉をそのまま実践し、爆発する感情を《念話》に込めてぶつけます。
「な、なんで、俺をここに戻したんだ!」
少年の魔法が届いたのか、魔法使いは小さな笑いをこぼしたあと、彼の問いに冷静に答えます。
『ルヴェール王が誰もいない牢を見れば、逃亡した貴方をどんな手を使ってでも探し出すでしょうから。ルヴェールに勝てるわけがない今の状況で、国民までも危険に晒すのは……非常に面倒くさい』
「……国民……?アンタ、国民がどうなったか知っているのか?!」
自身が見たあの悲惨な王都の光景を思い出して、魔法使いの含みある言葉に小さな希望を見出したのです。
『知っているもなにも、私が魔法で彼らを匿っているので。もちろん貴方のご両親も』
「……そう、だったのか」
魔法使いによってその希望は現実のものでした。
しかし、少年からそれ以上の言葉は何も出ませんでした。
国民や両親や無事だったことへの安堵と。
それ以上渦巻く、何故自分だけがこんな地獄にいるのだろうという絶望。
そして、自分をその地獄に追いやった者への憎悪。
少年の心を読んだように、魔法使いはその真相を話します。
『王様は貴方を差し出すことで、ルヴェール王の関心を貴方に向けさせようとしたのですよ。よく言えば合理的、悪く言えば国のために子を売るクソ親ですね』
「お父、様……」
『まあ、親子のいざこざは、時が来たら存分に話し合っていただくとして、今のプリズメルの状況をざっと説明します』
少年は膝を抱えて、静かに魔法使いの話を聞きます。
『私は命を受け、王様、王妃様……そして全国民を仮死状態にする魔法にかけ、王宮の礼拝堂に封印しています。
侵略時、ルヴェール王国側にはこの国を蹂躙したという幻覚魔法をかけてなんとか誤魔化している状況です。
ただ、対象が広いものですからどうしても粗もある。
これが今、神子の加護に預かるルヴェールに知られれば、簡単にこの魔法は破壊される。そしたら本当の意味でプリズメルは終わりです』
感情のない説明の後、冷えた声音が少年の頭に響きます。
『殿下ならお分かりですよね?貴方も、そして民も救われる最前の道を考えてください。
あ、それと。ここから私の家をイメージして追跡魔法を唱えれば行き来できることだけは伝えておきます。では……』
魔法使いが《念話》を断とうとした時、堪えていた少年の感情が溢れだしました。
「……ってくれよ」
『はい?』
「アンタが救ってくれよ!そんなに強い魔法使いなんだろ?!なら、アンタがこの国を救ってよ」
そんな少年の心の叫びに、魔法使いはため息で返しました。
『嫌ですよ。聞いたでしょう?この私の尽力っぷり。もうこれ以上扱き使われたくありません。貴重な研究時間がもったいない。
魔法が使えるのなら、王子様である貴方がやったらどうです?』
そこから、魔法使いは投げやりにそれだけ言うと、《念話》を強制的に終了しました。
その後、少年は考えました。
そして、彼のできる最前の策を取りました。
まず、牢を見渡し、彼が抜け出した穴を塞ぎます。
王様と王母様に気づかれないようにするためです。
魔法使いが言っていたこの黒い岩の特徴は魔力を流すと形を変えられるということ。その穴を塞ぐこともまた、魔力を流し込むことで可能だと気が付いたのです。
そして、毎日毎日飽きずにやってくる悪魔達に震えながら、彼らを待ち構えます。
暴言を吐かれ、破片で突き刺される。そんな拷問に耐え抜いて、満足気に去っていく二人の背中を見届けた後、彼は追跡魔法を唱えます。
魔法使いの家に身を移し、彼は手錠を付けたまま、器用に本のページをめくり、食らいつくように魔法の勉強をしました。
朝には同様に追跡魔法で牢に戻り、拷問を受け、追跡魔法で魔法使いの元に行っては、魔法を習得する。
王様も王母様にもそれに気付かれぬよう秘密裏に、そんな過酷な生活を繰り返し始めたのです。
一方、魔法使いは彼の懸命さに目を向けることはなく、必死にとある研究に没頭していました。
そんな生活が5年続いた時。
少年が18歳になった時。
その深夜も、同じように研究に没頭する魔法使いの横で、少年は魔法の本を読んで、実践を繰り返していました。
魔法使いの手が止まり、天を仰ぎながらボソリと何かを呟きました。
「……神子の加護が……消えた……」
プツリと糸が切れたように、少年に目を向け語りかけてきました。
「……殿下……いいえ、サン。今から貴方の国を取り戻しませんか?」
そう言った魔法使いの顔は、奮起させるような言葉を言った者だとは思えないほど、全てに諦めた表情でした。
そして徐ら立ち上がると、今度は全ての靄が吹っ切れたような、軽薄な笑顔を見せて、少年に手を差し伸べてきたのです。
そこからは……
***
「血腥くて、ありきたりな復讐譚だし、リヨに聞かせる話でもないな。
簡単にまとめれば……少年は、魔法を解かれた両親と和解して、 弱った性根を無理矢理強く見せて、民を奮い立たせ、学んだ魔法を巧みに使い、魔法使いの協力を得て、革命を成功させ、プリズメル王国を取り戻したのです。
おしまい。
そんなところだな、俺の23年の人生は」
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