宝玉チャージ!溜まるとキュイン♪〜スケベ勇者アッシュの冒険〜

葉雲屋

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冒険編

5.光壁バッ!復活と堕ち者の恐怖!

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異世界ミフラ。
ここは、「魔法」「発現」等、"想い"が具現化する世界──。



ストーンガーデン教会・2F──

廊下。
夜だが、照明は十分だ。

セレナ「あら、ドロシーちゃん?」

ドロシー「セレナさん」





セレナ「廊下は冷えるわよ。部屋に入ったら?」

ドロシー「ドロシー、ここでいいです」

ドロシーは、廊下の椅子で足をブラブラさせながら、「ドロシーがいると、師匠、泣けないから」と、続けた。

セレナ「……そう。じゃあ、はい。貴女の分のスープ」

ドロシー「わあ!ありがとうです!」

セレナ「ねえ。ドロシーちゃん。どうして、アッシュ君に弟子入りしてるの?」

ドロシー「カッコいいからです!」

ドロシーは、カップに入れられたコーンスープを、ふーふーと冷ます。

ドロシー「ドロシーも、師匠みたいにカッコよくなりたいです!」

セレナ「そう──カッコよくなりたい、か」

「良い子ね」ドアノブに手をかけながら、セレナは言った。
ぱたん。

ドロシー「……」

ドロシー「ドロシー、褒められたです!セレナさんもいい人です!」





アッシュ「アリサ……」

ごめん。
と、何度呟いただろう。
ベッドの上のアリサが、仄かな灯りに照らされている。
やがて扉が開き、

セレナ「貴方も倒れちゃうわよ」

アッシュ「セレナさん……」

少しして、セレナの”ルーティ”の光が、部屋を照らす。
急激な魔法での回復は、身体に負担がかかる。それに彼女は瀕死だから、時間をおいて”ルーティ”をかけていく、と、彼女は説明していた。

セレナ「──私は魅力ない?」

アッシュ「え?」

セレナ「聞いているわよ。貴方、なかなかって」

アッシュ「ここで言ったら最低野郎ですよ」

セレナ「あら。男なのね」





アッシュ、コーンスープの湯気を、額にあて。

アッシュ「俺の所為なんです。……全部。アリサがこうなったのも」

セレナ「アッシュ君」

アッシュ「気付いてやれなくて、粋がって、クエスト選んで。それで負けかけて……アリサを、巻き込んだ」

「それは、違うと思うな」と、セレナ。

アッシュ「え?」

セレナ「ごめん、の一言は、あってもいいと思うけど。でもアリサちゃんも、”巻き込んだ”とかは、思ってほしくないはずよ」

アッシュ「セレナさん……」

──アリサちゃんは、お客様?
と、セレナは言う。

セレナ「違うでしょう?戦友のはずよ。彼女も、分かって、着いてきている筈よ」

アッシュ「……」

セレナ「と、私は思うわ」

アッシュ「すごいですね、セレナさん」

「本当に口説いちゃおうかな」と、アッシュ。

セレナ「あら。私は聖職者よ?」

アッシュ「恋敵が神とは燃えますね」

セレナ「戦ってみる?神様と。”愛の勇者”くん。──さ、スープを飲んで。王子様がそんな顔だと、目覚めたお姫様がガッカリしちゃうわ」

「あちっ!」と、アッシュ。フフと、セレナが笑う。





気持ちが、少し和らいで、ウトウトと。
していたら「ん……」という声に、アッシュは目を覚ました。

アッシュ「アリサ……?」

アリサ「……アッシュ?」

アッシュ「アリサ!」

と、アッシュ、アリサの方に寄る。

アッシュ「アリサ、ごめん!俺……」

アリサ(――ああ)

