12 / 53
アルーレ帝国の章
4.
しおりを挟む
エルデネスが踵を返し、カグラの前に歩み寄る。
カグラはフイと顔を逸らしたが、”ヒプノ”の眠りに落ちた。
夢を見た。
暗闇の中に、魔王と自分と──国王ジャファール。
「陛下!」
「止めてくれ!」
「言葉の責任を、取らぬ王」
軍刀が振り下ろされる。麦でも刈るように、敬愛する者の首が飛んだ。
目が覚めて、身体がビクッとなる。
首狩りの夢の後に、血のような赤い絨毯を見たから。
「やあ、お目覚めかな、カグラ」
「エルデネス。ここは……」
「謁見の間だ」
カグラは、辺りを見回した。「──流石、良い城をお持ちね」
「この中にある」
エルデネスは、収納玉を取り出した。
「この中に?」カグラは見上げるが、想像がつかない。
「収納玉という。何でも入り、何でも出せる。城を入れているというわけだな。……今、念じれば、外の世界にも行ける」
「閉じ込められたのね」
「だが、快適だぞ」
魔王が、玉座の上で笑む。
カグラも軍人である以上、色々な目に遭う事を覚悟していたが、こういう形での幽閉は流石に想定していなかった。
と、背後の扉が開いた。人間ほどの身長の悪魔が、何やら箱を抱えている。
「魔王様」
「ここに」
エルデネスが、カグラの前をしめす。彼女は思わず道を開けた。悪魔が会釈し、その赤い箱を、赤い絨毯の上に置く。
「この……箱は」
「ジャファールだ」
カグラは、目を見開いた。
冷たい汗が出る。見上げると、魔王の姿がある。
脚が浮遊。体重を無くしたように、思考が無くなったように。
カグラが屈み、震える手が、箱のふたを取った。……あの夢。夢?いやあれは……。
「……ッ!」
蓋を戻す。押し込む。
立ち上がる音、降りてくる音。カグラは立ち上がり、エルデネスに言う。
涙が、頬を伝う。
「もう、貴方の好きにして」
カグラはフイと顔を逸らしたが、”ヒプノ”の眠りに落ちた。
夢を見た。
暗闇の中に、魔王と自分と──国王ジャファール。
「陛下!」
「止めてくれ!」
「言葉の責任を、取らぬ王」
軍刀が振り下ろされる。麦でも刈るように、敬愛する者の首が飛んだ。
目が覚めて、身体がビクッとなる。
首狩りの夢の後に、血のような赤い絨毯を見たから。
「やあ、お目覚めかな、カグラ」
「エルデネス。ここは……」
「謁見の間だ」
カグラは、辺りを見回した。「──流石、良い城をお持ちね」
「この中にある」
エルデネスは、収納玉を取り出した。
「この中に?」カグラは見上げるが、想像がつかない。
「収納玉という。何でも入り、何でも出せる。城を入れているというわけだな。……今、念じれば、外の世界にも行ける」
「閉じ込められたのね」
「だが、快適だぞ」
魔王が、玉座の上で笑む。
カグラも軍人である以上、色々な目に遭う事を覚悟していたが、こういう形での幽閉は流石に想定していなかった。
と、背後の扉が開いた。人間ほどの身長の悪魔が、何やら箱を抱えている。
「魔王様」
「ここに」
エルデネスが、カグラの前をしめす。彼女は思わず道を開けた。悪魔が会釈し、その赤い箱を、赤い絨毯の上に置く。
「この……箱は」
「ジャファールだ」
カグラは、目を見開いた。
冷たい汗が出る。見上げると、魔王の姿がある。
脚が浮遊。体重を無くしたように、思考が無くなったように。
カグラが屈み、震える手が、箱のふたを取った。……あの夢。夢?いやあれは……。
「……ッ!」
蓋を戻す。押し込む。
立ち上がる音、降りてくる音。カグラは立ち上がり、エルデネスに言う。
涙が、頬を伝う。
「もう、貴方の好きにして」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる