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3巻 1章 魔導人形と電撃飛来と愚者のカードと
エレノールの閃き
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中庭での戦闘②
レンジ達が下水道に飛び込んだ同時刻。グリモワール邸の中庭に話は変わる。
「おおおおお……オオオオ! 」
大きく叫ぶような声を上げる爪魔導人形。その背から出ていた禍々しい黒い糸のような魔力の波動は綺麗さっぱりとかき消えている。
エレノールの瞳が緑色の魔力を帯びる。それは彼女の持つ異能『異常覚知(シックスセンス)』が機能している事を示している。魔力の在り方を知覚する事の出来る能力。その異能を用いることで、彼女は探査・感知系の導術に関してのみβ級以上の能力を発揮する事ができているのだ。
「同調導術の気配が消えたわ。おそらくフィオナたちが導術の範囲外に逃げ切ったのね。これで少しは勝機が見えてきたわね! 」
無事でいてねフィオナ……祈るように彼女が生きている事を願うエレノール。
始めはそんな事をフィオナに思うようになるなんて全く考えていなかった。只の旅の間だけの協力関係を保つだけの存在。クエストが終わればそれで関係はおしまい。また出会う事はあるだろうけど、特に大きく心を許す相手はもう作りたくない。
46年間という時間を生きてきて、様々な事があった。特に自分の特異な出生が災いし、嫌な思いも随分としてきたのも事実だ。
そんなエレノールにしては珍しい、誰かを大切に想うというヒトとして大切な感情。それが芽生えたのは、間違いなくあの規格外の流れ人である、レンジと言う若者のお陰だった。
『ギシャアアァァアァァアアア!!! 』
その一瞬の想いは、魔導人形の耳を覆いたくなるような軋み声で断ち切られ、エレノールは我に返る。
「こっちだ人形! 我の名はガルム・シュトルムヴォルフ! ワシの持つ粉砕の大斧でお前の首を掻き切ってくれる。こっちを向け、ワシが相手になってやるわ! 」
1メートルはあるであろう、長い長い鍵爪を操る魔導人形が人には出せない悲鳴にも似た唸り声を上げる。毒爪と大斧が唸りを上げながら交差し、恐ろしい速度と強さで撃ち合う様をエレノールはその魔力の籠った眼差しで冷静に観察している。
エレノールの後ろにはアリーゼが控えている。戦闘能力は無いアリーゼは守られるべき存在。だがアリーゼはこの死闘をまるで楽しんでいるかのような輝く表情を見せている。それは自分では敵わなかった、亡き夫への仇討ちの場面を自らの目で見つめているからなのだろうか。
「エレノール殿。魔導人形には『核』となる主導源があるとゼルガーから聞いておる! それを潰すことで動きが止まると」
「ええ、アリーゼ様。ご推察の通りでございます。しかしそれがかなり難題なのです。核は巧妙に隠されており、魔力や闘気の流れを戦闘しながら読み解き、的確な打撃を加えねばなりません。それはガルムや1番隊副長様にとっても、かなり難しいことかと」
エレノールとアリーゼの前にはコーマ立ちはだかり、油断なく『凍凪』を構える。凍てつくような冷気を発するその包丁は、レンジの持つ萌炎と共鳴しうる神の包丁のうちの1本。このエリュハルトにはこのような神の包丁が複数あると、ホワイトドラゴンの言葉をエレノールは頭の中で思い出す。
「けけけ! グリューンが居ないというのは好都合じゃワイ。これでワイたちの包丁を気兼ねなく使えるのう、コーマ。一瞬で決めろよぅ」
あの使い魔。やはりフィーム語を喋っている……レンジ君の持つ神の包丁と同様。包丁の化身グリューンと一緒。ごくりと唾を飲み込むエレノールであった。
(あたしの求めている世界の理の一端。神の包丁の2本目がここに存在している! あたしはあたしの生まれてきた訳を知りたいの! こんな歪な世界を作り出した根本を知りたいのよ! 両親が死んだときに誓った。絶対に解き明かして見せるって! )
エレノールはレンジと聖なる山からずっと一緒に行動をしてきていた。その為ザックマーニャの包丁を認識できたとの同様、コーマの包丁も認識する事が可能となっていた。
(神の包丁№2……銘は『凍凪』……水と凍りの属性)
その緑色の深い魔力の色を宿す孤高の瞳には何が映るのか。
彼女の異能『異常覚知』が、常人には見えぬ魔力や闘気の流れを、色のついたオーラとして網膜に焼き付けていた。ガルムの荒々しい橙色の闘気、コーマの静かで鋭い青色の闘気、そして魔導人形が発する禍々しい黒色の魔力の波動。その全てが、彼女の視界の中ではっきりと視えている。
その瞬間、コーマが動きを見せる。ガルムが魔導人形に一瞬押されるようにしてたたらを踏むのを確認したからだ。
『ルーツ水月流。桝月の舞』
少し離れた位置にいる魔導人形に対して、コーマは態勢を低くし、右手に持った包丁を素早く薙ぎ払うような仕草をする! 彼が打ち出した衝撃波とでもいうような闘気の渦で、襲い掛かろうとした両手の爪が、大きな金属音を立てて打ちのめされる。一瞬爪の先が凍り付いたように見えたが、魔導人形が爪を立てるようにして力を込めると放った冷気は力を失ったように消失する! しかし今まさに切り裂こうした動きを止める事には成功し、してやったりという笑みを浮かべるコーマ。踏み止まったガルムがまた一歩前に出るようにして、粉砕の大斧を押し込むようにして突き上げる!
エレノールは黒双樹の杖を油断なく構え、導術の効果の更新を行いながら、黒い波動の解析を行っている。その時彼女はある事に気づく。魔導人形の前面に視認するのが困難な小さい目のような物体が4つほど浮かんでいる事を。
肩に乗る大事な分身ともいえる使い魔、黒猫のミンミの背を優しく撫でる。
「絶対魔法防御の結界は、奴の周囲にある目のような物体から放出されているようね……もしかして前方部分にしか放出されていない? だとしたら! 」
エレノールはミンミに目配せをする……
レンジ達が下水道に飛び込んだ同時刻。グリモワール邸の中庭に話は変わる。
「おおおおお……オオオオ! 」
大きく叫ぶような声を上げる爪魔導人形。その背から出ていた禍々しい黒い糸のような魔力の波動は綺麗さっぱりとかき消えている。
エレノールの瞳が緑色の魔力を帯びる。それは彼女の持つ異能『異常覚知(シックスセンス)』が機能している事を示している。魔力の在り方を知覚する事の出来る能力。その異能を用いることで、彼女は探査・感知系の導術に関してのみβ級以上の能力を発揮する事ができているのだ。
「同調導術の気配が消えたわ。おそらくフィオナたちが導術の範囲外に逃げ切ったのね。これで少しは勝機が見えてきたわね! 」
無事でいてねフィオナ……祈るように彼女が生きている事を願うエレノール。
始めはそんな事をフィオナに思うようになるなんて全く考えていなかった。只の旅の間だけの協力関係を保つだけの存在。クエストが終わればそれで関係はおしまい。また出会う事はあるだろうけど、特に大きく心を許す相手はもう作りたくない。
46年間という時間を生きてきて、様々な事があった。特に自分の特異な出生が災いし、嫌な思いも随分としてきたのも事実だ。
そんなエレノールにしては珍しい、誰かを大切に想うというヒトとして大切な感情。それが芽生えたのは、間違いなくあの規格外の流れ人である、レンジと言う若者のお陰だった。
『ギシャアアァァアァァアアア!!! 』
その一瞬の想いは、魔導人形の耳を覆いたくなるような軋み声で断ち切られ、エレノールは我に返る。
「こっちだ人形! 我の名はガルム・シュトルムヴォルフ! ワシの持つ粉砕の大斧でお前の首を掻き切ってくれる。こっちを向け、ワシが相手になってやるわ! 」