と、アリサは思った。
どんな風に待っていたか、顔を見ると、分かってしまう。

アッシュ「アリ……」

アリサ「ったく!」

アリサは、上体を跳ね上げると、ゴッ、とアッシュを小突いた。

アリサ「いいから!もう、いいの!」





アッシュ「アリサ」

アリサ「何!?」

アッシュ「その、服……」

アリサ「へぁ!?」

きゃああああ!わああああ!と、教会らしからぬ俗な悲鳴。

「アリサさん!」と、ドロシーが入る。

セレナ「……元気ねえ」





ストーンガーデン、街中――

セレナ「ごめんなさい。魔法が効きやすいように、上を脱がせていたんだけど。起き上がっちゃうなんて」

アッシュ「起き上がっちゃうなんて……」

アリサ「スケベ!最低!」

アッシュ「見えちゃったんだよ!感覚で分かれよ!」

アリサ「見るな!」

アッシュ「無茶言うな!」

ドロシー「何が見えたんですかー?」

アッシュ「ピンクだった」

アリサ「殺ーす!」





ドロシー「師匠、煙あがってるです」

アッシュ「ひ、引き上げてくれないか?ドロシー」

ドロシー「師匠、上半身が地面に埋まってるです。うんしょ、うんしょ……」

アッシュ「説明有難うな、ドロシー」





アリサ「……それで」

アリサ「貴女は、何者なんですか、セレナさん?」

セレナ「え?」

アリサ「教団から、派遣されてきたんですよね?悪い人じゃないのは分かりますけど……何のために?」

セレナ「……」

アリサ「……」

セレナ「分からないの。でも、貴女を安心させる情報ならあるわ。派遣を命じたのは、”元老”アクラレル」

アリサ「アクラレルさん……!」





アッシュ「お!すっげぇ美人!ねーねーお姉さんー!」

ドロシー「あ!猫さんです!お魚美味しいですかー?」

アリサ「あっ!ちょっと、アッシュ……」

ガッ、と、右腕を掴まれる。

セレナ「質問は、終わりみたいね?」

「じゃあ次はこっちの番」セレナは、言って、

セレナ「貴女。あの力、もう使わないで」

アリサ「何……?」





何て鳥かは、知らないが。やけに大きい声で、鳴きながら飛んでいく。

セレナ「──勿論、危険な旅よ。使う事もあるでしょう。でも貴女……アッシュ君やドロシーちゃんから聞いたけど、あの力、いつも使ってるわよね?」

アリサ「……」

セレナ「あの力のリスクは高い。生命力に心。貴女は分かっている筈よ?まるで、誰かに認めてもらいたいみたい」

「アッシュ君?」とセレナは聞いた。
アリサの頭に、あの景色が。

セレナ「そんな事しなくても、彼は──」

アリサ「それじゃ駄目なんです」

アリサが、俯いて言う。

アリサ「彼奴が何も言わないからって、それじゃ、駄目なんです……」

セレナは、黙り。
そして、息を吐いた。

セレナ「あの力、使いすぎると、貴女、アッシュ君の前から消えちゃうわよ」

アリサ「隣……」

セレナ「隣?」

「私、隣に居たいんです」と、アリサ。

セレナ「──隣でも、よ。貴女はそれで良くても、彼を苦しめる事になる。分かったかしら?」

アリサ「……」

セレナ「お説教が過ぎたわね」

「年を取ったわあ」と、セレナは苦笑した。





ストーンガーデン教会・2F──

アリサ「にしても!」

アリサ「遅い!彼奴、どこほっつき歩いてんのよ!」

セレナ「剣のチャージ中じゃない?」

アリサ「想像したら更にムカつく!」

ドロシー「ムカついてるですー」

ドロシー「ドロシーもムカついてみるですー」

セレナ「落雷の気配がするわね」

アリサ「私が雷落とす!ドロシーじゃなくても!」





セレナ「そんなに言うなら、アリサちゃん……」

アリサ「それは嫌です!」

セレナ(アッシュ君も大変ねえ)

