魔王エルデネス3

葉雲屋

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エイレン王国の章

2.

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エイレン王国は、山岳地帯にある。

山を国とし、その峻険さを国防、または戒めとした。守護神に聖龍を祀る、騎士たちの国。

山岳地帯に魔王が現れ、城塞のもとに歩んできたとき、騎士団長ガレンが叫んだ。

「魔王、エルデネス!聖龍の加護のもとに、貴様を討つ!」

「──聞け、エイレンの民よ」

エルデネスの魔力が、大気を震わす。その声は、眼前で言われているように、皆の耳によく届いた。

「左様、余が魔王エルデネスだ。エイレン王国を奪いに来た。降伏せよ」

(誰が!)

ガレンが左手を振り、何かを命じようとしたとき、空が暗くなった。

「”ゼウス”」


雷魔法:ゼウス
エルデネスが得意とする、雷の魔法。神の如き雷が敵を襲う。


城壁が砕け、方々で爆ぜる。痺れる、というより吹き飛ばされる、神の雷。

エルデネスが笑んだ時だ。軍帽の下の眼が、その二人を捉えた。

右側に、ガレン。

左側に、金髪青眼の女性。まだエルデネスは知らないが、ここエイレン王国の王女、アリスであった。

王妃は既に亡い。

一人娘でありながら、剣をもって前線に出る所に、エイレンの気風がある。

「ほう、勇ましき者たちよ。では余も少し運動するとしよう」


武器:軍刀
エルデネスの近接武器。エルデネスお気に入りの一振りだが、特殊能力などはない。


ガレンは、重厚な赤銅色の兜に鎧をつけている。

中身は三十代の壮年騎士だが、武装姿では声の低さしか分からない。

ともかく彼は、大剣を振り下ろしたが、次の瞬間には尻餅をついていた。

ふわっとした感触だけあった。そのらしい切っ先が、王女の首に突き付けられている。

エルデネスは常に、口端を曲げている。

「勇ましく、美しき女性よ。余のものとなるが良い」

と、吹きかけるように言った。


睡眠魔法:ヒプノ
敵を眠らせる。複数人も可能。


「そして、”収納玉”だ」

まどろんだ青眼が、身体ごと吸い込まれる。

ガレンは有り得ない景色に、思わず目を見張った。

(負け……たのか?もう?)

”ゼウス”が起こした土煙の中から、生き残った騎士たちが這い出てくる。

「どうした?ヴァルドリアの騎士達よ。王女が攫われてしまうぞ。かかってくるが良い」




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