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グラン王国の章
2.
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「国は、魔界にある」
と、エルデネスは言う。
「魔界には、国が四つある。余は、そのうちの一つを持っているというわけだな……配下もいるさ、余が留守にしている間、皆で、代わりを務めている」
「こちらには?」
「来ない」エルデネスが、言い切る。「これは、余の我儘だからな」
「我儘……」
シャンディアが、シーツを握る手を強める。ギルグラドは免れているが……ハバトも、トーエルフも、滅んだと聞いた。どんな理由があっても許されないと思っているが、理由すらなく、我儘だというのか。
「しかし……余は、自分の為だけに、存分に力を振るえると思っているが、それでもうまくいかないな」
「?」
「もっと下卑た方法がある」
部下に任せてしまうのだ、と、エルデネスは続ける。
「この世界が欲しい、という、余の我儘の為にな。だが、それができん。余は、常に言い訳をしている気分だ。自分の我儘だから、自分ひとりでやれば、まあ、結果を享受する資格はあるだろうと。だから一人でやっている」
「一人で、世界を……」
考えかけて、シャンディアは思い直した。
考えるには、規格外すぎる。魔王は、一人でも、余りあるほどに強い。
「次は、グランですか?」
と、シャンディアが訊く。
「ああ──もう、そこだけだ」
「グランも滅べば、残る国は、ギルグラドただひとつ?」
「でもない」
エルデネスが、身体を揺らす。
「ハバトに生き残りがいる。トーエルフだって、余が知る限り、一人残してきた。彼らがどう生きるかは知らないが、ギルグラド唯一とはいかないだろう」
「……世界が、滅茶苦茶だわ」
「その通り」と、エルデネスが言う。
「だが余は、それに相応しい条件を満たしている、と思っているぞ」
「勝手よ」
「勝手さ。余はそれに言い訳しない」
君に乱暴している事もな、と、エルデネスは言い、立ち上がる。
「約束と対価、って事?」
「その通り。余は対価を払っている」
「これは心から思うがね」と、エルデネスが言う。
「心があるなら、そう悪い事は、平気でできないものさ。世界征服なら猶更だ。もし、余以上に何も考えず、それをやる者がいたとしたら──そいつは、本当のクズだな」
グラン公国へ行く、と、エルデネスは言い捨てて、扉を閉めた。
と、エルデネスは言う。
「魔界には、国が四つある。余は、そのうちの一つを持っているというわけだな……配下もいるさ、余が留守にしている間、皆で、代わりを務めている」
「こちらには?」
「来ない」エルデネスが、言い切る。「これは、余の我儘だからな」
「我儘……」
シャンディアが、シーツを握る手を強める。ギルグラドは免れているが……ハバトも、トーエルフも、滅んだと聞いた。どんな理由があっても許されないと思っているが、理由すらなく、我儘だというのか。
「しかし……余は、自分の為だけに、存分に力を振るえると思っているが、それでもうまくいかないな」
「?」
「もっと下卑た方法がある」
部下に任せてしまうのだ、と、エルデネスは続ける。
「この世界が欲しい、という、余の我儘の為にな。だが、それができん。余は、常に言い訳をしている気分だ。自分の我儘だから、自分ひとりでやれば、まあ、結果を享受する資格はあるだろうと。だから一人でやっている」
「一人で、世界を……」
考えかけて、シャンディアは思い直した。
考えるには、規格外すぎる。魔王は、一人でも、余りあるほどに強い。
「次は、グランですか?」
と、シャンディアが訊く。
「ああ──もう、そこだけだ」
「グランも滅べば、残る国は、ギルグラドただひとつ?」
「でもない」
エルデネスが、身体を揺らす。
「ハバトに生き残りがいる。トーエルフだって、余が知る限り、一人残してきた。彼らがどう生きるかは知らないが、ギルグラド唯一とはいかないだろう」
「……世界が、滅茶苦茶だわ」
「その通り」と、エルデネスが言う。
「だが余は、それに相応しい条件を満たしている、と思っているぞ」
「勝手よ」
「勝手さ。余はそれに言い訳しない」
君に乱暴している事もな、と、エルデネスは言い、立ち上がる。
「約束と対価、って事?」
「その通り。余は対価を払っている」
「これは心から思うがね」と、エルデネスが言う。
「心があるなら、そう悪い事は、平気でできないものさ。世界征服なら猶更だ。もし、余以上に何も考えず、それをやる者がいたとしたら──そいつは、本当のクズだな」
グラン公国へ行く、と、エルデネスは言い捨てて、扉を閉めた。
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