「はぁーあ!」と、アリサは、ソファに寝転がった。

アリサ「彼奴があんなだから、私は……」

セレナ「……」





セレナ「──あら?」

アリサ「”見張り塔の二つ鐘”……」

ドロシー「闇魔法です!」





セレナ「様子を見てくるわ!」

ドロシー「ドロシーも行くです!」

アリサ「私も!」

セレナが、ドアを開ける動作を止め、アリサを見る。

セレナ「……あの力は封印よ、いい?」

アリサ「はい!」

セレナ「そう、じゃ、着いてきて」

三人、見張り塔へ。





見張り塔──

「ん?ええっと、教会の人かい?」

アリサ「と、冒険者です」

セレナ「鐘を鳴らしておられましたが……闇魔法使い、ですか?」

「ああ、その通りだ」

セレナ「まさか、クロエル……」

「いや、そうじゃねえ。けど、執行官達が出払っちまっててね……」

セレナ「場所はどちら?」

「西の、居住区だ」

「ありがとうございます」と、セレナは頭を下げた。

ドロシー「西の居住区です!急げ―!」

と、何故か先頭はドロシー。勢いで、雷が出、夜のストーンガーデンに、雷光。





ストーンガーデン・西部──

セレナ「この辺りかしら」

アリサ「暗いですね」

セレナ「足元に気を付けてね」

と、見張り塔から借りた灯りを手に、セレナ達がゆく。
民家が立ち並ぶが、みな、寝静まっていた。

セレナ(こんな中で、闇魔法を使われたら……)

と、被害を想定して、ゾッとする。
少し先は、もう暗い。

ドロシー「暗いですー」

そう言っていたドロシーが、突如「がっ!?」と、叫んだ。

アリサ「ドロシー!?」

セレナ「ドロシーちゃん!?」

セレナ、その様子を見、周りを見て、「しまった……」と、歯噛みした。
いつの間にか、三人が入る範囲で魔法陣が光っている。

「ひ、ひ、ひ」

ひーっかかった ひかかったあ
ひーっかかった ひかかったあ

「”デス”」





セレナ「”バッシュ”!」

と、セレナの前方に、光のバリア!
”それ”から放たれた闇のエネルギーが、阻まれて逸れる!

アリサ「セレナさん!」

セレナ「あれに触れないでね、アリサちゃん。……死んじゃうから」

アリサ「死……」

思わず、アリサは、一歩後ずさった。
ところで。

アリサ「酷い臭い……」

セレナ「敵の臭いね。……愚かにも、闇魔法に取り込まれちゃって、最早人ですらないわ」

──あれは”ち者”。
セレナが言う。堕ち者は、泥水のようなもので濡れたボロ布を纏い、そこから、顔だったような物、手足だったような物を、突き出している。

堕ち者「”デス””デス””デス””デス”!」

セレナ「”バッシュ”!」

と、デスの連撃!
それから、間が空くと、

セレナ「!”ハイ・バッシュ”!」

ボロ布の中に、鎖。
それが何本もあるらしく。じゃらじゃら、じゃらじゃらじゃらと。
セレナのバリアを、叩いた。

セレナ「くぅっ……!」

セレナ、見れないが、背後で呻いているドロシーに、

セレナ「ごめんなさい、ドロシーちゃん。もう少し我慢してね……」





アリサ「ドロシーに何があったんですか!?」

セレナ「魔力を奪う魔法陣よ。魔法に長けている者は、身体と魔力が同化しているから、奪われたらああなるの……闇魔法だから、私には効かないけどね」

「早く、ドロシーちゃんを助けないと」と、セレナは言い、「アリサちゃん。作戦を説明するわ」

セレナ「彼奴は、歪ながら知能を持っていて、”デス”が効かないと知ると、鎖攻撃に変えたわ。今から私が奴の動きを止めるから、仕留めて欲しいの」

アリサ「それなら……!」

セレナ「あの力は駄目。言ったでしょ?あれじゃなくても、”発現”出来る人って、戦士を極めた人なんでしょう?」

アリサ「……」

セレナ「自分の力を、信じて」

アリサ「──分かりました!」

鎖が、襲ってくる。
セレナは”ハイ・バッシュ”を展開しながら、その鎖が当たる所へ意識を集中して、凌いでいる。
突如、

セレナ「”ブライト”!」

光が発し、しかし、アリサには「白」に見え、目を開けていられる、不思議な光だ。
堕ち者が、大きくよろめいた。

セレナ「今よ、アリサちゃん!」

アリサ「はい!」

アリサ、石畳を踏み。
濡れた地面を踏み。

アリサ(信じるんだ)

