サ終手前の元覇権ゲームを極めた俺、再ブームした世界で無双する。

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第2章 第1回エリアイベント編

第18話 打開

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2人と散開してから少し。

俺はこの状況を打開するべく登るためにも接近をしなくては行けなかった、のだが。


「さっきの大爆発があるからな。」

容易な接近などあの亀は許してはくれないだろう。近づけば足元の大爆発、遠巻きに居れば溜めの火炎ブレスと、頻繁に撃って来る事はないだろうがここで博打に出られるほど敵の体力が削れている訳でもない。爆発やブレスを撃たれる前に攻め切る、という選択は無謀だろう。


「ウカに預けるしかないか…。」

俺自身闇雲に登山宣言をしたという訳ではなく、裏付けがあっての言葉だった。

というのもダーシュからSOSメッセージが届いた後、バカデカ亀に向けて接近中、ウカの方から提案してきたのがこの作戦である。

俺が甲羅に登るだけの隙を用意する、とは言っていたが口振りからして誰にでも登れそうな状況が生まれる訳ではなく、俺個人の能力も計算に組み込んでの話のようだ。

詳細を聞くような時間はなかった。しかしウカが言い切るのだ。隙は作る、と。なら信じるのが昔のよしみだろう。


この後訪れる隙を逃さないよう、千載一遇であろうその隙を無駄にしないよう、近からずも遠からずの距離から集中を途切れさせないようにしつつ、ウカから預かったアイテムを片手に火山の観察を続けるのであった。


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side 天王洲 アメ


「…て事。 いける?」

説明したアイテムを手渡しながら確認してくるウカさん。なんでこんなもの用意してあるんだろう… と思考が逸れそうになるが今はそんな事を考えている余裕はない。頭を振って雑念を追い出し集中し直す。


「…おっけ、責任重大じゃん! これでなんとかできるんよね!?」

「ん。トーマならいける。だいじょぶ。」

彼女の策は大胆不敵。本当にこんな作戦成功するの?という疑念を、トーマさんを信じる彼女の目が掻き消す。 ゲームの中なのに、アバターに過ぎないのに。彼女の目は信用できる、やってみようと私に思わせる。


>そんなアイテムあんの?
>いけるとは思えないんだがwww
>アメちゃんがここで無理する必要なくない?
>出来たとして登れるとは言ってない定期www
>無茶苦茶やんw
>やめといた方がいいと思う!
>俺経験者だけど難しいと思うからやめといた方がいいかも
>おもろそうだから行けw
>撮れ高なるぞー!いけー!w
>おい茶化すな野次馬共
>冷やかしは帰れよ
>野次馬VS一角馬 ふぁい!www
>誰がおもろいこと言えとwww

コメント欄は私を心配する声と無理だ無謀だと止める声、野次馬根性で冷やかしに来た人の声で溢れていた。



「…うし! やろっか!」


>本気!?
>アメちゃんマジ!?
>キタキタキター!ww
>無茶苦茶すぎwww
>捨て石すぎん?
>アメちゃん撮れ高とか気にしなくていいよ!?
>きちゃー!!www
>盛 り 上 が っ て ま い り ま し た
>無謀じゃない?
>危ないからやめとこ!
>ここじゃなくてもポイント貯められるよ!
>僕も手伝うから今はやめとこうよ
>本人がやるってんだからやらせとけばー?w
>アメちゃん無理しないで!


私は彼女を、彼女が信じるトーマさんを信じると決めたのだ。コメント欄がなんだ、ダーシュさんだって慣れない戦いの中頑張ってる、私だって何かできるなら…っ!


「合図は私がする、 よろしく、ね?」

「おっけ! がんばろ!」

私の言葉を聞き終えたかどうかの所で彼女の影は掻き消える、きっと次の準備に赴いたのだろう。

私も隙を作るべく、動き出した。


================================


side ダーシュ


「…ハッ! おもれぇじゃん! 俺の決め手をデコイにしようってか!」

旧知の間柄である猫獣人が影から表れたかと思えば、唐突に言われたのは囮役の依頼。

俺は弓に絶対の自信を持ってここまでやって来ている。その中でも自信の根幹である決め手をデコイに使えと言われて、はいそうですかと頷けるほど低いプライドを持っちゃいない。


。それでセンパイに道が作れんだな…?」

「ん。私たちで作る。」

「…分かった。じゃあ俺のタイミングで良いな?」

「問題ない。」

再び影へと溶け込む伝令係を見送り、己のすべき事を成すべく準備を始める。

センパイ、あんたの為の道は俺たちが切り開く。だから… 後は頼むぜ?


================================


side トーマ


青々と緑が広がっていた平原の中心は黒く焼け焦げ、巨大な山が見下ろしている。焦げた臭いと煤を運んでくる、しかしどこか気持ちがいいとまで思ってしまいそうなそよ風が一瞬、ぴたと止まる。


戦況が動いた。


火山の顔目掛けて矢が飛んでいく。
ただの矢ではない。人が打っているとは到底予想できない… 数十、数百の水の矢が、それはまるでマシンガンかと形容したくなるような数と速さで飛んでいく。

そんな攻撃を顔目掛けて打たれたのだ、当然火山も黙っちゃいない。1発1発はさほどのダメージではないが鬱陶しかったのだろう、爆発では仕留められないと判断した火山は攻撃の発生元ダーシュ目掛けてブレスを吐かんと全身が光を帯び始める。

火山の全身が熱された鉄のような色で脈打ち始めた時、異変は起きた。

火山の麓亀の足元の一点から洪水が溢れ出したのだ、その大きな流れはマグマを、周辺を巻き込み水蒸気となって炸裂する。

大きな地響きと共にその爆発は吹き飛ばした。大きな水の流れを、黒く焼け焦げた大地を、


巨大亀の大木のようなその四肢を。



好機到来。

水蒸気爆発によって空を舞う様々な物を無視して一気に駆け出す。

どうやらこの亀、自分で引き起こした爆発には耐性があったが水蒸気爆発は想定していなかったらしい。水で冷やされたことも要因なのだろうか、かなりの大ダメージを負っているように見える。


今までその巨体を支えていた四肢を吹き飛ばされた亀は当然立ち直れる訳もなく、大きな穴に被さる蓋のような甲羅があった。こうなって仕舞えばいよいよただの山。空から降ってくる巨大な岩や土を身体強化を駆使し躱しながらその頂上へと向かう。

ここで手札を切るはウカから預かっていたアイテム、【呼び札 氷狐ひょうこ】だ。効果は名前からお察しの通り、氷狐を召喚するという物だ。氷狐はAVO中盤から後半に登場するモンスターであり、この呼び札系アイテムは1回きりそのモンスターの力を借り受ける… 今回でいえば周囲を一気に冷却する事ができる。 さっきの大洪水も呼び札系統… 水蛙みずがえる辺りだろうか?が原因だろう。
…なんでこんな物持ってるんだよ。

しかしお陰で活路を見出せる。手詰まりを打開できる。ウカにはいつも感謝しかないな。


山頂へと辿り着いた俺はその呼び札を煌々と光るマグマが待ち受ける火口へと投げ入れる。

パキィン!と鋭い音と共に火口の中は凍りつく。その効果は火口内だけに留まらず、漏れ出た冷気は山肌を霜で覆っていった。

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フィールドボス:ヴォルタートルを討伐しました。

MVP:天王洲 アメ

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火山の命そのものであったマグマの中心を冷却された亀は、その場で息絶えることとなったのである。
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