魔王エルデネス3

葉雲屋

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魔王エルデネスの章

1.

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──魔界。

それは、闇に閉ざされた、もう一つの世界。

エルデネス本城のを、ソガークが歩いている。

(関わるなと言われても、気になるものは仕方ないですね)

頭の端に、魔王と勇者とが浮かぶ。

しかし、どうしようもない。せめてこのモヤモヤを、仕事へと昇華すべきだ──ソガークは、部屋と向かう。エルデネスの子供が居る部屋へと。



荒野の、中に。

制帽を被り、軍服を正し、エルデネスが立っている。

サクヤ達が近づいた時、魔王は、左手を顔の横まであげた。「やあ」という上げ方ではなく、景色を紹介するような上げ方だった。

「よく来たな。余が……魔王エルデネスだ」

「エルデネス」

サクヤが、背中の聖剣をにぎる。

「貴方の支配を、終わらせに来たよ」

「──そうか。余に、その予定はない」

(聞いた通りだ)

リーシャが思う。魔王の外見が、である。

(もっとこう、、って姿があると思うけど)

エルドロが持つイメージとは、違った。

(しかし──この魔力量)

カイが、密かに息を呑む。

魔王の身体つきは、初老の人間という感じだ。しかしどうやってその質量に抑えているのかというほど、絶大な魔力を秘めている。

「……」

ガロッドが、黙っている。

いや、皆が、下手な事を言えないでいた。普段、よく喋るリーシャやエルドロも。それだけ、相手が洒落にならないことを感じていた。

沈黙を破ったのは、やはり勇者である。

「魔王」

「うむ」

「──いくよ」

うむ、と、エルデネスが頷く。

「いくよ、みんな!」

(サクヤ)

呪縛が、解かれた。

五人が動き出す。仲間を解き放つ力が、勇者にはあった。

初撃は、聖剣ポリュシモスによる斬撃。

エルデネスがそれを避ける。ところへ、ガロッドの振り下ろし。

「ふむ」

魔王が、軍刀で避ける。

「ぐ!?」

騎士の方が面食らった。

巨山にでも振り下ろしたかのような、硬すぎる手応え。

「でぇい!」

と、リーシャが魔王の横腹を払おうとする。

ガロッドの斧が、地面にめりこむ。魔王が躱したためだ。

次の瞬間──下手をすると、これで勝負がつく所だった。

「”シルヴィア”」

魔王が零度魔法を唱える。

冷気が出るという過程ステップすらない。五人の身体が、一瞬で凍てつく。

しかし、その次の瞬間、炎によって解答された。エルドロのお陰であった。

「ふむ」

エルデネスが、感心するように顎を撫でる。

「凍てついたらどうしようかと思っていたぞ──魔法使い」

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