投げ出された鎖を踏み。
ボロ布の端を踏み。

アリサ(戦士の、力を!)

そこに、至って。

アリサ「戦技”鉄斬り”!」

頭部に、剣が入り。
恐ろしい断末魔が、夜の闇に響いた。





セレナ「誰か、見に来てない?」

アリサ「大丈夫みたいです」

セレナ「まあ、怖そうなところに来たくもないか」

セレナの手では”ルーティ”が光っている。

ドロシー「う、う……」

アリサ「あの、それ。失った魔力も回復するんですか?」

セレナ「いいえ。身体が受けたショックだけね」

アリサ「成程」

「臭い所でごめんなさいね」と、セレナが言う。

アリサ「もう、鼻曲がっちゃいました」

セレナ「そう、私も」

アッシュ「うおっ!?くっせぇ!!」

アリサ「アッシュ!?」





アッシュ「よう!皆!……もう終わっちまったのか?」

アリサ「お早い御着きで」

アッシュ「怒るなって。剣のチャージしててさあ」

アリサ「聞きたくない」

アッシュ「俺のファンだ!って子がいてさ。それで、一気に金色に……」

アリサ「何で怒る方に進んでくんだ、お前はァ!!」

ごきぃん。





翌日、教会──

アッシュ「という訳で、街を歩いていたら、この手紙を渡されまして」

セレナ「確かに”元老”の封印ね」

アッシュ「ええ。だから、西に行こうかと」





アリサ「アッシュ」

アッシュ「ん?」

アリサ「その、私もごめん、なさい」

アリサ「あの力、けっこうリスクあるんだ。だから、考えて使う……から」

「戦友」アッシュは言った。

アリサ「戦友?」

アッシュ「セレナさんが言ってたんだ。俺たち二人にピッタリだなって。……改めて了解したよ。お互い、強くなろうぜ」

と、アッシュは肘で、アリサを小突いた。
西へ、西へと、太陽と共に。
手痛い、反省。アッシュ達がゆく。

第五章、終わり



【tips】

鉄斬り
戦士の戦技の一つ。鉄をも斬る一撃。


魔法③

ルーティ【聖】
聖属性の回復魔法。人体の”回復”を促進し、あらゆる傷を治す。

バッシュ【聖】
聖属性の光壁魔法。闇魔法はじめ、邪悪な力を防ぐ。上位魔法”ハイ・バッシュ”は、加えて物理攻撃や、他属性魔法も防げる。「バッシュ」「ハイ・バッシュ」両方とも、「どこまで防げるか」は使い手の力量による。

ブライト【聖】
聖属性の魔法。聖なる光で、邪悪なものをよろめかせる。


魔法陣
魔法の使用方法の一種。罠や結界など。「その他」属性のようであるが、紐解けば何らかの属性による魔法たちだ。

闇属性
神との誓約によって得る「聖属性」に対し、悪魔との契約によって、後天的に得る属性。存在自体が違法とされ、契約、使用すれば世界的機関「魔法院」によって処罰される。
特に最強魔法”デス”は、相手の命を奪う禁忌の魔法に指定されている。
また「聖属性」を得る際には「専心」の要素があるが、闇属性の契約にはこれがないため、闇属性を得ても元の四属性魔法はそのまま使える(例:火属性魔法を扱えた者は、闇属性の契約をしても、元の火属性魔法が使える)

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