1メートルはあるであろう、長い長い鍵爪を操る魔導人形が人には出せない悲鳴にも似た唸り声を上げる。毒爪と大斧が唸りを上げながら交差し、恐ろしい速度と強さで撃ち合う様をエレノールはその魔力の籠った眼差しで冷静に観察している。
エレノールの後ろにはアリーゼが控えている。戦闘能力は無いアリーゼは守られるべき存在。だがアリーゼはこの死闘をまるで楽しんでいるかのような輝く表情を見せている。それは自分では敵わなかった、亡き夫への仇討ちの場面を自らの目で見つめているからなのだろうか。
「エレノール殿。魔導人形には『核』となる主導源があるとゼルガーから聞いておる! それを潰すことで動きが止まると」
「ええ、アリーゼ様。ご推察の通りでございます。しかしそれがかなり難題なのです。核は巧妙に隠されており、魔力や闘気の流れを戦闘しながら読み解き、的確な打撃を加えねばなりません。それはガルムや1番隊副長様にとっても、かなり難しいことかと」
エレノールとアリーゼの前にはコーマ立ちはだかり、油断なく『凍凪』を構える。凍てつくような冷気を発するその包丁は、レンジの持つ萌炎と共鳴しうる神の包丁のうちの1本。このエリュハルトにはこのような神の包丁が複数あると、ホワイトドラゴンの言葉をエレノールは頭の中で思い出す。
「けけけ! グリューンが居ないというのは好都合じゃワイ。これでワイたちの包丁を気兼ねなく使えるのう、コーマ。一瞬で決めろよぅ」
あの使い魔。やはりフィーム語を喋っている……レンジ君の持つ神の包丁と同様。包丁の化身グリューンと一緒。ごくりと唾を飲み込むエレノールであった。
(あたしの求めている世界の理の一端。神の包丁の2本目がここに存在している! あたしはあたしの生まれてきた訳を知りたいの! こんな歪な世界を作り出した根本を知りたいのよ! 両親が死んだときに誓った。絶対に解き明かして見せるって! )
エレノールはレンジと聖なる山からずっと一緒に行動をしてきていた。その為ザックマーニャの包丁を認識できたとの同様、コーマの包丁も認識する事が可能となっていた。
(神の包丁№2……銘は『凍凪』……水と凍りの属性)
その緑色の深い魔力の色を宿す孤高の瞳には何が映るのか。
彼女の異能『異常覚知』が、常人には見えぬ魔力や闘気の流れを、色のついたオーラとして網膜に焼き付けていた。ガルムの荒々しい橙色の闘気、コーマの静かで鋭い青色の闘気、そして魔導人形が発する禍々しい黒色の魔力の波動。その全てが、彼女の視界の中ではっきりと視えている。
その瞬間、コーマが動きを見せる。ガルムが魔導人形に一瞬押されるようにしてたたらを踏むのを確認したからだ。
『ルーツ水月流。桝月の舞』
少し離れた位置にいる魔導人形に対して、コーマは態勢を低くし、右手に持った包丁を素早く薙ぎ払うような仕草をする! 彼が打ち出した衝撃波とでもいうような闘気の渦で、襲い掛かろうとした両手の爪が、大きな金属音を立てて打ちのめされる。一瞬爪の先が凍り付いたように見えたが、魔導人形が爪を立てるようにして力を込めると放った冷気は力を失ったように消失する! しかし今まさに切り裂こうした動きを止める事には成功し、してやったりという笑みを浮かべるコーマ。踏み止まったガルムがまた一歩前に出るようにして、粉砕の大斧を押し込むようにして突き上げる!
エレノールは黒双樹の杖を油断なく構え、導術の効果の更新を行いながら、黒い波動の解析を行っている。その時彼女はある事に気づく。魔導人形の前面に視認するのが困難な小さい目のような物体が4つほど浮かんでいる事を。
肩に乗る大事な分身ともいえる使い魔、黒猫のミンミの背を優しく撫でる。
「絶対魔法防御の結界は、奴の周囲にある目のような物体から放出されているようね……もしかして前方部分にしか放出されていない? だとしたら! 」
エレノールはミンミに目配せをする……
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